「プロメ・ナルテックス!! 貴様との婚約は破棄だ!!」
悪役令嬢ものテンプレから始まる、ラブコメ・謎解き・裁判劇・バトルアクション、そして、熱くて濃い人間ドラマの欲張り盛り盛りセットな超大作。主人公カップルの両片思いがこれでもかというほどじれったく、そして可愛く描かれています。
バストは控えめだけど金だけはうなるほどある肉食系ポメラニアン令嬢のプロメと、人外レベルに強いけどあっちのほうはざぁこざぁこ♡な強面騎士のシドウ。お互い「好き」がだだ漏れなのに、すれ違ってしまうじれったさ。誤解の果てに、半分の純愛と半分の性欲がなせる業で奇跡的にかみあう二人の会話に、読んでいる方はニヤニヤが止まりません。
ミステリーパートでは、複雑に絡み合う冤罪事件や過去の炭鉱爆破事件の謎、そして国家を揺るがす大事件まで、謎解きや法廷劇の要素がしっかりと物語の核心を担っています。ヒロイン・プロメと刑事騎士が真実を追い求める姿、仲間たちとの絆、そして社会の歪みと真正面から向き合う姿勢が、読者を熱くさせます。
バトルアクションも見どころ満載。精霊や魔法を駆使したバトルは手に汗握るシーンの連続。ここぞという場面で、主人公が「救われる側」から「救う側」へと成長する姿はまさに胸が熱くなります。
脇を固めるキャラクターも実に魅力的です。目からビームを発射する(物理)上官ヘンリエッタのそら恐ろしさに隠れた不器用な優しさ、イカれたロックスターだけど冴えわたる勘と推理と剣の腕は超一流のリヒト、訛りが特徴的すぎる超有能オタク陰キャの美少女ロマン、そして一筋縄ではいかない敵方のパンドラやルイスの複雑な絆まで。敵も味方もみんなそれぞれの「正義」と「愛」と「物語」を持っていて、誰一人として舞台装置のままでは終わりません。
ハチャメチャなストーリーを癒してくれる日常パートの温かさもぐっと来ます。派出所でのゆるいやりとりや、シドウと犬をめぐる謎の四角関係、デートでの甘酸っぱいやりとり。壮大な事件の合間に描かれるそんなほのぼのとしたシーンが、キャラクターたちをぐっと身近に感じさせてくれます。
そして物語の終幕、すべての謎が解け、新しい時代が始まる――その爽快感は長い物語を読み終えたご褒美。笑って、泣いて、ドキドキして……そんな愛と正義とペロペロがぎゅっと詰まった、大冒険の物語です。
この作品を読み終えた今、「好き」という言葉の力をあらためて信じたくなります。どんな困難も、どんなすれ違いも、愛と絆があればきっと乗り越えられる。そんな勇気と元気をくれる、最高にハッピーな読書体験でした!