19話
靜耀を発ったあと彼らは、
その町の食堂で彼らは昼食を取った。食べたのは”
趙簫へと向かう街道を歩いていると、
やっと趙蕭に辿り着いた時には、城内へと入る門が閉まる酉の初刻(午後5時)寸前に入ることが出来た。
もう歩けないほどヘトヘトにくたびれていた子瑞らがその門をくぐると、まず、正面に幅広い道路が貫いた。
それを街路が何本も交差し、碁盤の目状の区画で構成されているようだった。
しかしそこは、閑古鳥が鳴いているように人の数が少なく、何故か街の人達の誰しもが浮かない顔をしている。まるで、病にもかかったかのようだった。
それに城壁に沿って、襤褸を纏った数多の浮浪者が地面に敷いた筵の上にたむろしていた。
これを見た一行は、心が痛ましくなってしまう。特に子瑞は、王である自分がこの目に直接入ったことに、彼らがこうなったのも、自分のせいだと自責の念に酷くかられてしまった。
彼らは、自分たちが着ているように、着物のような形状の服を着ている。そして、彼らの髪の色は茶髪や赤髪といった黒以外の髪色をしている者もいた。
更に、顔つきも人によって、平たい顔つきだったり、彫りが深く鼻が高かったりと違いがあった。
門からいくつか交差点を過ぎて、右に曲がってしばらく行くと、通りに面して二階建ての木造建築が連なっていて、それに沿って屋台も並んでいた。
そこには商店が売られていたが、趙簫に着いてからと言うものの、街の様子が寂れていた。
その商店にも品物が多くは並んでおらず、客足もまばらだった。
この時点でもう、桃佳は恵良を背負っていたことによる疲労のあまり彼女背中から降ろして地に膝をついた。
そして、子瑞と
「あー、もうダメ。これ以上歩けない。ハァハァ……ちょっと恵良、あんた重いんだけど。なんで背負わないといけないの?」
「失礼ね、私そんな重くって言わないで!仕方ないでしょ、まだ子供なんだから。もう歩けるわけないし」
桃佳と恵良は互いに文句を言うほどに体力が残っていたが、昌信と子瑞は喋るといった行動をとることが出来ないほど、疲労がピークを過ぎていた。
彼は幻世から転移したばかりで、この世界で右や左も分からない桃佳や昌信に代わって、動き出そうとした。
「はぁ……子瑞、すまないがまずは、夕食を食べに行かなければならないな。そして宿に泊まろう。部屋は俺と子瑞、桃佳と恵良の二人ずつを二室に分けて泊まることにするか」
「……大丈夫だ。まずは、余が店を探してやろう」
子瑞が残りの力を振り絞って立ち上がり、辺りを見渡した。子瑞は未だ王だとバレぬように紫黒の髪を短く切り、それを隠すために風除けを被っていた。
すると、食べに行くところを見つけたのか、疲弊を浮かべていた表情が明るくなった。
「あそこに酒楼があるぞ。余は酒は飲めないが」
子瑞は『酒』と書かれていた看板を立てている酒楼を指さしていた。
早速桃佳達は、疲労で重くなった腰を上げて地面から起き上がり、子瑞と共にその酒楼へと入った。
桃佳達が中へ入ると、幻世とは違いカウンター席は無く、四人掛けの
桃佳達四人はそれらのうち空いている席に座り、子瑞が給仕の女性に注文した。そして、給仕が持ってきたのがは粟や黍を使った
桃佳らは居酒屋で食事を終え、宿へと向かった。宿へ入ると4人のうち子瑞と昌信、桃佳と恵良とで二部屋に二人ずつ泊まった。
桃佳は部屋に入ると置かれた
「と……桃佳、恵良よいか、余……余の部屋に来て、くれぬか?」
どうやら子瑞は、桃佳と恵良の二人の女性がいる部屋に彼女らを呼ぶのを恥じていたのか、ためらっているような声の掛け方になってしまったようだ。
桃佳と恵良は、子瑞の声に反応し部屋に出ようと外を覗き込んだ。すると子瑞がそのような桃佳の様子を見て顔を赤らめて、態度がドギマギしていた。
彼の横には、何食わぬ表情をした昌信が立っていた。
桃佳は子瑞を見て笑いが吹き出しそうになったが、なんとか堪えることができた。桃佳と恵良は子瑞の呼び出しに応えて、自分たちの部屋から出ていった。
部屋を出て行くと、子瑞は一息ついて落ち着きを取り戻して自分たちの部屋に桃佳達を案内した。
4人全員が子瑞たちの部屋に入ると、子瑞は周りを見渡し、そこの窓の外を覗き誰もいないことを確認した。そして、置かれている背もたれのない
そして、それまで深刻な面持ちとなっていた子瑞がため息をついたと思うと、うつむけた顔に悲哀を表に出した顔でこう告げた。
「余はずっと、周りから気味悪がれていた。“
やがて、子瑞の目尻には涙が次第に溢れ出したのだった。彼は、嗚咽を漏らしながらさらにこう続けた。
「余は確かに、母である前王
桃佳たち3人は、子瑞が告げたことに理解に苦しんだが、やがて彼の王としての血統に問題があることに気づいた。
そのような3人の反応をよそに、子瑞は自分が壮絶な生い立ちを過ごしたことを悲壮感のこもった声音で語りだした。
――――それは、子瑞が産まれる前年のことだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます