3話
――――わたし
そういえば5日前から
肩で息を切らしかながら、桃佳が学校へ向かう一本道を持ち前の巨乳を激しく揺らながら急いで駆けていく。
それのおかげで、抵抗でたびたび転びそうになる桃佳だったが、そのような中気がかりにしていることがあった。
5日前から同じ高校に通う桃佳の幼なじみで同級生の
二人があまりにも校内でもお似合いのカップルだと評判だったため、それを比喩した根も葉もない噂が校内で蔓延している。
(日髙先輩と美由ちゃんが逃避行したとか言う奴いるけど、そいつら日高先輩がリア充って決めつけて妬んでるんじゃね?マジキモいんだけど)
桃佳がそんなことを考えていると、快晴だったのにかかわらず、突如滝に打たれたかと思うほどの勢いで雨がザーッと降ってきたのだった。
一瞬の隙も与えない間に周りが闇に包まれた。
「ハァ!? なんでさっきから晴れていたのに、雨降るわけ?最悪なんだけどー、ありえんし?」
桃佳の視界を遮る闇の中をずぶ濡れになった。
すると、向こうから白く輝き曲線を描いている物体がうねっている。
どうやら、こちらに近づいているのかその物体が大きく姿を現した。それは大きな白い蛇、いやそれに
「嘘……!?ちょっと、何アレ?私の方に来ないで……ってアアアアぁぁぁぁッッッ……!!ゴホゴホッ……」
桃佳は大量の雨粒が入るほど口を開けて、声を出した。それを口に含んでしまい、吐き出そうと前のめりになってしまった。
そのほんの一瞬白い龍と思わしき物の姿が消えたと思いきや、横から何かが自分の体にぶつかってきて、よろめいたままバランスを崩し倒れた時に気を失った。
* * *
桃佳は低く厳かな怒声で起こされた。
「早よう目を覚さぬか!!」
この男の一声で桃佳は気が付くと、目も眩む様な光景が視界に飛び込んできた。
ずぶ濡になって体力も激しく消耗し、倒れた状態で桃佳はこの空間、いつか映画や漫画で見た――と言っても彼女自身は興味ないが"三国志"や"西遊記"の中に出てきたような古代中国風の宮殿の中にいた。
この御殿は龍が彫られた煌びやかな朱塗りの柱が何本も林立していた。
桃佳の目の前には翡翠でできた
その上に世界史の教科書に載っていた古代中国の皇帝が着る絢爛豪華な全身金色尽くめの服装をした、この御殿に居ることにふさわしい貫禄のある中年の男が立っている。
顔には頬と顎に髭をたくわえ、威厳のある表情をしている。
彼の背後に肘掛けと背もたれに龍の頭を模った金の玉座が置かれている。
そのまた背後の壁に
目の前にいる威厳のある中年の男が桃佳の制服のブラウスが透けて、彼女のEカップの巨乳に被さるブラジャーがもろに目に入ってしまった。
桃佳はすかさず相手がどのような面持ちなのか確認もせず、胸元を手で覆い隠して声を上げてしまう。
「ギャァァ!!どこに目を向けてんの!!こっち見ないで!!」
「やかましいわ!この小娘は!余はそのようたなところは見ておらぬわ!!」
どうやらこの宮殿の主人である彼は、桃佳の悲鳴を聞いて目を逸らした。
男は彼女の淫らなその恰好を見てしまったことに羞恥を覚えたのか、顔を赤らめながらけしからんとばかりに怒鳴ってきた。
見た目は歳をとっているにも関わらず、男は大人気なく地団駄を踏みそうな勢いで慌てていた。
そして彼は疑り深そうな目つきで桃佳を見ている。
すると男の横に一人の青年がいて、彼がジロリと青年を威圧的な剣幕で見る。
その青年は、白くゆったりとした着物の様な服を着ている。その服は桃佳と同じようにびっしょりと満遍なく濡れている。
そして、濡れていてもボリュームの多い綿あめのように白くもふもふした長髪を生やし、湾曲した二本の鹿、いや龍の角が頭部に、翡翠が額に付いていた。
それはまるで、桃佳がここに来る前に見た白い龍を擬人化したような姿だった。
その怪訝そうな顔つきをしている青年にこの御殿の主人は訊いた。
「
それが耳に入った"玉龍"と呼ばれた青年は、顔つきを変えず確信をもって応える。
「
(えっ? ここって異世界なの?ふもふした髪の"玉龍"って人が、私をこの"仙空界"の"霊霄宝殿"とかいうこの建物に連れて来られたってこと?)
桃佳は元の世界からこの"玉龍"という青年によって"仙空界"という、この世界に自分を攫って、ここに転移したということが自分自身に起こった事態として把握した。
そして彼が言っていた"ゲンセ"というのが桃佳達がいた"現世"のことであるのだと解釈した。
そして、彼は桃佳がその玉龍によって大雨で濡れている中救ってくれたと思っていた。
しかし、彼が"玉帝陛下"と呼ばれた男によって自分をかどわかすことが目的でこの仙空界に連れて来られたのだと決めつけ、彼等に対する生理的な嫌悪感が湧きあがった。
さらに玉龍が桃佳を勝手に"龍召士"だと言われたことに、疑問を持った。
(それから私が龍を召喚出来る"龍召士"だって言っているけど、出来るわけないじゃん!?何勝手に決めつけるわけ?)
すると、玉帝が、その目つきのままこちらの方に向き直ると――――
「うぬがそうであるのと言うのならこの娘が……これは!!」
この時玉帝が桃佳の顔を見た途端、彼女の額に――――玉座の背後の壁画にも描かれている金色に輝く翼が生えた龍の影が映ったことに驚愕した。
だが当の本人は、当然だがそれに気づくはずはなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます