第2話 前の聖女は随分とやらかしていたそうな
どうも皆様、岩谷佳代子でございます。
こちらに来て1週間、こちらの世界のことも、だいぶ解ってまいりました。
まず、ここは聖女降臨の地、神聖王国領グレーテ郡ペイリン村(初代聖女のペイリンから名をとったそうな)。
で、聖女のお仕事は、基本的に世界巡礼で、各国を飛び回り、授かった女神の神通力を、聖石に注入するというものだ。
神聖王国とは、教会が統治する国で、女神聖教という宗教を、このゲレナダ大陸一帯に広く布教しているそうな。
因みに、砂漠の向こうや、海の向こうにも国があり、そこは別の宗教を信仰しているらしい。
それはいいとして、問題が……。
歴代の聖女は、厳しい方、優しい方、奥ゆかしい方など、様々な方がいらしたそうだが、ほとんどは優秀だった。
しかし、
私の3代前の聖女と、2代前の聖女と、前回の聖女が……、
まぁー。何故そうなったのか……。
まず、3代前。
彼女はジリアンと言って、出身はベリナス帝国とかいう、聞いたことない国の出身で、彼女は聖女となる前は皇女だった。
そして、皇女だった頃のように我が儘の限りを尽くし、散財しまくったそうな。
それだけならまだ良かったのだが……。
隣国の王女を無礼討ちにしようとしたらしい。
そのため、蟄居を言い渡され、生涯を北の僻地にて幽閉され生涯を閉じた。
で、次に2代前。
彼女は日本人だったらしく、肖像画からしても間違いなく、昔懐かしのコギャル。
このコギャル、アホはしょうがないにしても、貞操観念まで緩かった!
しかも、このコギャル、すでに何らかの性病に罹患していたらしく、礼拝に来ていたどこぞの王様にまで伝染して、王侯貴族の間で軽くパンデミック。
上に同じく、蟄居を言い渡され幽閉End。
そして、前回の聖女はどう見てもヒキニート。
ヒキニートらしく、奥ゆかしく大人しいのかと思いきや、ゲームや小説と勘違いしたのだろうか?
どうもはっちゃけやらかしを連発したようだ。
具体的には、
護衛騎士相手やイケメン神官に不適切な関係を迫ったり、美容関連に散財したり、肥満をなんとかしようと思ったのだろう、ダイエットしては失敗を繰り返し、それを侍女のせいにして暴力沙汰……。
上の二人に比べたら、致したヤンチャが大人しかったので、彼女は生涯現役聖女を務められたようだ。
まぁ、しかし、3連チャンで残念聖女が続いてしまったゆえ、聖騎士団や、教会上層部で、すっかり聖女不信が植え付けられたようだ。
そんなわけで、今私は聖女という役職を頂いているにも関わらず、今だこのペイリン村に放置され、快適に暮らしている。
と言うのも、ダリスさんは親切だし、村のみんなはもちろん平民なので、聖女の実態を知らず、私を聖女様と慕ってくれる。
しかし、座学ばかりでは、中年ゆえに筋力の衰えと贅肉が気になり、今朝、ダリスさんにお願いして、農作業に参加させていただくことになった。
早速、借り物の作業着に着替え、お世話になる老婦の元へ行く。
「おはようございます。本日はよろしくお願いします。」
私はペコリと頭を下げた。すると、
「いや~聖女様に土いじりさせて……本当に良いだか?」
旦那さんは恐縮して、もじもじしてる。
奥さんも、
「年寄っとるでぇ、有りがてぇ話じゃが、聖女様にこげなことぉ……罰当らねぇかや。」
なんだか申し訳無さそうな上目遣い。私は安心させようと笑いながら言った。
「大丈夫ですよ? 私のわがままにお付き合いいただいて、ありがとうございます。足手まといにならないように精一杯がんばりますね。」
すると、
「せ……聖女様っ。なんとお慈悲深い……。」
御夫婦共々涙ぐむ。
そんな大げさな……。
たかだかお手伝いだって言うのに……。
が、頑張ろう……。
そして、
頑張って、頑張って、
鍬を振るい畝一列で、腰に悲鳴が……。
かぼちゃの苗を植えてみるも、間隔がバラバラ……。
「すみません。」
こんなにできないなんて……。
「えぇだよ。かぼちゃは丈夫だから、なんとかなるでぇ。」
老夫婦はニコニコ。
ホントに良い人たちだ。
なんとか力になってあげたかったのだが……。
と、その日、ヘコんで教会に帰っていった。
それから、農作業のお手伝いは、麦の種まきや雑草抜きなど、もう少し簡単で楽なもの中心にお手伝いさせていただき……一ヶ月。
変化が現れる。
それは、最初にお手伝いさせてもらった老夫婦のかぼちゃから始まった。
朝起きると、教会の前が騒がしい。
何事かと思えば、教会の前には、両手で抱えるくらい、大きなかぼちゃを持ったご夫婦を中心に村人達が集まっていて、
「聖女様! ご覧くだせぇ!! こげぇ立派なかぼちゃがっ!! 畑に鈴なりでさぁ!!」
御夫婦は大喜び。
それを聞きつけた他の村人達も、
「おっオラんとこもっ!! 頼むで!!」
と、押し合いへし合い……。
えっ……えぇ~〜〜〜〜〜〜っ。
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