第6話 ナンパ?
「なぁキミのその腕、治してやろうか? カッチョイイのつけてやるけど」
「私の身体を変化させることは、創造主以外には許されない」
「じゃあ一生治せないじゃんかよ。そもそも……創造主以外が変化させちゃいけないんなら、片腕を壊されるのもアウトなんじゃないの?」
「……」
「都合が悪いこと言われると黙るんだな……それが良いと思うけど」
都合の悪いことを追求されたら黙れば良い。ララはそう思っている。動揺した状態で喋ったって、さらに墓穴を掘るだけだ。それくらいなら何も言わなければ良い。
そう思っていたが、しばらくしてアテナが言った。
「片腕を取られたのは、私の未熟さが招いた結果だ」
「創造主様の設計が間違ってたんじゃないの?」
「私にとって創造主は絶対だ。侮辱することは許さない」
「……はいはい……」
ララは大きめの武器を作成しながら、アテナと会話をしていた。アテナは相変わらず扉の前に存在していた。
ララはブツブツ言いながら作業を続ける。
「初撃を絶対に食らってくれるんなら……威力重視で良いよね」言ってから、ララはアテナに向き直る。「そういえばさ……なんで最初の攻撃、避けないの?」
「そうプログラムされている」
「なんで……ってのは知らないんだろうね。んで創造主様も死んじゃってるだろうし……真相は闇の中か」
とはいえ初撃を避けないようにプログラムされているのなら、それが弱点になるだろう。唯一と言っても良い突破口だとララは考えていた。
相手の攻撃力など関係ない。最初の一撃で最大火力を放って壊してしまえば良いのだ。すべての魔力を解き放つような呪文があるなら使いたいところである。
そのままララが作業を続けていると、
「あなたは変わっているな」
ララはアテナに目を向けずに答えた。
「おや……キミから話しかけてくれるとはね。ナンパ?」
「ナンパとはなんだ? 文脈からして、船が渡航できなくなることではないのだろう?」
「ボクのこと好きなのかってことさ」
「私に感情はない」
その言葉を聞いて、ララはようやくアテナを見た。
「そうかな。ボクが見る限り、キミには感情があるように見える」
「それは勘違いだ」
「そう? だったら、なんでボクに話しかけたの?」
「不審者の情報は仕入れるようにプログラムされている」
「不審者? ボク、不審者に見える?」
どこからどう見ても不審者だろうな、と思いつつ答えているララだった。
「私にやられて、この場に留まった生物は3人目だ。リベンジに来たのが5人」
「ふーん……500年の間に3人か。そりゃ不審者だね」自分が不審者であることは自覚している。「んで……その2人は、なんでこの場に残ったの? 昼寝?」
「1人はその後も何度か私に挑んだ」勝敗は聞くまでもない。「もう1人は、私に弟子入りを志願した」
「へぇ……受け入れたの?」
「そんなわけがないだろう」
当たり前の答えだった。
アテナは宝を守っている。その宝を脅かす人間を育成するわけがない。
アテナは続ける。
「その2人もすぐにいなくなった。この場にいた期間は1週間にも満たない」
「ふむ……」ララは一瞬だけ笑顔をなくして、「野暮なこと聞くよ。寂しくない?」
500年間戦い続けて、誰かと一緒にいたのは1週間にも満たない時間。それ以外は1人でいるか、戦っているか。
「私は機械だ。そんな感情はない」
「……そっか……」ララは天井を見上げて、「500年かぁ……ボクなら気が狂うね」
言ってから、ララはそのまま天井を見上げ続けた。
やがて、世間話でもするような軽い口調で言った。
「ボクたちって、なんで死ぬんだろうね」
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