第2話 500年無敗の伝説の番人
足音を響かせて、少女は機械の前に現れた。
「さっきの人を逃がしたのはなんで? キレイな女の子だったから?」
機械はなにも答えなかった。
仕方がないので、少女は機械に殴り飛ばされた冒険者たちを見て回った。
「……ふーん……こっちの人たちも死んではないね。手加減が上手なんだねぇ」
その少女はツノの生えた少女だった。頭から2本のツノが小さく生えていた。
少女は大きな袋を背負っていた。体よりも大きな袋だった。そして首から大きなペンダントを付けていた。
少女は冒険者たちが完全に気絶していることを確認してから、
「機械さん。キミ強いねぇ。いやぁ惚れ惚れするよ。拍手したいくらい。パチパチパチパチ」
口で言いながら、少女は手を叩く。
しかし機械は何も答えない。
「無口だねぇ……それとも喋る機能はないのかな?」
「……」
「その後ろにある扉……中にはなにがあるの? お宝があるって噂だけど、本当?」
「……」
「つれないなぁ……まぁ独り言には慣れてるから問題ないけどね」
それくらい会話をしたくらいで、
「……う……」リーダー格の男が目を覚ました。「あ……? なんだ……なにが起こって……?」
「おはよう、お兄さん」少女が言う。「魔法使いのお姉さんなら逃げていったよ。キミたちも逃げたら?」
言われたリーダー格の男は、しばらくボーっと周囲を見ていた。
しかし自分を吹き飛ばした機械が目の前にいることを確認すると、
「ヒィ……!」
情けない悲鳴を漏らして逃げていった。他の2人……戦士と僧侶も同様だった。
そうして少女は機械と1対1で向かい合った。
「あの冒険者たち……かなり強いよ。魔法使いさんが使った魔法も、相当な威力だ。まぁキミはもっと強かったみたいだけどね」
「……」
「さすがだよ。伝説とまで言われるだけはある」
「……」
「その強さの秘訣、気になるなぁ……ボクはそれを調べに――」
少女の言葉の途中で、他の声が割り込んできた。
「ついにたどり着いたぞ……」坊主頭の筋肉質な男だった。「ここか……ここに伝説の番人がいるのか……」
「こんにちは、お兄さん」少女は坊主頭の男のほうを向いて、「お兄さんも、お宝を探しに来たの?」
「いや……違う。俺の目的は番人のほうだ」
「番人……? この機械さんに会いに来たの?」
坊主頭の男は屈伸をしながら、
「ああ……俺は武道家でな。俺の力がどこまで通用するのか、道場破りをしていたんだ」
「ここは道場じゃないけど?」
「見ればわかる」その通りだった。どう見ても道場ではない。「地上の人間は弱すぎて退屈でな……道場を潰して回っているうちに、退屈になったんだ。もっと強いやつと戦いたい……そう願うようになった」
「なるほど……それでこの場所に来たんだね」
力試しとしては絶好の場所かもしれない。少女はそう思った。
「そうだ……500年無敗の伝説の番人。そんなやつがこの場所にいると聞いてな」
「……500年無敗……」
「ああ。この場所にある宝を守っている番人だ。そして結局……宝は誰も持ち出せていない。つまりその番人は……500年間誰にも負けなかったわけだ」
少女もその噂は知っていた。だからこそこの場所に来たのだった。
そして武道家は機械に向けて構える。それだけでオーラと威圧感を感じるほどだった。この武道家もどうやら、かなりの実力者であるらしい。
「さぁ勝負だ番人よ……! 俺のすべてを、俺の技術と力のすべてを叩きつけてやろう……! 人生の集大成を見せてやる!」
察するにこの武道家は、戦うことにすべてをかけてきたのだろう。そして得た力でさらなる力を求めている。
武道家を敵と認識したのか、機械の目が動いた。しっかりと武道家を見つめて、静止した。
「戦闘態勢か……良いだろう!」
叫んで、武道家は近くにあった女神像を殴った。軽く殴ったように見えたが、その一撃で女神像は粉々に砕け散った。
女神像を壊す必要性はわからないが、とにかくこの武道家の攻撃力は伝わってきた。
「行くぞ番人よ……!」雄叫びとともに、武道家は気を溜める。「一撃で葬ってくれよう……! 我が究極の一撃を受けてみろ!」
武道家は踏み込む。大地が揺れるような強烈な踏み込みだった。岩の地面にも足跡が残るくらいの強さ。
その速度に乗って、拳は繰り出された。正拳突きのような、真っすぐで重い一撃だった。先ほどの女神像ならば、10体くらいは軽く破壊できそうな威力だった。
だが……
「な……!」武道家の拳は機械に直撃して、それだけだった。「バカな……! 無傷だと? そんなわけ――」
刹那、機械がハンマーを振るった。武道家は自分が殴られたことすらも気づかずに、壁に叩きつけられて地面に転がった。
そんな様子を見ていた少女が、
「……マジで強いのな……驚きを通り越して呆れるよ。さっきの人も相当強いだろうに……」
地面に転がっている武道家も、先ほどの冒険者たちも、かなりの実力者たちである。
機械が強すぎて、弱く見えるだけだ。
ともあれ……
「自己紹介が遅れたね」少女が言う。「ボクはララ。自分の作り上げた科学力が世界最強だと証明するために生きてる女」
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