第13話 ゴーレム階層はごまかせない


「ゴーレム階層か。そうなると付け焼き刃で出来ることはないな」


 ゴーレムは人型の岩の魔物で意識のない魔法生物だ。人間でも作ることが出来るが、素材を用意するコストが高い上に使い道がないと言われている。


 なにせちょっと階段歩かせただけで自壊するからな。身体が重すぎて階段を降りることすら出来ない。


 なのでゴーレムを使いたい場所まで連れていけないのだ。平坦な場所なら使えるだろうが、街でゴーレムを製造してそこまで持ち運ぶのが大変過ぎる。


 だがダンジョンのゴーレムは自然発生する上に、ゴーレムが出てくる階層は基本的に段差や坂などがない。平坦な地で敵に回すとなると、途端に凄く厄介になる困った魔物だ。


 やつを端的に示すならば理想の前衛タンクだ。動きが遅いという明確な弱点はあるが強力な魔物である。


 岩の頑丈な防御力は生半可な攻撃では倒せず、硬さと重さを活かした攻撃力は脅威になる。しかも再生能力まである、流石に再生速度は遅いが。


「ゴーレム相手には冒険者の自力が出ますからね。総合力というか」


 そんなゴーレムは大きく分けて二種類いる。


 ひとつは純粋に頑丈で物理攻撃に強いゴーレムで、もうひとつはそこまでの頑丈さはないが魔法への耐性を持つ素材で作られたゴーレムだ。


 そしてゴーレム階層ではそのどちらも出てくる。つまり物理偏重のパーティーでも魔法偏重のパーティーでも厳しい。


「大抵の魔物なら相性差があるがゴーレム相手にはないからな。その冒険者パーティーが強いかどうかだ」


 普通の魔物なら冒険者パーティーによって相性差がかなり出る。アンデッドならば聖魔法、オーク相手ならば力自慢の前衛、ハーピー相手ならば優れた後衛がいれば勝てた。


 だがゴーレム相手に必要なのは特化能力でも相性でもない。物理攻撃と魔法攻撃がどちらもある程度必要だ。


 ゴーレムには物理耐性持ちと魔法耐性持ちの二種類がいるので、どちらか片方に特化していると厳しい。なので総合力が求められるというわけだ。


 たまに魔法耐性あるゴーレムを超火力の魔法で瞬殺する奴も出来る奴もいるけどな。


「ゴーレム相手となるとパーティーごとに戦い方が大きく変わるから、都市としてはできることが少なくなるんだよなあ……」


 アンデッドなら聖水みたいな有効打がない上に、相性がないから特定のタイプの冒険者優遇も意味がない。


 他の都市から強い冒険者を招待したり、元から強い冒険者を優遇することはいつもやってることだしな。


 それにゴーレムの落とす素材は魔法がこもっているので、けっこう高く売れるから買い取り価格の優遇なども必要ない。


 つまりダンジョン都市としても、普段から囲っている冒険者たちの自力が試されるのだ。なので付け焼き刃の政策は効果が薄く、これまでやってきたことがそのままダンジョン攻略状況に関わって来る。


「実際のところ、ゴーレム階層で通用する冒険者パーティーはどれだけいそうです?」

「おそらくだが四パーティーだな。冒険者ランキングトップ四位の奴らだ」


 つまりは【女神の四剣】、【トェンティの集落】、【熱き黒鉄の漢たち】、【月光の牙】の四パーティーだ。


 他にはあまり目ぼしい奴がいないから期待出来ない。


「【月光の牙】は追放者ルメスが魔法攻撃をこなして、さらに前衛を強化するからいけるだろう。【トェンティ】は魔法も弓も強いから勝てる」


 ところで俺はルメスのことを追放者って呼んでるんだけど、そのままのあだ名なのにちょっとかっこいい気がする。


 なんか強すぎて追放されたみたいでさ。実際は馬鹿三人組がアホだっただけだが。


「もう【トェンティ】から集落も第一部隊も略してるのです」

「名前が長すぎるんだよ。どうせランキングに出てくるのは第一部隊だけだしいいだろ。【アツカン】もまあなんだかんだ攻略できるだろ」

「【アツカン】だけ雑じゃないです?」


 だってあいつらはいつもそんな感じで、なんだかんだで三位をキープしてるんだもん。ミスターブロンズ(銅メダル)みたいな奴らだ。


「【女神の四剣】はなんとでもなる。あいつらは万能だからな」

「流石はソールレイスさんなのです」

「言っておくけどソールレイス以外も負けず劣らず優秀だからな?」

「そうなのです? 一度お会いしてみたいのです」

「人格のほうも負けず劣らずややこしいけど」

「……やっぱりやめておくのです」


 女神の四剣は色々な意味で濃いから、あいつら四人揃ったところに出くわすとすごく疲れるんだよな……。


 なので報告も代表者だけにしてくれと言いつけてるくらいだ。四人そろうとまじで収集つかなくなるし。


 あいつらどうやって冒険してるんだろうと気になることもあるが、それを聞いたら俺はダンジョンに連行されるから尋ねることはない。


「そういうわけだから今回は都市としてやることはないな」

「じゃあしばらくはお休みなのです? な、ならハヤネル様! 私と……」

「都市としてはな」


 そう都市としてやることはない。


 だが俺個人としては試してみたいことがある。


「なあゴーレムって魔法生物じゃん? まるで誰かの指示に従うかのように動くじゃん?」

「そうですね……それがどうしたです?」


 微妙に不機嫌そうなエリサ。いったいどうしたというのだろうか。


「ゴーレムって強いよな」

「厄介な敵です」

「じゃあさ。そいつを使役できたらダンジョン攻略が進むと思わないか? 俺の雷魔法ならなんか操れそうな気がしない?」



-------------------------------------

★やフォローを頂けるとすごく嬉しいです。

執筆モチベが上昇して、更新頻度が上がるかもしれません。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る