第3話 冒険者ランキングは都市つごう
第六階層を冒険者が突破した夜。
俺は市長屋敷の執務室でエリサと、サウザン都市冒険者ランキングを作成していた。
目の前にある紙には我が都市の冒険者パーティートップスリーの情報が書かれている。
【女神の四剣】・・・前衛力C 後衛力D 魔法D 回復術C 超若手
【天の代行者】・・・前衛力G 後衛力F 魔法F 回復術D ベテラン
【熱き黒鉄の漢たち】・・・前衛力D 後衛力E 魔法E 回復術E 若手
この前衛力とかはパーティーの能力値だ。Gが一番低くて、F、E、D、C、B、A、S、EXと上がっていく。
「よし【女神の四剣】が冒険者ランキング序列一位、【天の代行者】が序列二位、【熱き黒鉄の漢たち】が三位でいこう」
「一位は文句ないです。でも二位と三位は強さ的には逆な気がするです」
ミニスカメイド服を着たエリサが首をかしげる。
彼女は俺の秘書でありメイドだ。
桃色の髪を肩くらいまで切りそろえていて元気そうな可愛い女の子。ちょっとドジなのが玉にキズ。
日本ではメイドなんて夢のまた夢だったけど、この世界なら雇えるからな!
転生してきて一番よかったことかもしれない。この世界はと日本はかなり違うところがあって暮らしづらいが、こういったいいところもあるのは大きい。
ちなみに大きな違いとしてはこの世界は中世くらいの文明で魔法があり、ついでに人の寿命が地球の十倍くらいある。
ただ一年が3650日あるから、地球の十四歳とこの世界の十四歳はほぼ変わらないが。まあ一年が十倍長いくらいの間隔で大丈夫だ。
ちなみに寿命が長い理由はよくわからない。人は神の落とし子で全員が神の血を薄く継いでるとか言われてる。魔法が使えるのがその証拠とかだとか。
おっといけない。考えがそれてしまった。
「違うぞエリサ。このランキングは強さで決めてるんじゃない。確かに【天の代行者】よりも【熱き黒鉄の漢たち】の方が強い。おそらく次階層でランキングは逆転するだろう。だが少なくとも第六階層では前者の方が活躍した」
この二パーティーにはわりと大きな差がある。天の代行者は神官が多めのパーティーで冒険者としては我が都市内でも中の下くらいだ。メンバーもベテランたちなので将来性も微妙。
彼らはアンデッド階層だから活躍できただけで、次階層からはそこまで期待できない。逆に熱き黒鉄の漢たちは接近主体でありながら、アンデッド階層でそれなりに活躍した。
彼らは相性が不利じゃない次階層からは更なる活躍が見込める。つまり相性で活躍できただけの天の代行者と、自力があるから不利な環境でもそれなりに戦えた熱き黒鉄の漢たち。
どちらがより優秀かは語るまでもない。
「冒険者ランキングは活躍順というわけです?」
冒険者ランキング。それはダンジョン都市が公式に発表する冒険者の位付け。
そして冒険者の強さを表すもの……ではない。
「活躍順とも少し違うな。ダンジョンランキングは都市の都合順だ。そもそもこんなランキングに載っても大した価値はないがな」
「ランキングを決めてる人の発言とは思えないです……でもランキング上位のパーティーは街から優遇されてるですよ?」
「街にとって有用だから個別に優遇してるだけで、ランキング上位に入ったからじゃないぞ」
「そ、そうだったのです!?」
「そうだよ。だから【天の代行者】は神官が多いから第六階層で活躍してランキング二位だが、この都市としては【熱き黒鉄の漢たち】の方に優遇措置を取る。ようは将来性の問題だな」
たとえばプロ野球選手のドラフト指名順位と同じだ。
あれは高校野球や大学野球で成績のいい順に取っていくのではない。プロに入ってどれだけ伸びるかの才能や可能性が大きく考慮される。
つまり実際の能力と順位は完全には比例しないというわけだ。某有名なメジャーでも活躍したヒットメーカーさんも、高校時代から打ってたのにドラフトでは下位指名だった。
「でも優遇するなら【熱き黒鉄の漢たち】を二位にする方がいいと思うのです」
「ダメだ。彼らにはもっと実力を伸ばしてもらいたいからな。ここで下手に二位を与えて慢心されるよりも、二位になれるように頑張ってもらいたい」
半端な実力で上が取れてしまうと、そこから一気に伸びなくなる者がいる。
ようは周囲からチヤホヤされて慢心されてそこで伸びが止まってしまうのだ。これはいろんなところでよくある話だろう。
このダンジョンランキングは都市中に広まるので、高順位パーティーは目立つ。未熟なのにチヤホヤされるとロクなことにならない。
もちろんランキング順位は活躍を鑑みてのこともあるけどな。結局、相性云々とは言えども天の代行者の方が活躍してるのは事実なんだし。
「少し悔しい思いをした方が伸びるだろ。熱き黒鉄の漢たちには期待しているからこそ三位だ」
「なんか完全に私たちの都合でのランキングなのです……」
「だからそうだと言ってるだろう。このランキングはな、俺たちが一銭も出さずに冒険者たちを喜ばせるための仕組みだぞ」
「そうなのです!?」
冒険者ランキングは有名無実だ。
ランキングを決める都市の都合でかなり変動してしまう。都市に貢献してくれるパーティーは上にして、市民からの賞賛の声という報酬をあげるのだ。
冒険者たちにとってこの報酬は半端な金銭よりもよほど喜ぶ。誰だってチヤホヤされたいからな。
あの天の代行者の~~~さん!? すげぇ!? みたいな感じで言われたら、誰だって悪い気はしないだろう?
まあ今回は【天の代行者】の面子を喜ばせるというより、【熱き黒鉄の漢たち】に悔しがらせるのが目的だが。
「そういうわけだから天の代行者が二位でいいな?」
「わかったのです。じゃあ明日の朝には広場や冒険者ギルドの建物に貼っておくのです」
「ああいや待て。街中に予告しておけ。それでトップ三位のパーティーにはコッソリ言っておいて、その上で大々的に昼に広場で公表しろ。そうすれば盛り上がるし三パーティーは気分いいし、他の冒険者たちも憧れてダンジョンに潜るからな」
「これ以上ないくらいランキングを悪用しているのです……」
「悪用じゃなくて利用だ。どこにも悪はない」
そして翌日の昼。大勢の人たちが集まる中で、広場で冒険者ランキングの発表が開始された。
民衆はワイワイと騒ぎながらランキングを話題にする。
「ランキング一位は女神の四剣かー。順当だわな」
「
「流石は天の代行者だ。応援してるぞー!」
この広場には熱き黒鉄の漢たちと天の代行者のメンバーは揃っていて、民衆から称賛の声をかけられている。
天の代行者たちはすごく気分よさそうにしているが、熱き黒鉄の漢たちのメンバーは嬉しさ半分悔しさ半分と言ったところだ。いいぞいいぞ。
ちなみに女神の四剣は誰も来ていない。彼女らは冒険者ランキングに興味がないのだ。来て欲しいのに。
「見事なまでに市長の思惑通りです……でもランキングなんてよく考えつきましたね? 他のダンジョン都市も真似しちゃいましたし」
「そりゃランキングした方が絶対得だし」
実はこのランキングは我が都市、というか俺が考案してやり始めた。日本の投稿サイト系のランキングで投稿者が盛り上がってるので、利用できると考えたのだ。
冒険者ランキング。それはダンジョン都市が都合よく冒険者のモチベを上げられる、俺たちのためのランキングだ。
当然ながらこのランキングに不正はない。そもそも正の評価基準がないからな。
都市の独断と偏見で決められるのだから最高だ。ただいずれは明確な評価基準を作らないとダメだろうな。
頑張って結果を出してもずっとランキングが上がらなかったら、逆にやる気が削がれて有望な者が他都市に流れてしまう。
そしたらダンジョンが攻略されなくなって、俺が街で枕を変えずに寝ることも難しくなってしまうからな。なんとかして避けないと。
--------------------------------------
ランキングが理不尽だとやる気が出ないし、他の場所に行くでしょうから、黎明期にだけ通用するやり方。
私もランキング上がりたいのでフォローや★お願いします。
もう悔しい思いは散々してますし、モチベ上がりますのでぜひ('ω')
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます