第6話 冒険者ギルド
チニール大森林への侵入というのは想像以上の罪だった。
チニール大森林にある食材や鉱石はこの国の重要な財源であり、まだ未開拓な部分も多くこの国にさらなる富をもたらすといわれている。
その昔、まだ規制がされていなかった頃に他国からその豊富な資源を狙われることも多く、また冒険者も同じだった。
その結果、国は財政難に陥り当時の国王は、他国の国王に頭を下げることになったのだとか。
先代国王でありゼニスの父グランは、チニール大森林を自身の所有物とし、許可のない立ち入りを禁止した。
冒険者には他国と戦になった時、国の為に戦うことを。
商人には売り上げの一部を国に納めることを条件に許可をだした。
そして今はゼニスの所有物ってわけか。
「ウェンディさん教えてくれよな…。」
国王に許されてからは一切会話してくれなかった衛兵たちも口をきいてくれるようになった。
チニール大森林のことや、この国のこともついでに教えてもらった。
さらに王宮からでるときにゼニスからの指示で半年は食うに困らないお金を貰えた。
ゼニスさん、いやゼニス国王陛下。
ありがとうございます。
俺は本来の目的を果たすべくギルドに向かっていた。
この街は活気に溢れている。
もう日が沈んでおり暗くなってきたというのに、そこら中に出店が並んでいる。
お祭りでもしてるのかと思ったがこれが毎日だという。
「…ん?」
またあの視線だ。
王宮内で感じたウサギのような視線。
後ろをみても人が多すぎてわからない。
気味が悪いな。
ウェンディさんの指示通りに路地裏を三回ほど抜けると一気に街の雰囲気が変わった。
道端や店の中で酒を飲み笑いこけている男たち。
冒険者の街って感じで凄くいい。
テンションがあがりながらも冷静に。
舐められたらこの仕事はやっていけないのだ。
ウェンディさんはギルドは騒がしいからすぐにわかると言っていたが、どこもかしこも騒がしいからわからない。
「誰かに聞くか。」
俺は道端で樽の上に座りながら酒を飲む三人組に声をかけることにした。
「よう兄弟。いい酒飲んでるじゃねぇか。ところでよ、ギルドってどこにあるかわかるか?」
こういう時は兄弟とかいって仲良くなるのがお決まりだ。
歴戦の冒険者みたいな顔で話しかけたしこれで舐められることもないだろう。
「だれだ?」
「お前の兄弟か?」
「俺の兄弟にこんなやついねぇぞ?」
「誰も知らねぇのかよ。誰だてめぇやんのか?」
彼らはお酒で顔を赤くしながら殴りかかってきた。
えぇ…
騒ぎに気付いた連中が酒のつまみにと集まってきた。これは簡単に殴られてやるわけにもいかないな。
舐められてしまう。
俺は自身を中心に結界を張った。
こういうときに俺のスキルは便利なのだ。
酒に酔い半透明な壁に気づかない三人組はそのまま殴りつけ、顔だけじゃなく拳も赤くした。
「な、なんだこりゃ…魔法か…?」
あたりが一気に静まり返った。
見物人たちの後ろで一部始終を見ていた連中はすぐに酒瓶を置き、剣を抜いた。
まずいな。
こんな奴らでも仲間意識があるのか。
彼らはなんの合図もなく一斉に切りかかってきたが、その剣が俺に届くことはなかった。
結界の耐久テストをしたことはない。
だからどこまで耐えれるのかもわからない。
それでも彼らの剣は折れた。
それなりの強度はあるみたいだ。
「ギルドはそこの角を右に曲がったったとこだ。お前らもう行こうぜ…こんなんに関わってもろくなことがねぇ…」
最初の三人組がそう吐き捨て、その場から離れると見物人たちも解散していった。
ギルドに着いた俺はすぐに受付に向かった。
金髪の女の子がカウンターを挟んで立っていたからすぐに分かった。
高校生くらいだろうか。
「こんばんわ!今日はなんの御用ですか?」
「冒険者登録をしたい。」
「かしこまりました!では魔力を測定しますのでこちらに手をかざしてください!」
そういうと彼女は水晶を取り出した。
俺が使っているのは女神いわくスキルだ。魔法じゃない。
でもあの女神のことだ。
スキルが実は魔法と同じでしたってパターンな気がする。
一応聞くか…。
「ちょっといいか?スキルって知ってるか?」
俺の質問に彼女は目を丸くしていた。
「スキル…?なんですかそれ?」
あの女神、適当なこといいやがって。
「すまない。続けてくれ。」
彼女は困惑しながら測定した。
「…測定不可…魔力なしです。」
ギルド内は数秒無音に包まれたが、すぐに笑い声に包まれた。
「………スキル測定って…できたりする?」
「だからスキルってなんなんですか!」
スキルと魔法って別物なの…?
あの女神、魔法の世界に行くっていうのにスキル渡してきたのかよ。
俺は彼女に促され、もう一度測定することになったが、結果は同じだった。
「やっぱり魔力なし…ですね。見てくださいこれ!ほら!反応なし!珍しいですね~。ていうか初めて見ました私!」
珍しいものをみれたと嬉しそうな彼女を尻目に一ミリも反応しない水晶を見ながら、『魔力0』と刻まれた冒険者カードを受け取りギルドをでた。
スキルがなんなのか、魔法と何が違うのか。
わからないことだらけだ。
今日は色々ありすぎた。宿を探して早く寝たい。
「ちょいちょい、おにーさん。浮かない顔してどうしたの?」
後ろからウサギのような視線を感じた。
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