第2話 女神イシス
気が付くと何もない真っ白な空間に立っていた。
ここがどこなのかまったくわからない。
俺はいつものようにスーパーに食料を買いに行った。
それから…あれ。
買いに行ったことは覚えてる。
買ったものが思い出せない。
「あまのみことさん」
どこからか俺の名前を呼ぶ声がした。
あたりを見渡すが誰もいない。
「あま、のみことさん」
なんなんだ、どこにいるんだ?
「あまのみ、ことさん」
「名前の発音が違うんじゃない!どこにいるのかわからないんだ!」
「ごほんっ。失礼しました。上を見てください」
俺は慌てて上をみた。
「誰だ…?」
そこのは信じられないほどのオーラを放つ女がいた。
ていうか眩しいな。
オーラっていうか光ってるだけなような…。
「初めまして、あまのみことさん。私は名前は女神イシスです。まずはお礼を」
女神って…え、神様なの!?
お礼をってことは俺はなにかしてあげたのか…?
落ち着け俺。冷静に。
「お礼なんてとんでもないです。ここはどこなのですか?」
「あ。いえ、あなたが私にお礼をしてくださいという意味です。さあ、お礼を!」
何を言っているんだこの女。
俺が何をしてもらったというんだ。
「あなたは先ほど愚かにも赤信号を渡り車に轢かれそうになりました、が、そこを私が助けました。私が!」
思い出した。
俺はスーパーの手前の横断歩道で沢山の勇者と一緒に赤信号に立ち向かったんだ。
「思い出しました。助けていただきありがとうございました。他にも勇者が…他に渡っていた人たちもどこかにいるのですか?」
「いえ、轢かれる予定だったのはあなただけです。他に人間は…」
「轢かれる予定?」
「あっ…なんでもありません。あなた以外の人は無事です。安心してください」
今この女とんでもないこと言わなかったか?
まるで俺が轢かれるのが決まってたみたいに。
「助けた代わりになのですが、異世界に行ってもらえませんか?」
異世界だと…?
もしかしてこれって異世界行って魔王倒してみたいなあれか。
うーん…どうもこの女何かまだ隠してそうなんだよなぁ…
「大体の状況は理解しました。こういうのはきちんと顔を見て話をしたいのですが、その光をなんとかしてもらえませんか?」
「…わかりました。ぽち」
あれ、今スイッチかなんか押さなかったか。
光が消えて女神イシスの顔が見えた。
腰まで届く銀色の髪をした青い瞳の女。
女神というだけあって可愛い顔をしてるじゃないか。
「これでいいですか?話を続けましょう。ごほん、あなたには異世界に行って欲しいのです」
やはりそういうことか。
まさかこんなことが現実に起こるなんて驚きだ。
現実に未練などない。答えはひとつだ。
「分かりました。異世界に行きましょう。それで行って何をすればいいのですか?」
「してほしいこと?そうですね…なら魔王でも倒してもらいましょうか」
「魔王がおまけみたいな言い方ですね。本当の目的が他にあるのですか?」
「ありませんよ?では異世界に行くにあたり言語能力と特別なスキルをひとつ与えましょう。あなたの今までの人生を見て私が必要だと思ったものを与えます。」
「必要なもの?」
「あなたのスキルは空間支配能力『エスパシオ』です。」
俺の人生において必要だった能力ってことか?
それにしてもなんだか強そうなスキルじゃないか。
言語能力も与えられたから言語に苦労することも無いだろう。
女神の手を掲げると同時に体の下に魔法陣のようなものが現れた。
「それでは良き旅を!」
魔法陣が光り輝くと、俺は異世界に飛ばされた。
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