第4話 義明と氏康の一騎討ち
合戦開始から両軍合わせて数万の軍勢がぶつかり合っていたが、昼過ぎに国府台城から北条の勝鬨が上がると、戦闘を放棄する兵士が増え始め、形勢は一気に北条に傾いた。小弓公方方の兵士は我先にと戦場を離脱しようと四方八方へと逃げ回り、夕方ころには掃討戦へと移りつつあった。
混乱する戦場で、足利義明は白刃を振るって、雑兵を蹴散らし、なんとか河原近くにまでたどり着くことができた。
そこの騎馬の集団の中に北条氏康がいた。
ほぼ同時に北条氏康は足利義明の姿をみとめた。氏康は思った。敵陣の中で単騎になっていても、まだ勝機を見失わず獅子奮迅の戦いぶりを続けている。武士の棟梁足利尊氏の末裔の戦いぶり、何と勇ましい姿なのか。
義明は力の限り叫んだ。
「我が名は足利義明。そこにおわすは北条方の大将とお見受けする。小弓公方の首はここぞ。真の武士であれば我と一騎打ちで勝負いたせ!!」
北条氏綱と北条氏康は近習のものを引き連れ、移動中であった。氏綱が氏康に声を掛けた。
「氏康、放っておけ。負け犬の遠吠えだ・・・。おい、やめろ。どこに行く!!」
北条氏康は馬の方向を変えて、速度を上げていった。馬の走る向こう側には足利義明がいた。
「我こそは北条氏康。足利義明殿とお見受けする。ご覚悟!!!」
抜刀した二体の騎馬武者が直線に交錯した。氏康の太刀は空を切り、義明の太刀は氏康の額をえぐった。血霧が空中に舞い散り、兜がカシャリと地面に落下。氏康は平衡感覚を失って落馬した。
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