第64話 釣り大会の結果とこれから




 和気藹々と言っていいのかわからないが、ともかくみんなで楽しめたであろう釣り大会の結果発表。最下位はやはりというかなんというか……俺である。五匹釣れた。


 釣りをしながら他の人のところに遊びに行っていたから、これは仕方がない。決して釣りの才能がどうとかそういうわけではないのである。たぶん。


 別に景品とかあるわけじゃないけど、いちおうは釣り大会という名目なので、釣り竿以外で魚を捕獲したメノさんとシオンはランキングから除外するとして、一位はヒスイとソラが同率の一位だった。


 二人の物静かな雰囲気に、魚も警戒心を解いてしまったのかもしれない。二人とも二十五匹だった。俺の五倍である。


 その他のメンバーは、アカネが二十三匹、ヒカリが二十匹で、ロロさんも同じく二十匹、フロンさんが十五匹で、リケットさんとルプルさんが十三匹、ディグさんが九匹だった。

 ちなみに、メノさんが三十匹で、シオンが二十九匹である。


 ちょこちょこみんな釣り場を変えていたとはいえ、あまりにも魚を乱獲しすぎてしまったので、食べる分以外の魚はリリース。シオンがクナイで仕留めた魚は死んでしまっている者もいたので、これは優先的に食べることにした。




 釣り大会のあとは天ぷら大会が行われ、これまたみんなで協力して準備をして、楽しく美味しくいただいた。葵たちは幸せそうだし、ディグさんとフロンさんもみんなと楽しく会話をしていたようなので俺としては大満足である。またやりたい。


 メノさんも『私が一番だった』とドヤっていたので、先日の『頑張ったら頭を撫でる』というルールを思い出して実践。すごく嬉しそうにしていた。表情には出ていなかったけど、めちゃくちゃ足取りが軽くなっていたからとてもわかりやすかった。


「ルプルが教えてやるのだ! 光栄に思うのだ!」


「「ありがとうございます!」」


 そして夜は我が家に集まってゲームの時間である。

 ルプルさんが率先してフロンさんとディグさんに麻雀のルールを教えていた。彼女、負けが続いていたからなぁ……あの二人が自分より弱いことを信じて育成しているのだろう。頑張ってくれ。


 リケットさんとロロさん、それからヒスイ、ソラ、アカネという生産を主にこなしているグループは、五人で七並べをしているようだ。あの優しい五人で七並べをしたらどうなるんだろうとちょっと気になったが、こちらはこちらでゲームをしているので確認は諦める。

 そして残る俺、メノさん、ヒカリ、シオンの四人はというと、ババ抜きをしながら『次は何を作ろうか』とを話しあっていた。


「目安箱みたいなのがあったらどうだろう? もちろん匿名でさ」


 地域によっては識字率が悪いところもあるらしいが、とりあえずいまこの島にいるメンバーに文字がかけない人はいない。俺と葵たちは、日本語しか書けないけども。


「……目安箱ってなに?」


「えっとですね、みんなからの要望とか意見を集めるような箱?みたいな感じです。直接は言いにくい人もいるでしょうし、そういう箱があったら便利かなぁとおもったんですが」


 特に七仙以外の四人は、『〇〇が欲しい』だなんて言いづらいだろう。


 リケットさんやロロさんは少しずつマシになってきてはいるものの、恩を返したいという意識は相変わらずだ。フロンさんとディグさんに関しては、治癒のこともあるからさらに言いづらいと思う。


 葵たちも性格上あまりわがままを言わないから、これを期にいっぱい言ってほしいと思うんだけどなぁ。


「やるとしたら、まずは気楽にやれる雰囲気を作らなきゃいけないですかね。葵たちやメノさんやルプルさんが、率先使ってくれるとありがたいです」


 俺がそう言うと、三人が目を細めて俺をジッと見てくる。さらにタイミングを示し合わせたかのように、同時にため息を吐いた。


「兄上、自分を忘れてるでござるよ」


「いつものやつだ~」


「……すぐ自分を忘れる」


 矢継ぎ早にツッコまれた。三人とも、そんな目で俺を見ないでください。


「い、いや、でもさぁ、俺はいつも自分のやりたいことをやってるけど、みんなは俺に許可取ってからやったりするだろ? だから俺は別にいいんじゃないかなぁって」


 だから忘れていたわけじゃないんだよ。本当に。

 まぁ、『この島に何があったらいいかな?』と考える際、自分のことはあまり考えていなかったけども。


「いいこと思いついたでござる! 『兄上に遊んでもらう』という要望を出せば、一緒に遊べるし兄上も休ませることができるでござる!」


「あー! それいいかも! こんど一輪車で競争しようよ~。あ、書けばいいんだよね!」


 シオンが『これぞ名案!』といった明るい表情で言うと、ヒカリも楽しそうにその意見に乗っかってくる。それははたして目安箱に投書するようなものなのか? 別にそれぐらいの要望なら聞くけどさ。


「……アキトを休ませるためなら仕方ない。私も一肌ぬぐ」


 ふふん、と鼻を鳴らしながらニンマリとした笑みを作ったメノさんは、さっそく「箱はどれぐらいの大きさで作る?」と話を進めてしまっていた。シオンとヒカリはその質問に応じ、発案者の俺をそっちのけで会議が進行していく。


 メノさん、もしかしなくても俺と遊びたいだけでは? と考えてしまうのは自意識過剰なのだろうか。

 



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