第11話 大地下施設

 それは、天然の洞窟のようだった。

 地下を掘ったというよりは元々あった空間を使ったような部屋がドアの奥にはあった。

 天井や壁はまっすぐになっていなく、ゴツゴツしているし部屋もきれいな四角になっていない。狭くなっているところに木の板とドアをはめて出入り口を作っているが、ベースは洞窟のように見える。


 ただし床は土を薄くしいてならされていて平らになっていて、そこに木製の質素な椅子やテーブルがあり、水樽や木箱に入った干し肉などがあり、壁には武器が立てかけてある詰め所のような場所だ。

 そこにいたのは、緑色の鱗の四人の竜人――いや、さっき剣が刺さった人が呼んでいた言葉にならうなら四人の竜人兵がいた。


「門番、ってとこか」


 部屋の奥には洞窟の通路が見える。結構広い空間が地下に広がっていそうだ。ここは、儀式場に入っていい人間かどうかを見張っているのだろう。


 俺達は奥へ行きたいところだが――。


 当然竜人兵達がそれを許すわけなく、武器をつきつけてきた。


「やっぱり」

「やるしかないですね、シキ!」


 トリーが剣を持った竜人と剣を交えた。

 となると、俺は槍を持った竜人兵の相手をすることになる。


 槍のリーチをいかして突いてくる竜人兵だが、こちらには氷の杭を飛ばす氷魔法がある。飛び道具の方がよりリーチは長い。


 突いてきた槍からいったん大きく距離を取り、間合いの外から三連発放った。二匹の竜人兵の顔に杭がめり込み、その場に倒れる。

 後にいて射線が通ってなかった残る一匹が吼えながら槍を突いてくるが、その槍を見切り、奪い逆に突き刺してそいつも撃破した。


 さっきの赤い鱗の竜人兵よりもスピード感がなかった。いずれも危なげなかったけど、こっちの緑の鱗の竜人兵の方がより力を抜いて倒せたし、竜人兵にも能力の差異があるようだ。


「さて、トリーは――」


 トリーの方の様子を見ると、まさに竜人兵の剣をトリーが体捌きで回避したところだった。そのまま遠心力を利用して次はトリーが剣を振り抜き、竜人兵の鱗ごと胸を真一文字に斬りつける。


「やりました!」

「まだだ、トリー!」


 トリーは勝利を確信するが、しかし竜人兵は胸を切られながらも倒れない。緑の鱗を赤く染めながらも剣を逆袈裟に切り上げる。


「うそ!? くぅっ!」


 トリーは間一髪肩をかすめただけで剣をかわせたが、しかし竜人兵の攻撃はやまない。肩の鱗を突き出して、ショルダータックルを決めてきた。


「に゛ゃあっ!!」


 トリーは吹き飛ばされ、椅子とテーブルに激突し巻き込みながら地面に転がる。

 追撃に備えてすかさず起き上がったのはたいしたものだが、眉間に皺を寄せた。


「いっ……た……! 肩が……」


 肩を押さえるトリーに竜人兵がすこさず追撃の剣戟を浴びせる。

 だがトリーも反応し、痛みに耐えながらさっき傷つけた竜人兵の胸をさらに狙って剣を横に振るう。


 先に届いたのはトリーの剣だった。

 胸の傷はさらに深くに達し、今度は致命傷となり竜人兵は血を吐きながら倒れた。

 同時にトリーも膝を突き、荒い息を吐いた。


「はぁ……はぁ……なんとか、勝てました……あ」


「お疲れ様」と俺は詰め所にあった木のコップに水樽から水を入れてトリーに渡した。


「わ! 気が利くぅ。 ……っふー! 生き返りましたー、ありがとうございます」トリーは口を拭いながら「それにしても、やっぱりエシュガル危ない奴でしたね。これは追及しないといけませんよ。私達を騙して始末しようとしてきた恨みもありますし!」

「ああ、そうだな……」


 といいつつ俺は、一つ気になることを確認していた。

 自分自身の状態、特に経験値を表示する。


======

◆経験値 ■■■□□□□□□□

======


 これは思った以上だ!


 経験値のゲージが応接室とこの地下の奴らを倒したことで、数%ほど追加されている。


 竜人兵がその辺の野良モンスターよりは明らかに強いから結構経験値稼げてるんじゃないかと思ったんだが、思った通りだった。

 この先にもっとたくさんこいつらと同じようなエシュガルの竜人兵がいるとしたら、これは経験値大量獲得チャンスだぞ。


 俺はちらりとトリーの方を見た。

 トリーは肩を上下させて息をしている。結構苦戦していたから無理もない。

 よし。


「トリー」

「どうかしました? シキ」

「こいつらみたいなのが、この先にもっとたくさんいるかもしれない」

「そうですね。なかなかしんどそうです」

「だから、トリーは帰った方がいいと思う」

「なんでですか。エシュガルに騙されて襲われた借りを返さなきゃですよ!」

「気持ちはわかるけど、結構苦戦してただろう?」

「う」


 トリーは気まずそうに高速で瞬きをする。


「あれよりもっと強い竜人兵がもっとたくさんいるかもしれない。ちなみに応接室のはあれより上だった。せっかく山で拾った命を捨てるのはもったいないでしょ」

「うーん……正直この怪我じゃ足手まといにしかなれなさそうだし、しかたないかあ。でも、シキは一人だ大丈夫ですか?」

「問題ない」

「断言! たしかに上とここの戦いっぷりを見れば信じられます。それじゃあ、任せました! 私は勝利を祈ってますね! あとエシュガルがやらかしたこと報告もしておきます! そしたら援軍も呼べるかもしれませんし」

「うん、頼んだ」


 納得したトリーは階段を登って地下から出ていった。

 俺はそれを見送ってほっと息をついた。


 ふっふっふ、うまくいった。

 これで地下の経験値を俺が一人で独占できる。


「この竜人兵の経験値は全部俺がいただき、そしてレベルアップをして生き延びる!」

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