第10話 隠された下の顔
「うそ! なんですかこれは!?」
「新種のモンスターなのか?」
出てきたのは、竜の顔だった。
赤い鱗の爬虫類の顔が仮面の奥にあった。
だが顔の形は丸みを帯びていて、人間っぽさもある。
何より、二足歩行で手に武器を持っているのだから、完全な竜ではない。
言うなれば竜人というべき者達が俺とトリーを狙っている。
こんなモンスター俺も見たことがない。
しかもエシュガルに使われているようだし……。
「ねえなんか不穏な空気じゃない!?」
「不穏どころか、確定で襲ってくると思う。構えた方がいい」
俺達もソファから立ち上がり臨戦態勢を取る。
トリーは剣を抜き、俺は氷魔術によってギザ歯の氷歯刃を生み出す。
お互いに武器を構えて身構える。竜人達はいずれも剣を持っていて、レザーアーマーを身に着けている。もちろん剣を持つ手にも赤い鱗で覆われている。まさに、二足歩行した丸顔の竜という感じだ。
相手の中には一人、人間もいる。
その人間が号令をかけると、先手を切って剣を持った竜人二匹が斬りかかってきた。
まず一匹、剣を振り下ろしてきた腕を掴んで止める。そして斬りかかってくるもう一匹ごと氷歯刃で一刀両断した。
「な!? く、お前らも行け! 行けえ! 竜人兵が人間に遅れを取るな!」
相手に一人いる人間が叫ぶと、残りの三匹の竜人も応接室のテーブルを蹴り上げながら迫ってきた。
俺はいまだに掴んでいる腕を振り回し、胴体を両断した竜人兵の体を向かってくる奴らに向かって思い切り投げ飛ばす。
投げ飛ばされた上半身にぶつかって体勢を崩した竜人兵達を、体勢を立て直す前に切り捨てていく。
『ガアアアアア!』
軽くしか胴体が当たらなかった最後の一匹はなんとか踏ん張り、鳴き声を上げながら俺に向かって剣を振り抜いてきた。俺はその剣ごと竜人を引き裂き、全ての竜人を片付けた。
さて後は……。
「ぎぃゃああぁああぁ!!!」
残るは指示を出していた人間だけ、と思ったら、折れた竜人兵の剣の刃がそいつの喉に不運にも刺さっていた。喉を抑えながら床を転がり、高級な絨毯を赤く染めながら指示役も息絶えた。
「片付いたか。何がどうなってるんだろうか、トリー」
「まったく! わかりません! なんで私達襲われたんですか~?」
トリーもわかってないらしい。
ひとまず危険は去ったが、何が起きたか調べたいが、唯一の人間は事故で死んでしまった。話を聞きたかったんだが、自分達で調べるしかないか。
俺は切断された竜人の服をめくる。
腕や胴も竜の鱗に覆われている。指で叩いてみると硬く、しっかり竜の鱗だ。しかし手の指は人間のような繊細さもあり、道具が扱いやすくなっていて、竜と人間のいいとこ取りみたいなモンスターだな。
「ここじゃこういうのが結構いるの?」
「まさか! 私も初めて見ましたよ」
ということはエシュガルオリジナルか。
なかなか臭いな。
これは、追ってみる方がよさそうだな。
俺はエシュガルが消えた応接室奥のドアを開いた。
だが。
「あれ? ここに入ったはずなのにいませんね?」
そこは物置のような小さな部屋になっていた。
棚があり、色々な日用雑貨が置かれているが、特に目をひくものはない。
そしてここに入ったエシュガルがなぜかいない。応接室と繋がるドアしかないのに。
「消えるわけはないから、どこかに隠れた出入り口があるのか。ますます怪しいな」
『私は先に儀式場に行く』とエシュガルは言っていた。つまりその儀式場とやらに続く道がこの部屋のどこかにあるということだろう。
二人で壁や棚や床を調べていく。
と、よく見ると床に変なつなぎ目があった。そこに指をかけて力を込めると蓋のように持ち上がり、下へと向かう階段があらわれた。
「おお~。隠し階段が」
「この先に行ったらしいな」
俺達は階段を降りていった。
階段はかなり長かった。
相当地下深くまで進んでいるようだ。
そして最初は壁が邸宅の壁と同じような風だったが、ある程度進むと壁が自然の岩肌のようになってきた。
そこからさらに階段を降りていくと、ついに階段は終わり、1メートルくらいの短い通路の先にドアがある。
これが儀式場だろうか。
俺とトリーは目で合図をして、勢いよくドアを開いた。
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