頭上。


 もしかして、誰もこの異変に気付いていないのだろうか。


 ×××


 みんな当たり前のようにスマホを触っている。


 電車でも、公園でも、学校でも、職場でも、お風呂の中でも、就寝時でも、スマホはそばにいる。


 歩行中だろうと、自転車に走行中だろうと、自動車の運転中だろうと、そんなのは関係なく、スマホの画面に夢中になっている。


 ぜんぶ世の中に情報が溢れすぎたせいだ。

 一億総スマホ依存時代、それが現代である。


 インターネットは進化しすぎてしまった。

 人々はスマホによって脳をハッキングされてしまい、スキマ時間に耐えられなくなってしまった。

 娯楽は全てスマホ一台あれば完結できる時代となった。


 だから、歩行中でもスマホをイジるんだ。



 ×××



 スマホが故障したのはつい先日のことである。

 ただ、仕事が忙しく、なかなか携帯ショップに足を運べずにいた。普段なら昼食の際、駅前のベンチでYouTubeでも見ながらサンドウィッチやおにぎりを食べているところではあるが、その肝心なスマホが壊れたせいで、仕方なく、風景を見ながら昼休憩をとっていた。



 なんの気なしに顔を上げて、頭上を眺めた。

 私は恐怖で、開いた口が塞がらなかった。


 通行人、誰も気が付いていない。




 テレビで『歩きスマホをしていたせいで目の前の工事現場に気付かず、看板に頭を打ち付けて、開いていたマンホールの中に落ちていき、全治2週間の怪我を負った人』という動画が笑えるものとして紹介されていた。私はクスリとも笑えなかった。



 歩きスマホをすると視野が狭くなる。


 そうやって、すぐ近くの危機を見過ごしてしまう。



 ※ ※ ※






 ああ、本当に誰も気付いていないのだろうか。


 歩きスマホが日常になった現代。視野が狭くなっていて、私以外、誰もこの異変に気付けていない。





 ───すぐ頭上から巨大隕石が落ちてきているというのに。





───────────────────

テーマ『歩きスマホ』

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