〜17〜「踏まれたい、罵られたい、死ぬ……」


ここは学校の体育館。人がパンパンに入りまだかまだかと待ち侘びている。

周りにはたくさんの機材や、黒子の撮影班がいる。

そして黒子が合図を出すと、周りが暗くなり舞台の幕が上る。


バンッとスポットライトがつくとある男がそこにはいた。

その男をみると黄色い歓声が鳴り響く。

「さぁ、始まりました! 『コスプレ選手権in学園祭バージョン』司会は私グットマンがお送りいたします!」

コスプレ選手権、それはこの国でゴーデンタイムで一番人気のコスプレを判定する番組。

難易度の高い判定や、見た目の忠実さなどをランキングにする番組だ。

舞台の目の前には番組の審査員が席には座っている。


そして進行役の一人目ははグットマンという。さっき登場したのがこの人。

数々のアニメやゲームなどの声優を務め、琉偉さんや煜さんがやっている『世界人生過多マニュアルオーバー』のゲームの案内役ミライの声優として名を馳せている。


そして隣には煜さんが立っていた。今回は進行役として務めるらしい。

グットマンさんに会えておかしくなっていないだろうか?


「こんにちは、グットマンさん。私は進行役の桐神 きりがみ ひかると申します。念の為、グットマンさんがわからない方に説明すると……『世界人生過多マニュアルオーバー』は少女達が通う学園都市アルカディアを舞台に悪と成り果ててしまった偉人を倒して本当の自分を見つけるストーリー。数々の名高い声優陣や作画の最高峰『マスターズ』が監修、キャラごとに違うのスキルを使う独特なターン制バトルアクション。鬱要素のあるストーリーが重く心に響く。そんなゲームの不思議で面白い案内役ミライの声優さんに会えるとは驚きを隠せません」

長々と話す煜さん、進行役の人選を間違えているような気がするのは確かだ。

グットマンさんも引いてない? 大丈夫?


「そうかそうか! 君はそんなにも『世界人生過多マニュアルオーバー』が好きと言ってくれるか! 僕はね、一番ドレス姿のアリシアさんが推しなんだよ。あの綺麗な背中のライン、あの声の綺麗さ、あの姿で罵られたいね!」


「わかります、その気持ち」

あー、ダメだ。グットマンさんもダメでした。

二人でオタトークを進めないで欲しい。

そして煜さんもグットマンさんもキャラが崩壊してます。


そのオタク感を隠してください、オタトークは後ほどしてください。ね? (圧)

「まぁ、話はこれくらいにして。そろそろ始めていきましょうか!」


「そうですね、まずはエントリーナンバー1番、楠木先生くすのきせんせいでグットマンさんです! どうぞ」



そうそう、早くはじめて欲しいんです、僕は一番最後の12番だから時間がある。今のうちに増えている玄之みんなで【コスプレを作れるようになるスキル レベルⅦ】で作った見た目が完璧かを見極めている。見た目は琉偉さんにすら内緒にしている。




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そして玄之の順番になるまであと少しとなった。

声も【声優陣の声色 レベルⅦ】でそれぞれ変えている。

結構見て来たから完璧になったはず。


楽屋で最終確認をして舞台へと足を運ぶ。


恥ずかしいけど何を言うかも練習済み。

あとは頑張ってやるしかない。人数が複数なのは琉偉さんがゴリ押して通したらしい。

僕は何もしてない……これに出ることになったのも琉偉さんが勝手に資料を作って出ることとなったから。



「さて、最後になりました! エントリーナンバー12番、黑杉 玄之くろすぎ くろこで『世界人生過多マニュアルオーバー』の3人組です?! 期待できそうです! どうぞ!」


その声掛けと共に舞台襟から玄之3人が登場する。

急な明るい舞台に少し目を細くしてしまう。


そうして出て来たのは女の子3人。

みんなこの学校とは違う制服を着ていて仲が良さげで登場した。

わかる人はすごく驚いている、特に煜さんやグットマンさん辺りが。審査員も『ヤバ……』みたいな顔してる。


「本当に此処になんで呼ばれたのかしら」

「アリシア! 挨拶して!」

「そうですよ? ちゃんと挨拶をしないと、撮影されているんですからね」

そうだったわね、と少し思い出してスッとスカートを直し挨拶をする。



「そうね、私は高貴なる血統。ソマリエ・ライ・アリシアですわ」

「私は、マシアス・ルソ・クリスリアです♪クリスって気軽に呼んでください!」


「私はクアンタ・シア・ナミリエ。……もうなんとでもお呼びください」

一人目は金髪で縦ロールの女の子、クリっとした大きな眼は人を惹きつけるような可憐なお嬢様、アリシア。正真正銘高貴なお嬢様で人気も高い。


二人目は薄い青のショートヘアをした女の子、少し背が小さいが元気で明るくムードメーカーな存在、クリス。庶民の身だが実力で学校に入学してきた。


3人目は黒髪ロングの女の子、お淑やかなメイドで少し周りに馴染めていないがアリシアに仕えている、ナミリエ。どこからともなく紅茶を出すのが特技。



「これってコスプレだよね? おかしいな、ここに推し達がいるように感じるんだけど」

グットマンさんは頭を抱えて悩んでいる、声も見た目も、全てが推しにしか見えない。

魔術で作った幻影かと悩むほど見た目が忠実なのだ。


「玄之くんだよね、声も違うし」


「玄之とは誰ですの? 知っているかしら、ナミリエ」

「私も存じ上げませんね」


「私知ってる〜! ここの生徒の名前だよ♪」

「キャラを守るつもりか……」

此処でキャラを崩壊させるわけにもいかない、忠実にしないと。少しアレをやるか。


そう思い煜さん達が好きな姿へと変える。

これで高得点間違えなし、忠実な早着替えなんて僕しかできないだろうし。

「あれ? 衣装が変わったわね、ドレスに着替えているのは何故かしら」

「私もいつものメイド服へと変わっていますね、投げナイフまで入ってます」


「私はなんで水着なの!? みんなの目の前で恥ずかしいんだけど」

「グハッ、リアル推し。尊い、神、天使……」

「踏まれたい、罵られたい、死ぬ……」

よし、二人の進行役をダウンさせた。これでいい。

時間が迫っているとカンペで書いてあるし、そろそろ転移しよう。



「「「また会いましょう(会おうね)【簡易転移】」」」

そう言い三人は、転移で帰っていく。




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楽屋に戻ってきた玄之、一気に疲れが押し寄せる。

見た感じいまからランキングを発表するみたい。


これにて演技は終わり、スキルも解除。

そうして三人は玄之に戻る。




ランキングはどうなるのかな。

一位にはなってもいいけど注目されるのは嫌だな。

あれ? ここにいる時点で見られていた……?


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読んでいただきありがとうございます。


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