〜18〜表彰式は逃げるんだよぉおん!!


「君ちょっといい?」

楽屋から出たらグットマンさんにバッタリ会ってしまった。

こんな有名人から話しかけられることなんて一生ないだろうな……。


「どうしましたか? 僕で良ければ聞きますよ」


「あのね、僕の見た目をミライに変えられたりしない? こう見えて魔眼持ちでね、スキルを使って変えてるのはわかるんだよ」

「まぁ見た目を変えるくらいは出来ますけど……

グットマンさんが唐突な魔眼持ち発言で少し動揺してしまうが耐える。


魔眼とはこの世界では嫌われているものの象徴であり、石に変えたり、未来を見たり、透視したり色々な物がある。信用している相手にしか話さないトップシークレットになる。


グットマンさんいわく、相手が使っているスキルやデバフの名と効果を知れると言う物。正直なところダンジョンで活躍できうる魔眼だと思う。


だがダンジョンは行きたくないとのこと。意外と怖いみたいで、明るい性格とは違う裏側だと感じた。



そして見た目の変え方を教えて直ぐに使ってみると、完璧に案内役のミライになっていた。

一発でも変える相手を詳しく知っていればできる物なのだと実感した。




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そして審査が終わり発表になる前にみんなは目を疑った。

「やぁ諸君、僕はこの世界の案内役、【ミライ】だよ! これから僕が案内をするね♪よろしく!」


舞台にはあの『世界人生過多マニュアルオーバー』の案内役ミライがいるのだ。

浮いた小型のロボット、左右の耳のような物でホバリングをしておりマイクをスタンドにセットして話をしている。

結構シュールな絵面で少し笑ってしまいそうだ。


「では第三位から発表だよ! よく聞いてね!」

そんな場を放置しながら三位の発表へと移る。


「三位はエントリーナンバー7番の三珠 筋楽みたま すじらくんで煜くんだね! ちゃんと似せて来ていてビックリしたよ!」

煜を似せていて、持ち前の擬態技術で煜さんのホクロまで完璧に仕上げた。忍者という職業柄、ドロンと煙玉を焚いて逃げていった。


「二位はエントリーナンバー1番、楠木先生くすのきせんせいでグットマンさんだよ! 純粋なコスプレで此処までできるのは誇れるんじゃないかな♪」

グットマンさんの声以外はそっくりで、まずまずすっぴんが似ていたことからグットマンさんのコスプレを始めたんだとか。


「一位はやっぱりこの人達、エントリーナンバー12番。黑杉 玄之くろすぎ くろこくんで『世界人生過多マニュアルオーバー』の3人組です! やっぱりあの三人組はいいよね!!」

最後の最後に玄之というどんでん返しを食らってしまった楠木先生は残念そうな顔をしていた。

将来有望な子供に優勝の座を譲るとのこと。点数も二位と雲泥の差を見せつけた。


スキルは禁止されていない為玄之の【コスプレを作れるようになるスキル レベルⅦ】や、【声優陣の声色 レベルⅦ】【ドッペルゲンガー レベルⅥ】などは別にいいらしい。

そこが一番の勝因だろう。



そうして玄之の優勝が決まり、グットマンさんが表彰しようとしたが玄之は逃げてしまっていた。

いやだって、あんな全校の前に出るんだよ? 一回で十分。


なんやかんやあったが後夜祭へと移る。

玄之は特に踊る相手や一緒にいる相手がいないので学園祭は幕を閉じた、まぁはじにはいるけど。


ちなみにこの後、煜さん達は撮影なんだとか。




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校庭はキャンプファイヤーの光に包まれ、はじにいけば行くほど闇が広がる。

ここではダンスを一緒に踊った組は一生結ばれるというが立っていた。


本当なのかそれは少し怪しいが、淡い光で精霊を呼び踊りや歌で相手と自分を結びつける儀式を進めているのではないかという研究結果が出てはいる。

真偽は分からず、ただそのような噂があるとだけ。



だがそのような噂は直ぐに広まり、やがて好きな女の子と踊るという戦場へと化す。

あの子は俺と踊る、いや俺だ! とか酔いしれた話を今さっきまでしている。


こんな隠キャは端っこの方でゆっくりしているのが正義だ。

そう思いたい、けど。



「ねぇ、僕と踊らない?」

「いや、俺の方が一緒にいて楽しいぜ!」

何故男子達に口説かれているのでしょうかァ!! ハァ? 僕って男だヨォ? そんな趣味なの? ねぇ?

叫んでいるのは心の中だが今すぐにでも本気で叫びたい。


多分、クロエちゃんとかそういうので踊りたいのだろうが、そんな趣味は僕にはない。

あと踊る気がないし、絶対好きにはならないし、恋愛対象にすらなれない。


そして新たに一人の人影がこちらへと迫って来た。

また口説く人が増えるのはゴメンだ。

「玄之くん人気だね? そういうのもいい趣味だと思うよ? 応援する」

「違いますね、あっちがそういう趣味なのです。僕は至って普通なモブです」


何か琉偉さんは悟らないで欲しい。男子もそろそろ帰ってくれないかな。意識が飛ぶギリギリだから、緊張しすぎて。

「あっそうそう、君たち。そろそろ帰らないと嫌われちゃうよ? 色んな意味でね? ……それでも良いならこのまま続けなよ」


「それは嫌なのでそろそろ帰らせていただきます」

「これからも仲良くしてな!」

そう言いそそくさと帰って行く男子。少し寂しそうな背中をしていた。まぁ知らないけど。


「よろしい、玄之くんは私が借りるから」

「え、そういうことだったんです?」


「え? 違うの?」

豆鉄砲を喰らった鳩みたいな顔をしている琉偉さん。

だってそろそろ帰ることを考えていたんだけど。踊る気はないって聞いていただろうし、ヒロインは攻略対象というイケメン達がいるでしょうに。


でも今って撮影なのでは? うん、時間的にはそうだよな。

「撮影は終わりました、だから玄之くんと踊る」


「話が噛み合ってませんけど、それについては?」

え、知らんけど。みたいな顔をしないで、今日って琉偉さんにとって顔芸の日なのだろうか。

あとちゃっかり心を読まないでいただけるとありがたいです。



うーむ、わからない。

もうそろそろ1年ちょっといるけどわからなすぎる。謎が多き美少女。


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読んでいただきありがとうございます。


面白ければ★★★、面白くなければ★。


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