〜12〜玄之増殖、そして五人兄妹になってみた。
今日は休み明けの月曜日。
教室はとてもうるさく騒ぐ陽キャや、ガヤ達。
中には恋人同士でイチャつく奴らまで出てき始めた。
琉偉さんも忙しく
どうやったらあんなにも人を捌ける様になるのだろうか。
そんなこと遠い目をしていると、誰かから話しかけられる玄之。
「オッス! 玄之! こんな端っこで何してるんだよ〜!」
「やめろって、もう玄之は泡を立ててシンとしてるから!」
そしてモブである玄之はなす術もなくガヤの目の前で気絶してしまっていた。
慣れている人ではないと話しかけられたらほぼ気絶してしまう。
最低でも認識がないといけないし、好印象でないといけないというハードルの高さ。
その辺の女子を攻略するより難しいだろう。
一応言っておくがこのガヤとは面識はないし、ただあのスキルを見たいだけのガヤである。
ガヤはガヤでしかないんだな……。
そして何かに気づいたようで急に逃げるかの様にガヤやモブは道を開ける。
そうヒロインのお通りだ。
「玄之くん、大丈夫? 死んでない?」
「大丈夫、だと思います。琉偉さん……」
いつのまにかこの目の前にへと来るヒロイン。
こんな話しかけてくれる天使は居ないはずなんだけど人が見てるとただの嫉妬で埋め尽くされている。
『何故アイツがヒロインちゃんと一緒に』みたいなヤツまでいるから。
そんなことはもう放っておくしかできないけど、次の授業は確か……?
「次の授業は学園祭の準備だね♪またクロエちゃんになってね?」
え、嫌なんですけど。
そんな目をされてもね……? 防御しないとそろそろヤバい。
こんな時は、必殺! 【眠っているフリをして目を瞑る】
これで話しかけられても聞いてなく見えるし、聞いてなくても「眠っていたから」と言えば大抵は回避できる。
「眠ったフリしても意味ないよー♪まぁ先生も使い方を聞きたいみたいだし、ガンバってねー」
……先生?
先生に言われたのだろうか?
終わった……。
心の中で合掌をしておこう。
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授業が始まり、生徒は席に着く。
先生が淡々とやることを話していく。
教室の飾り付け、看板作り、食べ物の販売にあたっての何を出すか。
やることは結構多いのだ。
あれ、これ僕全部できるな。
飾り付けや看板は黒子のスキル【飾り作成Ⅶ】でできるし、食べ物もコックっていうサブ職業で出来る。
普通、サブ職業は一人一つのみだが枠を増やすこともできる。
秘伝書を使うとスキルの追加、そしてランダムでサブ職業の追加ができる。
それに黒子のスキル【器用貧乏】で効果を二倍にする。
……ということは、スキルが確定で重複することにより2レベルに上がっている状態でもらえ、サブ職業がランダムで2個もらえるというもの。
いってしまえば秘伝書さえ使えばスキル取り放題と職業貰い放題の欲張りセット。
これだから黒子という職業は器用貧乏と言われてしまうのだ。
職業レベルも何かしらやっていれば経験値が入り、知らぬ間にレベルが上がる化け物が誕生する。
黒子は乙ゲーには出てこないチート職業である。
「先生ー、黒子くんが全部できるみたいです♪」
デジャヴを感じる琉偉さんの発言。
でも僕一人で全部は無理だよ?
人手が足りないから、まずまず一人でやらせるのはイジメなのでは?
「私のスキルで玄之くん増やして良いですか?」
そうか、琉偉さんのスキルで人を増やせる。
ヒーリングマスターの【ドッペルゲンガー レベルⅥ】ってスキルだったはず……。聖本を書き写すのに飽きた聖職者が自分の複製体を作ったのが始まりだとか。
ほぼ同じように考えることやできることが完璧な複製体、スキルまで同じものを持っている。
琉偉さんが自分の複製体を学校に通わせていたこともあったな。
だからやるとは言ってないし。そもそもやりたくないんですけど、あれ? 拒否権ない感じですかね。
「みんな取り押さえて♪」
「「「「「「アイアイサー!!」」」」」」
「逃げろッ!!」
そんな卑怯な! 琉偉さんの命令は従うしかない。
みんな僕を押さえ込む。
上に人が乗っていって死にそうなくらい重たい。
でもこれを抵抗できるほどの能力はないし。
賭けに出るか。
「【簡易転移】発動!」
そう言うと玄之がいたはずの場所には居ない。
みんなの後ろに隠れてソーッとトイレに逃げ込む。
……こともできるはずがなく、教室を出る前に捕まえられてしまった。
そうして玄之は増えた。
「僕は玄之です、よろしくお願いします」
「僕も玄之です、よろしくお願いします」
「僕も同じく玄之です、本物です。見た目を変えた方がいいのでは?」
「「「「いいと思う」」」」
玄之は五人に増えたがこれではどれが本物かすらわからない。
なので見た目を変えることにした。
本物の玄之は玄之のまま。
いつも通りで全体指揮を取ることとなっている。
指揮官のスキルの【念話】を使って全体に指示が出せるようになっている。長男担当。
二人目の玄之はデート姿のクロエちゃんに。
白いワンピースは凄く似合っていて、付属で意味のない麦わら帽子。純粋で大人しく飾り付け担当である。
デレる時もあり尊い。四女担当。
夏にぴったりのクロエちゃんとなっている。
三人目は前のヤンチャな見た目のクロエちゃん。
パーカーにダメージジーンズ、灰色のNEW.ERRORSのキャップ。ヤンチャな雰囲気を醸し出しているがツンデレのようだ。ギャップがかわゆい。三女担当。
看板やちょっとした小物作り担当、少し頬にペイントされているのがポイント。
四人目はメイド服クロエちゃん。
頭には大きなフリフリのカチューシャ。
クラシカルなメイド服、ふわっとした水色のスカートに、純白のエプロン。料理担当でマジ美味し過ぎるご飯を作ってくれる。お世話好き。次女担当。
まじ天使神……と叫びたくなる。
五人目はパジャマ姿のクロエちゃん。
ピンクのくまさんパジャマ姿、すっぴんを見れて可愛い。
くまちゃんスリッパを履いていて、外に出る時は白のクロップドにロンスカをはく。長女担当。
買い物担当でゆるっとしているがしっかりしている。
萌えるのが一番良い。
じゃあ初めていきますか。
そう地面を噛み締めると玄之軍団出陣だ。
なんて、主人公的なやり方を妄想していた。
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