〜11〜通りすがりのバンクシー


ほうほう、なるほど。

やっぱりクセがありすぎる魔法ばっかり。


家に帰ってきてもらったスキルを見ていく。

ゴロゴロしながらステータスで使えるスキルといらないようなスキルを分けていく。


使えそうなのは【水の温度を変える魔法】【簡易転移】【浮上】【スプレー缶でのバンクシー】くらいかな。



【水の温度を変える魔法】は単純に温度を変える。

下限はマイナス120℃、上限は120℃だって書いてある。

お弁当とかのお味噌汁を温めたりするのに便利そう。


【簡易転移】は転移の単純化させた魔法のようだ。

二人くらいが限界のようで一緒に転移するのであったら最低でも手を触れないといけない。

魔力がそこまで使わないので使いやすそうなスキルだ。


【浮上】というスキルは魔力さえ使えばどんな重さでも範囲でも浮かせることができる。

速度なども変更可能のようで一番の当たりスキルかもしれない。


【スプレー缶でのバンクシー】はスプー缶を持った時に絵を描く能力が上がるというもの。謎スキルの代表だ。

やってみるしかないのだろうけど。


そういえばこの近くにスプレーで絵を描いて欲しいっていう依頼が上司から来てたな……。

行くしかないよなぁ。




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ということで来ました橋の下。

ここはスプレーでの落書きをして欲しいという依頼がきており、何故かというとシナリオでここにくるんだと。

怖い感じのを描いて欲しいって言ってたから描きますかね。


まずは着替えましょう。

ここは意外にも目立つし人が稀にくる。


ということで【コスプレを作れるようになるスキル レベルⅦ】発動。

見た目は、そうだな。


前に名前をつけられたクロミちゃん姿、黒いパーカーを着て髪は後ろでポニーテール。

ズボンは少しチャラい感じでダメージジーンズをチョイス。

最後に灰色のNEW.ERRORSのキャップ。

キャップのストラップバックにポニーテールを通せば完璧。


「私的には完璧♪」

ちょっと口調も変えたら完成度が高いと思う。



「じゃあ、スプレー缶を持ってみてみますか♪」

そう言いスプレー缶を持つ。

思ったよりも手に馴染むのはスキルのおかげだろう。


そしてまずは何を書きますかね……?

そう考えると目の前にウィンドウが表示される。

なになに? このいっぱいある中から選ぶといいのか。


検索バーもあって使いやすそうだ。

【血 怖い】と検索すればホラー演出ができそうなリアルの血の絵柄ばかり。


この中から人が横たわっていてグシャっと血が飛び散っている絵を選択。

この人も変えれるのね。


じゃあこの巨体で首からチェーンをかけているお兄さんの絵にしよう。

強そうな人が死んでたらすごい怖いだろうし。

文字は……【you are already deadお前は既に死んでいる】とかかな。

そうして構図を完成させ、どこに描くかの位置確認。

「ここでいいかなー」


良い場所を見つけ決定を押すと自分が勝手に動き出す。


止めれるようなものでも無さそうだけど自分以外が操って居るみたいで怖い。

何分後に終わるのかな……。



絵を描き続け周りが見えぬまま自動で絵を描きながら一時間後。


やっと絵を描くのが止まり全体的に絵を見る。

決定を押した時と同じ大きさ、色、形。


自分が自動とはいえ描いたとは到底思えない代物だった。

「やっと終わった……! でも、傑作だね!」


そう言うと後ろ側から少しばかりの拍手が巻き起こる。

急な拍手に驚き、ビクッとしてしまった。


後ろをみると数人のお客さん。

今まで見ていてくれたのだろうか。

「嬢ちゃんすごいね! その絵の写真を撮ってもいいかい?」

「良いですけど……こんなもので良いんですか?」


「こんなものなんて、こんなリアルなタッチで風刺を描くなんて凄く勇気をもらったよ!」

お兄さんはそう熱く喋る。

風刺を効かせたわけではないが上手くいったのなら良いのだろう。


「じゃあ私行きますね♪また会う日まで!」

そう言いそそくさと帰るのであった。




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「まるでバンクシーの再来だな……」

そう言うのはさっきのお兄さん。

意外にも絵を保存するのがお仕事。


どんな皮肉が効いた作品でもお兄さんが美術館に入れると言ったら入れることができる権限まで持っている。

自分でも描いていて個展には20万人が来日するほどの美術家なのだ。


世界でも指折りの美術家を唸らせたのだからあのお嬢さんの個展を開きたい。

可愛いしモデルのお仕事もいいのではないだろうか。


そんなことを考えていたが、ふと気づく。

「名刺を渡しておけばよかったなー、まだ会ったらちゃんと渡さないと」

そう思いここを買い取ることを決めたのだった。


2000万ゴールドを支払って土地を買い、そこを切り抜く工事をする。

切り抜いたままでは危ないので綺麗に直す工事まで行う。


そしていつかは美術館を使って発表をする。

なんて良い発想なんだ。


そんな妄想をしながら不動産屋に電話する。

「ここの土地ってかえますか? え? 買えない? 国の道路だから買うなんてもってのほか……。そうですか、はい。はい。ありがとうございました。……失礼します」




なんて運が悪いのだろうか。

考えてみればその通りだ。ここ道端にある橋の下だよ? 上にも道路があるから工事したら何億ゴールドになるんだろう。

はぁ、今日は運が良くなかったのかな……。

そう思い肩を落とすお兄さんだったのだ。


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読んでいただきありがとうございます。


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