〜10〜ただの噓で実は○○


どこか貴族区にある屋敷の一角。

「旦那様! これが玄関に! もしかしたら琉偉さんの手掛かりなのでは?!」


メイドが慌しく部屋へと入り屋敷の領主へと渡す。

メイドが持ってきたものは上から見たどこかの地図。


「この見た目から市民区だな、この小さな公園が手掛かりということだろう。煜よ! 早急にここへ向かえ! 今直ぐにだ!!」

「旦那様承知いたしました。煜は早急に向かうように伝えておきます」


部屋から外へとだんだん騒がしくなっていく。



そして市民区にある一つの酒場だということが判明する。

至って普通な酒場だが人の出入りが極端に少ない。

しかし税はちゃんと払えている。


どういうわけか黒いフードを着た人たちが入店することもあるのだとか。

「騎士団です、人攫いの疑いで調査に来ました! 調査にご協力ください!」

「嫌だと言ったら? ここは至って普通の酒場なのだけど」


見た感じは普通の酒場のようなもの。

見るからに高そうな酒が次々に並んでいる。


剣に手を掛けジリジリと距離を詰める騎士団。

そんな時、目の前の店員が短剣を投げつけたのだ。


だがそんな脆い攻撃は、騎士団には届かなかった。

撃ち落とされた短剣を見ても動じない店員。


「捕まえろ! 騎士団攻撃罪で捕える!」

「捕まるものですかァ!!! 行きますよォ!!」


そう言いどこからともなく大量の短剣が飛んでくる。前や横。ましては後ろからまで。

どこからともなくフッと現れるのだ。


店員もこれは無理だろうとは思っていた。

しかし数名の騎士と煜が残った。


「騎士団も弱いのね、でもあなた達は強そう」

「でもその攻撃は見切ったよ、ゲートを繋げてなげていたんだろう? だが一つ欠点があったらどうする?」


「くっ、バレたか。でもそれがどうした」

そして店員が攻撃をしようとしでゲートを作り出した時、腹に剣が刺されているのだ。

「……な゛にィ?! 何をした貴様ァ!!」


「単純な話だよ、ゲートはこっちからも攻撃はできるんだ。微かにできる魔力を頼りに剣を投げつけただけだ」

そうなのだ。

このスキルはゲートを作り出し攻撃ができるようにするというスキルなのだが、ゲートがあるということはこちらからも攻撃はできてしまう。


あとは微かにできるゲートを作り出した時の魔力めがけて攻撃をすればいい。

だからといい直ぐにできてしまう煜もヤバいのだ。


「何故、だ……うそ、だ……ろ……」

そういいカウンターに倒れ込む。

簡単な敵ではあった。


そして奥のカウンターなどへ行き中を物色する。

特に変わったものはない。

すると一人の騎士が奥の部屋のカーペットの下に何やら怪しい地下への入り口があると言うではないか。


早速、向かう騎士団一行。

階段は奥深くへと続いており少しばかりの蝋燭がある程度だった。

階段を降り切ると少し大きな部屋へとでた。

盗賊のような奴らがポーカーをしていたが直ぐに制圧できる敵だった。


そして最後の部屋は少し頑丈なドアで封じられている。

鍵はすでに盗賊達から入手済み。


そうしてゆっくりとドアを開ける。

そこには琉偉の姿をした玄之がいた。


「大丈夫か! 琉偉!」

煜は一目散に走り抱き上げる。

手足が縛られていたようだが無事に救助できた。

「うん、大丈夫……安心した……」

そう言い安心したのか直ぐにフッと眠ってしまう。



「大丈夫、これからは離さない……」

そういい抱き上げながら帰路へとつくのであった。




======


ここは煜の豪邸の一室。


「って言うことだったの! マジで騙してゴメン」

「いや、別にいいんですよ。騙されたなんて思ってないですし」

前に煜さんとデートの練習をした。

それは最後の攫われるシーンを撮るために俺が呼ばれたらしい。

琉偉さんにやらせたことはあったんだけど脳筋でクリアしてしまったらしく、さらにあのスーツの人をボコボコにして中止になったんだとか。

で、僕の見た目を変えれるからやって貰うことになったけど反応が作り物ではイヤだとの監督の意向もあり伝えられないまま攫われたのだ。


「いや違うその目は絶対恨んでる、俺わかるからな?」

バレたか。

でも言わないのはちょっとおかしな話だと思う。

監督がどうとかじゃなくてあんな危険なスタントをやらされたのは腹が立つ。


「別に気にしても意味ないと思うぞ、」

うぉい! 兄さん?!

いつの間にそんな煜の後ろへ?


急に玄之とよく似た人が煜の後ろへいたのだ。

煜さんが、気づかないのはさすが兄さん。


玄之の実の兄で上司でもある【黑杉 黒くろすぎ くろ】。

この兄さんに色々と黒子としてのイロハを学んだ。

一流の黒子として、働いているのだが脅かすのが趣味というヤバい奴でもある。


ステレス性能は随一でどんな人でもどんな手を使っても見つからないことができる。

この人が今回の撮影だったらしい。


そりゃあ見つからないわけだ。


「兄さん、脅かすのは大概にしてください。煜さんが困ってるでしょ?」

「ゴメンな、本当。今回の俺凄かっただろ? 見てた? 弟よ」


「気づいたは気づいたけど見つからなかった。さすが兄さんだよ」

まぁ兄さんは面倒くさく凄いとか言っておかないとずっと話しかけてくる始末だ。


それは僕だって嫌だから話だけは聞いている。

でも、あんな強行突破でやる必要性あったのか?


そこのところが一番ひどい。

せめて断りの一つ入れて欲しいものだ。

「で? 兄さん、今回の報酬は? またいらないような秘伝書は要らないですからね?」


秘伝書という割には秘密にするほど強くないし、まず要らない。

どれだけの偉人が使っていたかは知らないけどそんな適当なものは役に立たない気がする。

「そんな言うなよー、俺がせっかく秘伝書五十選を持ってきたのに。意外と苦労したんだよ? 主人公達が最後に行くようなダンジョンで取ってきたんだから」


「盗んできたの間違えでは? 兄さん?」

「まぁまぁ兄弟喧嘩は程々にして欲しいな、クロさんが暴れたらこの辺吹っ飛んじゃうかもだからね?」

威力が強い魔法を打てるのは知っている。


けど亀を頭に落とすとか、見つけられたら逃げる爆弾とかおかしな魔法しか使わないし。

だからといえ亀が山くらい大きい奴とか爆弾以前に小さすぎるくせに威力が高いだけじゃないの?


それくらいならまだ……マシかなー。

「危険なのは人を殺す魔法くらいじゃあないかな? そうだよね、煜さん」

「いや? デカい亀を出された時は大変だったんですからね、100人で送り返すのに魔力枯渇するギリギリだったんですから」


「アイツ良い素材になるんだけどなー、ね?」

そうなんだよね。

アイツなんか口の中に魔法撃ち込めば直ぐ死んじゃうからレベル上げでお世話になった覚えがある。


売ると良い値段になるし、僕ですら倒せる。

簡単な仕事だよ。

「まぁそろそろ帰ってくださいね、クロさん。不法侵入で訴えますよ?」


「そりゃあ怖いこと、さっさと帰るわー。じゃあまた〜!」




そう言い転移魔法でさっさと帰って行く。

まぁ秘伝書使うか……。


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読んでいただきありがとうございます。


面白ければ★★★、面白くなければ★。


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