〜9〜デートの予定を聞かれる黒子。
学園祭の準備を進めていく玄之。
そんな時、煜さんからこんなメールが届いた。
〜〜〜〜〜〜
煜 少しデートについて考えているんだけど手伝ってもらえない?
玄之 別にいいですけど。どうされました?
煜 琉偉とデートしようと思うんだけど、どうしたらいいかわかんなくて。
玄之 相談に乗りますよ?
煜 じゃあ前のスキルで琉偉になれ、それで俺とデートして。
〜〜〜〜〜〜
「え? どういうお誘いなの?」
家でそんな声を上げてしまうほどビックリした。
最初は断った。
それでも諦めないのが煜さん。交渉の末、デートプランを一人で考えること、お金は全部煜さんの奢り、最後には告白の練習をすることで決着がついた。
上司からもそういうことが多分くるから手伝ってやれと言われている。
しょうがないので今週の土曜日にデート(練習)をやることとなった。
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噴水の前、とても綺麗な住宅街の真ん中にある。
「ごめん待った?」
そう言い煜さんはやってきた。
時刻ピッタリ、誤りも入れてポイントが高い。
「大丈夫だよ? それよりもどう? 今日の服。選ぶのをガンバってみたんだよ?」
そう語るのは琉偉さん?
いやスキルで見た目が変わっている玄之だ。
声も見た目もそっくりだ。
「凄くいいと思う、白いワンピースが君に似合っているよ」
ちゃんとどこかいいかを伝えている、最初にいいと提言している。ワンピースの花柄に気づいていないのは悲しい。
でもさすがメイン攻略キャラ。今のところ順調だ。
「ありがとう♪」
「じゃあ行こうか」
そう言い手を引く煜さん。
でもまだ恋人繋ぎではないところが惜しい。
頬も赤くなっているから緊張しているのだろう。
そしてまずはバザールの散策だ。
色々な野菜や、果物。各地から揃えられる物品の数々。
最初のデートには最適だろう。
何か付けられているみたいだけど勘違いだろうか。
「ここのお店美味しそうだね」
そういって煜さんが指をさしたのは、ベビーカステラのお店。
汚れないのと食べ歩きができる、恋人と買える専用カステラがあるのも高得点。
「いいね! 食べよ食べよ♪」
ここで少し仕掛ける。
「私買ってくるねー」
これは意外にもどう言えばいいか難しいやつ。
そこで買わせるのは恋人としていいのか疑われるし、だからといい俺が買うからいいよ、と言うと相手の気持ちを無碍にしているよう。
そして注文をし、お金を払う時。
ここまでついてきたはいいものの払わせるつもりなのだろうか?
「お会計、50ゴールドです」
「クレジットで」
おーっと、クレジット決済。
颯爽と取り出しすぐに払えるようになっている。
小銭をじゃらじゃらやる必要がない。
スマートだ、高得点。
「ありがとうございましたー」
「ありがとうございます」
ちゃんとお礼をいう、礼儀正しい。
女の子達はお店の人にも優しくすることを望んでいる。
もしそれで悪い態度を取るのだったら即刻縁を切られる可能性もある。
だからこれはとても良い!
そんなこんなで少し遅めのお昼時。
公園でパンを食べることを決めたようだ。
選んだパンも高くもなく、安くもない。
美味しいし、琉偉さんの好みをわかった上で買ってきたようだ。
メロンクリーム入りサクサクメロンパン、しかも新作。
琉偉さんがthe好きそうなパン。
僕も意外と好きだけど。
新作に釣られてしまうと思う。
公園の木漏れ日はあたたかくて気持ちが良い。
風もちょうど良い感じで吹いている。
そして会話をしながらご飯を食べる。
相手の速度に合わせながら食べるのは完璧。
食べ終わっても長めに話すことでゆっくりとできる。
え? 教えることある?
仕方がないのだがそんなことを考えながら時間は経っていく。
夕方、少し星も出て来るような頃。
ロマンチックな展望台での告白。
「琉偉、君のことが……」
そう言い切る前に僕は意識を失った。
というよりかは攫われたのだ。
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「……ん? ここは、どこ?」
起き上がると手足が縛られていて動けない、というより動かない方がいい。
誰かが来た場合に、大変だ。
多分ここは地下の一室。
ジメジメしていて外が少し見える程度。
もう月が昇っており、少しばかりの蝋燭の火が足元を照らす。
ドアはあるが多分鍵が掛かっている。
これじゃあどうしようもない。
何故だか玄之は運悪く人攫いに会ってしまったのだ。
煜が対処出来なかったということは強いのだろう。
え? 詰んだ?
僕そんな戦闘出来ないよ?
サポートすらできないよ?
……。
でも……できることを探さないと、持ち物は多分何もない。
スキルは使えるみたいだ。
今使えるようなスキルは……?
思い出せ、頭を回転させろ。
そういえばあの前もらった地図を書くスキルって上空から見た自分がいる場所を地図にする。
赤点で表示されるからどうにかそれを送れないだろうか。
物体転移で一つ送るくらいは使えるけど煜さんがどこにいるかわからない。
可能性があるのはあの展望台。
でもいなかったら意味がない。
……でも希望があるとすれば前に行った煜さんの家の玄関。
あそこなら見つかりさえすれば助かるかもしれない。
そうとしか、信じるしか無い。
やるしかない。
「【上空マップ作成】……そして、【物体転移(下位互換)】」
目の前にできた地図は風に包まれ転移で飛ばされた。
これで上手くいけばいいのだが。
あとは待つしか……。
そんな時カツカツと誰かが来る音。
そしてドアの向こうから鍵が開く音。
鬼が出るか蛇が出るか。
目の前に現れたのはスーツを着た女性。
キリッとしたサングラスをかけ、こちらを睨んでいる。
「少しはいい子にしてなさいね、これから奴隷になるのだから」
何故? そう自分は問いたい。
だが声が出ない。
間違いなく強者の威圧。
子羊を狩る狼のようだ、ただ自分の無力さが心に刺さる。
こんな時本当の琉偉さんならどう言うのだろうか。
これから何をされてしまうのか……。
そんなことが脳裏をよぎる。
だが女性は、何をすることもなく出て行く。
僕なんか油断していても殺せるのだろう。
でも、時間さえ。
時間さえ稼げれば騎士団が来るはず。
そう願うばかりだった。
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読んでいただきありがとうございます。
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