〜5〜玄之くんは無自覚なのかはたまた……?

煜さんの豪邸にお呼ばれして護くんという弟の面倒を見ることとなった玄之。

煜さんの子どもの頃を思い出すような見た目はめっちゃ可愛いです。


琉偉さんから「バトミントンをやってみよう」という提案の下やってみることになった。


琉偉さん達とバトミントン用のネットが張っていたのだが。

意外にも護くんの手を上げた背丈よりも十センチほど大きいようだった。

「届かない……!」


めっちゃ頑張って手を伸ばしている姿は何とも微笑ましい。

琉偉さんが手伝うのだが背伸びしてやっと届く。


僕も見ていないでネットを張る。僕も少し背伸びしてやったので人の事は言えないけど。

でもいいの! 僕の方が琉偉さんより大きいんだから。

煜さん? 僕よりも大きいよそりゃあ。戦う土俵が全て違います。



ついに戦う事となったのだがなぜか僕しかやったことがないらしく……僕一人対護くんと琉偉さん二人チームで戦うこととなった。

前衛に護くん、後衛には琉偉さんと言うフォーミングが一番いいだろう。


まずは手始めに僕から護くんへとシャトルを飛ばす。

初めてにしては構えがちゃんとしていたのはびっくりした。



だが初めてという事もありラケットはスカッと空を切る。

護くんは少しムスッとしたような顔をするが直ぐに打ち返そうとする。


さすがメイン攻略キャラの弟補正。

直ぐ立ち直る心の強さ。


見習いたいですね〜。



そして2回目にしてシャトルを空を飛ぶ。

こちらのコートへとくるかと思ったが、ネットに当たってしまう。


今回もダメだったか……。少ししょげている護くん。

「……次、お兄ちゃんやって」


そう言って下からシャトルを受け取る。

まぁ最初は難しいしね、しょうがない。


次は琉偉さんへと飛ばす事にしよう。


「せーの」


僕は振りかぶってシャトルを思い切り飛ばす。

琉偉さんなら取ってくれるだろう。


そして風切り音と共にいい軌道をなぞりながら琉偉さんへと飛んでいく。

琉偉さんもシュパッといい音を立ててシャトルをこちら側へと返す。


やったことがないとはいえ主人公補正がかかっているので上手くできている。


……少し悔しいかも。僕も負けてられない、そう思ってもう一度琉偉さんへと飛ばす!

やはり主人公補正がかかっているのか琉偉さんは何事もなくこちら側に飛ばす、だと?!


本当に始めたばかりなの? 筋が良すぎて僕が可哀想に思えてくる。


すこし悔しかったので琉生さんの苦手そうな場所も狙ってみるが難なく返してくる。

噓だ、こんな何回も連続で打ち返すだなんて……。


そんな時よく見ると護くんは『あっちばっかり優遇して、僕には?』というムスッとした顔を披露する。


少々熱くなりすぎたようだった、反省反省……。


「じゃあ、護くん行くよ」

そう言い勢いよく振りかぶる。

運動神経がダメダメな僕にしては凄い勢いで護くんへと飛んでいく。

少し意地悪し過ぎたかな?


「おりゃぁ!」

そういうとスライディングをし、シャトルを打ち返す。

しかもネットに掛かりそのまま玄之側のコートへと真っ逆さまに落ちていく。

そのままなす術もなくシャトルは地面へと着いてしまう。


これってヘアピンっていう大会とかでも使う技じゃない?

ネットの白帯ギリギリを狙い、相手はネットに触れれないからなす術もなく相手にポイントを奪われるってやつ。


あんなヤツ僕でもできないよォ!! 主人公補正とモブ補正が対決したら勝つかどうかなんて一目瞭然ですねェ!!

ア゛アァ゛ァ゛!!! 何故ェ!?


「玄之くん、心の中で叫んでるね? 護くん」

「そうだね琉偉お姉ちゃん、……なんか可哀想」

こしょこしょ二人で話しながら同情された。聞こえてますからね?

でもそれよりも僕より年下に同情されてしまった。


なんかツラい、うん。



そんなこんながありながらも最初はリードしていた僕も最終的には負けてしまった。

やったことがあるか無いかの差があるはずなのが主人公補正で埋められたどころか差を逆につけられてしまった。


まぁでも悔しくはない。

だって最近はやっていなかったし、だから負けたって言い訳を言いたい。



そんな時にお昼の12時の鐘が鳴る。

この国には教会があり、その鐘の音が昼を知らせる。


「そろそろご飯の時間ですね、琉偉さん」

「そうだね、玄之くんが作ってくれたのを食べようかな。本当なら私が作るのがいいのだけど」


「琉偉お姉ちゃん、それはやめて。僕今度こそ死んじゃう」

えーっと? 琉偉さんは護くんに作ったのを食べさせた事があるってこと?

あれは怪我人が出てくるからやめた方がいい。


……うん、本当に黒くてゲロマズい物体Xが出来るから。

食べた時は気絶して真面目に死にかけた。


モブ補正で病気などにも弱いからそれで、虚弱体質まではいかないけど。

デバフ盛り盛りのバフ飯だから。


聞いた話によると、【毒】【吐き気】【回復阻害】【めまい】【嫌悪感】【小回復】っていうデバフが入ってたって解析担当の黒子が言ってたはず。

その人は解説動画をアップしていて毒で少しずつ体力を削って【小回復】で直すから死なないで効果時間中はずっと気持ち悪く、食べるだけで死にかけるという。


……しかしこれはバフ飯なのでメリットもあるのだがそれは別の機会に。

こんな考えてると長くなる。

まずは昼ご飯の準備だ。


「そろそろご飯にしましょうか」

「わーい! 玄之くんのご飯♪玄之くんのご飯♪」


「僕も楽しみにしてた……! 煜も美味しいって言ってた」


護くんは少しほほえみを浮かべた。子供はやっぱり美味しいご飯が好きだよな。

そこまでご飯を楽しみにしててくれたのもなんかうれしいな。


そして今日は外で食べれるようにピクニックシートと、麦茶、おにぎりに、サンドウィッチ。サラダも作った。

サラダのクルトンはフランスパンで作った手作りクルトンだ。


サクサクで美味しいし、サンドウィッチの具材は定番のハムタマゴからツナサラダ。

バターチキンカレーとか変わり種まで作ってきた。

一個一個手作りなので美味しいと思う。


「美味しく作ったから食べようか」

そう言い出し一瞬で準備を完了させる。

その時間わずか10秒。


なんとなくやってきたが黒子の補正で早く出来るだけ。

ピクニックシートを出して、少し綺麗にしてからお皿にサラダを盛り付ける。

コップに麦茶も入れて、あとはおにぎりとサンドイッチを盛り付けた。


メイン職業は黒子でレベルはMAX。サブ職業で執事も取っているがまだ13レベル。

もう少しなんだけど。


まだ兄さんくらいにしか言ってない秘密だけど。

「やっぱり玄之くんは準備が早いね! 私もできないや」

「僕もできない……」


「誰でも練習したら出来ますよ? コツは要りますけど。……多分主人公なら出来るんじゃないかな(ボソッ)」




そんな簡単になんでも出来ちゃう主人公達が羨ましい限りだよ。

どれだけ練習しても体力とか力とか増えないままだからな。

器用と俊敏くらいしか上がらないし……ガンバんないとな。

うん。


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読んでいただきありがとうございます。


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