〜3〜ヒロインのモブ一本釣りは簡単です。

今僕はご飯を食べに来てます。

目の前に主人公、横には攻略キャラ三人でご飯だなんて。

こんなに緊張したのは初めてな気がする。


心臓がバクバクに動いているし冷や汗が止まらない。

でも攻略キャラとご飯を食べることが出来る……。


これはこれでまた良ィ!! だけど、だけどもォ、のんびり陰キャ生活には程遠いんだょオォ!!!

またまた失礼しました。



此処に至るまでにはですね?

なんか主人公の琉偉さんに、「攻略キャラのみんなとご飯食べに行くんだけどいく?」って電話が来ました。

最初は断ったし、そんな場所に似合わないとか言ったら『黒子師匠の黒子完全ガイド』という本に釣られました。


はい、駄目なのはわかっているんです。

僕の、心は駄目だって言ってるんですが。


本心が、『あの本気490ゴールドもするんですよ? 今でもお金がないのに、読みたいのに。いいんです?』と、話しかけてくるんですよ。


そして、黒子師匠は黒子界隈での一番権限がある人で尊敬の念しかない方だ。

そんな方の本を貰えるのなら断れないんです。

理解してくれました?



まぁそんな茶番は放っておいて。

ここは街にあるファミレスというか酒場というか。

どちらにせよチェーン店で、安くて美味しい洋風系のお店だ。


本題は目の前にいる主人公と攻略キャラ達だ。

攻略キャラは三人いて、全員イケメンなのだが。

僕はここの空気感がイヤなんです。




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紹介をしておくと、まず王道は知っての通り【桐神 煜きりがみ ひかる】だ。

爽やかで、意外にも可愛いところがあるのもまた良い。

そして何より金髪のサラサラヘアは堪らないらしい。

学校にはファンクラブができるほど。

この世界では煜さんルートだ。


そして二人目は知的でクールな【次条 正宗しじょう まさむね】。

なんでも出来るメガネ男子。

とても物知りで好きなことを話し出したら止まらないほど。

頭脳はこの国随一を誇る。

これもまたファンクラブがある。


最後は豪快、筋骨隆々な筋肉男子【郷多 永ごうた ひさし】。

シャツから溢れ出る筋肉はまさに筋肉美を語っている。

バカなのは認めている訳ではないが、単純で難しいことが嫌いな漢。

これは筋肉ファンクラブからプロテインなどをプレゼントされることが多い。

こちらもファンクラブがある。


で、ヒロインの【早乙女 琉偉さおとめ るい】。

綺麗なピンク髪と可憐な目で男達を虜にしてきた。

優しい聖母のような顔とは裏腹に料理が絶望的に悪い。

天は二物を与えずという言葉がしっくりくることだろう。

だが、料理以外が出来るから二物を与えられている気もしなくもないが禁句だ。

ファンクラブや親衛隊があるらしいが攻略対象達に潰されていると聞く。


そして最後に僕【黑杉 玄之くろすぎ くろこ】。

ただの一般的な黒子のはずが主人公達のお世話係となってしまっている。

ただ学年が同じで仲が良く(?)て、お世話が出来るってだけで押し付けられた。

仲がいいというかズカズカ来られているだけというか、ギャル達に席を取られたモブみたいな感じというか……。

玄之自体は平穏を望んでいるが、まだ遠い未来だろう。




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という感じでで、俺だけ浮いているのだ。

主人公補正というよりモブ補正がかかってしまい背中から悪寒が走り回っている。

目の前で粗相をしてしまったらどうしようか頭を抱える。


周りのたまたまいた生徒には睨まれてるし、店員さんにはなにこの状況みたいな困惑された顔をされてる。

だって女子ヒロイン一人を囲むように攻略キャラ(+α)がいるんやで?


なんかあったと思われてもおかしくないよ。

うん、本当に。



でも本をもらう為に来たんだから仕事をしないと。

まずはお手拭きを全員分持ってきて、水もコップに注ぐ。


飲み終えたら瞬時に注ぎ直す。

……これこそ黒子って感じ。



ひと段落して椅子に座る。水を飲もうとしたその時に正宗さんから話しかけられた。

「玄之くん、君は僕のことどう思っているんだい?」

「……どう思っているかですか」

そんな唐突な正宗さんからの難しい質問。

さっきまで飲もうしていたコップの手が止まってしまう。


正宗さんは煜さんのゲーム仲間で、堅苦しいがいい奴だと煜さんから聞いていた。

これで間違えたことを言うと怒られるかもだし、いいこと言ってたら周りから軽蔑されるし……。


「すごくいいメガネですね、カッコいいです」

無難だが、正宗さん本人のことじゃないッ!!

ヤバい死んだ。


「……いいね、気に入ったよ」

「なぁそんな面倒くさいことしねーで、さっさと本題はいろーぜ? メガネ」

永さんが話しを進めようと提案すると正宗さんが大きなため息を吐く。

「いやいや、人を見てから始めるのが基本なんですよ? 脳筋」


「……そうものなんですか? 正宗さん?」

「そうだよ、この脳筋とは違って玄之くんは話を聴いてくれるんだね」

目の前の琉偉や、煜からの痛い視線。あ、やったわこいつみたいな目をされても困るんですけど。

何? 悪いこと言ってしまったのだろうか?


「玄之くんさ、これが連絡先だよ」

そう言い、スマホを見せる。

QRコードを見せてくれる……これってメールの友達登録して欲しいってこと?

えー、こんな大物とメール交換をしていいものだろうか?


ファンクラブとかにボコられない? 大丈夫なの?

でもこれを断ったら大変だし……。



〜〜〜〜〜〜

正宗 テストテスト見えてるかい?


玄之 見えますよ〜!


正宗 ワーイ ヽ(゚∀゚ヽ 三 ノ゚∀゚)ノ ワーイ

〜〜〜〜〜〜


結局メールを交換した。正宗さんが可愛いスタンプ使っているのが意外だった。

見た目も性格ももっときちっとしていて社会人が使うようなメールを書いているイメージがあった。


「玄之、コイツ最近メールをやり始めたばっかりなんだ。それまで友達という友達が居なかったから……」




そうなんだなぁ、僕はメールが来て楽しいからいいんだけど。

まぁ仲良くしたいというのが相手の本音なら仲良くさせてもらいますか。


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読んでいただきありがとうございます。


面白ければ★★★、面白くなければ★。


♡もつけていただけると幸いです。

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