〜2〜モブの日常からの逸脱してるのはなぜ?


僕はいつも同じ時間に登校する。周りの人は少ないがこれでいいんだ。

そしてこのいつも通る通学路には桜が咲いていた。


魔力を自力で吸って咲くんだとか。

この学校の前の名所である。


一人でゆっくり時間を潰しながら進む葉桜はなんか良い。



風情があるっていうの?

うん、こうやって平穏な生活が欲しい。


いやお前あるじゃん、って言われがちですが主人公達がぼっちの隣にいるのは普通でしょうか?

いえ、違います。



こんなの平穏じゃないよォ! 隣に攻略キャラ!? なんでヒロインまでいるんだよォ!!

おっと失礼、僕は叫ばないといけない性分なんです。


ココロのなかならいくら叫んでもいいから。

そうなのです。


「玄之くん凄く心の中で叫んでる、可愛いね? 煜」

「そうだな、良いんじゃないか?」



え……いつのまにヒロイン達が……?

そういえば、琉偉さんってヒロインの能力で相手の心の中が読めるんだった。

ヒロインのみだが、それを共有できるのがヤバいところ。


煜に共有していたのだろう。

だからイケメンモードの煜さんはなんか生暖かい目で見てくるのか。

しかも煜さんにフォローされてる。


なんかヤダなぁ。

「ねぇ、玄之くん。酷いんじゃないのか?」

「ア……ハイ。気ヲ付ケマス」


「煜、言い過ぎはダメだよ!」

「わかってるよ、琉偉。好きな人の目の前で喧嘩なんかしないから」


うぁー、キャッキャしてるー。

こういうことって本当にヒロインと攻略キャラなんだなーって思う。

この今のうちにモブが使える秘技『気配を消し、逃げる!』



そんなことを考えながら先にサーッと学校の正門を潜り抜ける。

これで一件落着かと思いきや、後ろをふと見ると何故か二人がいた。


気配を消したはずだよね? それよりもヒロイン達の気配察知能力の方が強かった?

「そういえば今日、この後撮影ですよね? 頑張ってください」

「ありがとう」


よし、話を逸らしたぞ!

「じゃあ玄之くんも撮影現場に来ない?」


「え? いいんですか……? んー……でもなー、行ったら周りに質問攻めに遭いますので遠慮しておきます」

「本音は? どうなんですか? 玄之くん?」

そう言い頭をコクっと曲げる。


斜め45°から繰り広げられる可憐さは言葉に表せられない。

綺麗なヒロインが僕に……しかも周りからの目線が痛い。


「ッ……! ……い、行きたいです」

あのヒロイン奥義の首斜め45°はダメだって。

反則やって、あれを断れる奴いるの? 存在するの?


うん、頑張ろう。

それしか出来ないから。

こんなある意味非日常しかない地獄と可愛い子といっ一緒にいるという天国の合わさった物をもらっても。



困るんだよなぁ、こういうやつ。

ヒロインハラスメント、ヒロハラっていうの?


ね、本当に。




======


授業が終わり、昼休憩の時間となった。


琉偉さんに作って大変だったこと聞かれたんだけど一時間以上かけたし、唐揚げを二度揚げしたり栄養バランスを考えたり大変だったと教えておいた。

何に使うんだろう?


まぁ休み時間という優越感に浸っている暇もなく、撮影が始まる。


「ねぇ、煜。一緒にご飯食べよ?」

「いいよ、どこで食べる?」


「こっち来て♪」

そう言い主人公の手を引く琉偉さん。


廊下を二人が駆けていく姿はさすがとしか言いようがない。

それを撮影係の黒子がカメラを動かす。


アングルをカメラが捉え、ガンマイクで言葉を一言一句逃さない。

完璧な連携だ。


「ここは……? 校舎裏?」

「そうだよ♪こんな綺麗な所でご飯を一緒に食べて欲しかったんだ!」


「綺麗だ……こんな場所が学校にもあったなんて」

凄く良い。

満開に咲いた桜の下にあるベンチ。

まるで琉偉の髪のような綺麗に咲くピンク色。

ここだけ魔力が濃いようで他よりも長めに咲いている穴場スポット。


やはり可愛いと思えてしまうのは乙女ゲーなだけある。


『この学校に転入してきた琉偉、その学校で一番イケメンな煜。その二人の恋の行方は……?』


っていうのが本筋。

まぁ攻略対象はまだいるけど、もう煜さんルートなのでストーリーほぼには出てないと黒子会議で話し合いがされた。


一応こんなヒロイン達といるけど黒子。

裏方ではあるはずなのだが。


「ほら、煜くん。お弁当の唐揚げ、あーん」

「パクッ、うん凄く美味しいよ! こんなに真心のこもった唐揚げは美味しくないはずがない」


意味不明な食レポ一丁頂いましたァ! ファア⤴

なんで主人公はそんなこと言われても別に良いんだァ!!!


ごほん、失礼しました。

ほんと一日に二度も叫ぶだなんて思いもよりませんでした。


「本当?! 良かった、 作った甲斐があったよ♪」

作ったの僕だけどね?


「一時間以上かけましたし、唐揚げを二度揚げしたり栄養バランスを考えたり大変だったんですよ?」

あっれれ? おっかしいゾォ?

僕がさっき作って大変だったこと教えたけどもここまで同じだとは。



著作権大丈夫? 真面目に。


ヒロインの権限でアドリブを入れたんだけど丸パクリされた。

こういうのはシナリオに使う時だけにして?

……でもこれはシナリオ撮影中? あれ、やってること自体は大丈夫ってこと?



もうどうにでもなれ。

丸パクリしてもバレない時点で、まずまずの地位の違いで言ったって意味がないんだから。

僕は弱者、僕は黒子、僕は空気、僕はいないんだ……。


==========

読んでいただきありがとうございます。


面白ければ★★★、面白くなければ★。


♡もつけていただけると幸いです。

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