5-2
ちらと横目に白楊の表情を伺うと、意外というか彼らしいというか、なんか面倒そうな味わいだ。
「よく分かんねぇけどよ。結局、教授様は俺に何を所望するんだ?」
「エニグマを殺せば、取り込まれたアトリビュートは自然と離れるわ。もっとも、宿主を殺されたらたまらないから、アトリビュートは絶大な魔力を使ってアレを全力で生かそうとするけれど――それこそ、不死身と言われる位にはね。後は、言わずとも分かるでしょう?」
「結局俺はあのデカブツをぶち殺すだけってわけか。いいね。シンプルイズベストだ」
「話が早くて助かるわ」
どうやら彼にはかなりの信頼を置いているのだろう。ローズはそれ以上白楊には何も言わなかった。
先程の怪異への対応といい、どうやら彼はこのような状況にかなり慣れているらしい。軽薄な態度も、余裕の裏返しと見れば頼もしさを感じなくもない。
なんて考えていると、今度はアッシュに話の矛先が向いた。
「アッシュちゃんは……、どうしようかな……」
教授が頭を悩ませているので、果たして何を命じられるのかとワクワクしていたら、「とりあえず待機で」とまさかのベンチを言い渡される。
「まじですか。せんりょくがいですか」
うん。知ってたけど。
面と向かって言われると。くるものがある。
「えっと、そういう意味じゃないのよ。私、貴女のことを良く知らないから、いっそ自由に動いてもらった方が良いんじゃないかと思って」
「マジな話、俺を消し炭にしかけたビームを当てれば一撃必殺QEDしそうだしな」
「すみません……、あのビームは狙って当てられるものじゃないので、ちょっとしんどいかもです……」
折角フォローしてもらったのに、何とも情けないセリフを吐いたところで、ハッと『役立たずがバレれば牢屋に逆戻りになるのではないか』という予測が閃いた。
「――でもでも! 他でお助けできることがあるかもしれないですし、まぐれでパンチが当たるかもなので、りんきおーへんに対応しますし、あの……、えっと……」
もはや自分でも何を言っているのか分からずに、ごにょごにょと中身のない言い訳を積み重ねる。
己の頬が熱くなっているのを感じて。その事実にますます羞恥が身体を巡った。
何となく顔を合わせづらくてうつ伏せのまま眼だけで見上げると、ローズは真っ直ぐこちらを見詰めている。
彼女の瞳の青は歪みなく澄んでいて。ついでにその中のアッシュ・アステリオンさんとも目が合った。
うん。髪の毛の色がちょっとSFなこと以外は、ちゃんと無様ないつもの自分だった。
「大丈夫よ。人には適材適所がある」ローズの回答には特に慰めの言葉はなく、冷静だ。しかしそれに留まらず、彼女は「それに、私の見立てでは貴女は居てくれるだけで大丈夫だから」と意味深なセリフを残す。
その真意を問い質そうと口を開きかけたところで、隣から白楊が横槍を入れてきた。
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