第42話 ズルやすみ
亘たちの学校の文化祭が明けた次の月曜日、体調不良が続いている瑞穂は学校を休んだ。少し心配だったのでメールを送ってしまった。これくらいしてもいいだろう。いいよな?
『体調大丈夫か?無理せずゆっくり休むんだぞ』
なんか……部下が休んだ時に送るメールみたいだ。
ピコンッ
早ッ。もう返信が来た。
『ありがとう。明日には学校行けると思います』
そっか、よかった。一昨日の土曜日の文化祭ドタキャンしたのを気にして卑屈なメールが来るかと思ったけど普通だった。
そういえば最近、永瀬さんの距離感がやたら近い気がすると思っていたけど、今日はいつも以上に異常だった。
休み時間の度に話しかけてくるし、やたらとお昼を一緒に食べたがるし。
あまり考えたくなかったが、きっと
*
月曜日。
朝起きて鏡を見る。
「ひどい顔……」
目は充血して瞼は腫れぼったい。
少し変色した口元に指を当ててみる。
「痛てて……」
こんな顔じゃ学校行けないな。
「ミズー!起きた?早く朝ごはん食べちゃって!」
「んー」
「あらどうしたの瑞穂、マスクなんかしちゃって」
「ちょっと体調悪い……学校休みたい」
お母さんは看護師だから下手な仮病なんか使ったらばれちゃいそう。
「あら珍しい。熱は……なさそうね。ご飯食べれるなら食べちゃって。私から学校に連絡しておくから」
「分かった」
「じゃぁ,行って来まーす。ちゃんと寝てるのよー」
バタンッ
玄関のドアが閉まり静寂がやってきた。今日は大人しく寝ていよう。携帯電話をいじりながら横になっていたら、
ヴゥ
メール……佐伯くん?!
『体調大丈夫か?無理せずゆっくり休むんだぞ』
ど、どうしよう!心配されてる……
とりあえず今は無難な言葉で返しておこう。明日にはさすがにひどい顔もいくらかマシになっていると思うから。
*
翌日。とりあえず学校に行けるくらいにはまともな状態には戻ったけど、メガネとマスクはして行った。
「おはよー瑞穂ーマスクなんかしちゃって〜体調大丈夫?」
「おはよ美羽。だいぶ良いよ」
「今日はメガネなんだね。なんかいつもと雰囲気違ってなんかカワイイ」
「あはは。目が充血しちゃってコンタクトまだつけられなくてさ。度が少し合ってないから見えづらいんだけどね。優里もかけてみてよ。似合うかも」
良かった。文化祭のあと、私ともそうだったけど美羽と優里との間も少しギクシャクしていて、でも仲直りできたのかな。私に対しても自然な感じだし。
それから、私たち3人の関係性は特に変わりはなかった。
――でも気になることが新たに出てきた。
「翔太郎くーん!お昼一緒に食べよー」
「……あぁ?雅也とユズがいいなら……」
「別にいいよねー?」
美羽、やたらと佐伯くんとの距離詰めるようになった。佐伯くんはというと、明らかに戸惑っている。喜んでいないだけまだいいけど……それにしても魚住くんや三島くんまで巻き込んじゃって。
「ねぇ、優里。あれ、いいの?」
「なにが?」
「美羽が三島くんの隣り座ってるしなんか迷惑じゃないかな?」
「はぁ……そう思うんだったら瑞穂が止めてくればいいじゃん?」
「な、なんで私が?!」
「あのさぁ、瑞穂こそ大丈夫なの?私は2人の友達だし、どの男子と仲良くなろうが別に構わないと思っているけど、ちゃんと美羽と話し合った方がいいんじゃないの?」
「は、話し合うってなにを?!」
「この際だからはっきり言っけど、佐伯のことだよ」
「!!」
多分だけど私、分かってた。分かってたけど見ないふりしていた。
美羽も佐伯くんのことが好きだってこと……
「……優里も分かってたんだね」
「さぁね。私はどっちも肩入れしないけどどっちも応援してる」
「うん……ありがと。私も優里のこと応援する!」
「私のことはいいからッ!」
ふふふ。優里照れてる。
私ももっとしっかりしなきゃ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます