4-32:新たな情報
スイフト王のもてなしで内緒の宴をあげたけど、その中で聞き捨てならない情報があった。
「ガレント王国の『鋼鉄の鎧騎士』を倒したとは……」
マリーはそう言いながら私の背中を流す。
というか、一緒に湯あみしてるんですけど!!
「うーん、ガレントのってかなり強いはずニャ。それが人と同じくらいのとやられるとはニャ」
カルミナさんも一緒に入っている。
「どうも信じられないわねぇ~。ガレントの正式のは輸出用と違ってリミッターが解除されていて制限されてないはずだから、出力も大きなはずなんだけどね~」
エルさんまで一緒だった。
「あの、それよりもなによりも、なんでみんなで一緒にお風呂入ってるんですか? 僕一応男なんですが……」
「何をおっしゃいますアルム様! このマリーアルム様のお背中を流すのは至極当然のことです!」
「まぁ、アルムには前から裸見られてるニャ。今更ニャ」
「そういう事は下の毛が生えてから言って欲しいわねぇ~。アルム君まだまだ子供なんだから今のうちにお姉さんたちの裸よく見ておいた方が将来はかどるわよ?」
何がはかどるってのよ!?
私は女の裸見たってちっともうれしかないってのに!!
い、いやとりあえずそれは置いといて、流石に十一歳の少年とうら若き乙女たちが一緒にお風呂に入るのはよくない。
「そうは言っても僕もあと少しで十二になるんですよ?」
「アルム様、パンツがガビガビになるのをお待ちしております!!」
「アルムのポークビッツにゃ興味ないニャ~」
「せめて大人になってから言うべきね~。私、お風呂を待つの嫌だもん」
こ、こいつらぁ~……
「ぼ、僕だって男なんですから間違いが起こっちゃったら大変でしょうに!」
「望むところです! むしろ襲ってください!!」
「アルムにそんな度胸なんてないニャ~。まったく発情した匂いがしないニャ~」
「アルム君がねぇ~。ま、大人になったら相手してあげてもいいわよ(笑)」
マリーに抱き着かれながら私はからかわれ続けるのだった。
* * *
「んで、スイフトはそんなところで何やってんのよ?」
「い、いや別に何もしておらんぞ」
お風呂から上がって衣服を着終わって脱衣所から出るとスイフト王がそわそわしていた、
エルさんはジト目でスイフト王を睨んでいるけど、ほほに一筋の汗が流れている。
まさかこの爺さん覗こうとしてたんじゃ……
「父上、こんなところにいたのですか?」
「あ、ソアラか、い、いや何でもなぃ……」
「あらソアラ、久しぶり」
「えッ!? エル姉様!? いつこちらにいらしたんですか??」
挙動不審のスイフト王をエルさんがにらんでいると、後ろから女性の声がした。
見れば四十代くらいの見た感じかなり品のいい女性だった。
「う~ん、ちょっといろいろあってね。ボヘーミャに行こうとしてたのよ」
「エル姉様が直々に? いえ、確かに今の状況ではエル姉様が動くのが妥当かと思います。そうすると二日前の話もエル姉様がご対応なされるのですか?」
「南の『鋼鉄の鎧騎士』の件ね? ただあまりにも情報が少ないわ」
ソアラと呼ばれた女性はなにやら意味深に話していたが、エルさんが動いていると分かると合点がいったようだ。
そしてエルさんの後ろにいる私達にも気づく。
「時にエル姉様、そちらの方々は?」
「ああ、まぁソアラにならいいか。この子はイザンカの第三王子、アルムエイド君よ」
エルさんがそう言うと、ソアラさんという女性は驚きスイフト王を見る。
「お、お父様イザンカの第三王子って……」
「ああ、大騒ぎになっているあのイザンカだ。まぁエル姉が一緒ってことで非公式に動いているのは分かるな?」
スイフト王がそう言うとソアラさんという女性はごくりと唾を飲んでからうなずく。
「なるほど、すべては女神様の御心のままというわけですね? エル姉様が動いているのがその証拠、なるほど」
いや、何がなるほどって言うの?
勝手に深読みされているけど単にたまたまエルさんとは一緒に行動してるだけであって……
「まぁそう言う事よ、私の正義の味方の血が騒いでいるのよ!!」
しかしここぞとばかりにエルさんはそう言ってぐっとこぶしを握る。
それを見たソアラさんは顔を明るくして言う。
「流石エル姉様です。分かりました、我がガレント王国はエル姉様に最大限に協力させていただきます! よろしいですね、お父様?」
「あ、う、うん、儂もそのつもりだ。うん、決して胸の大きな美人が二人もいたから覗こうとしたんじゃないぞ?」
やっぱり覗こうとしてたんかい、この爺様!!
いい加減に枯れなさいっての!
「しかしそうするとこの情報はいち早くエル姉様に伝えなければですね。南の『鋼鉄の鎧騎士』を倒したのは小柄な女性、しかも目撃者の話では耳がとがっていたとのことです」
「え? 小柄な女性で耳がとがっていたって…… まさか、エルフ?」
「目撃者の話を総合すると可能性は捨てられませんが、普通の精霊魔法では我が国の『鋼鉄の鎧騎士』を倒すことは……」
ソアラさんはそこまで言って黙り込む。
それにエルさんは顎に手を当てつぶやき始める。
「ガレント王国の『鋼鉄の鎧騎士』を倒すには精霊王クラスの力を借りなければできない。しかし精霊王と契約できるほどのエルフとなると数知れている。エルフの里だって精霊王と契約できるのは長老たち位なもの、そうするといったい誰が……」
「鋼鉄の鎧騎士」は対魔処理がされているから確かに精霊魔法にも強い。
ただしそれは普通の精霊魔法の場合だ。
精霊魔法を介した物理攻撃などは有効打になる場合があるが、それはあくまでそれなりの精霊魔法の場合だ。
つまり、精霊王クラスの精霊魔法でなければ有効打にならないという事だ。
「ハーフで精霊王と契約したって話は聞いたことがないし、他には…… 草原の民はそもそも魔法が使えないはずだし、それこそ精霊魔法なんて論外。小柄というのであればドワーフ族は考えられない。だとするとやはりエルフ……」
エルさんはそう言いながら私たちを見る。
「これはまだまだ何かありそうね……」
エルさんはそう言って「真実は一つ」とか言いながら明後日の方向を睨むのだった。
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