4-27:ガルザイルに向けて
ぴこぴこっ!
なんだかんだ言ってエルピーは新たな体を手に入れた。
しかし彼女は今までのエルピーとは違う。
「うん、なんだかんだ言って記憶の融合はうまくいったわね。エルピートゥエルブになる寸前のエルピーイレブンまでは記憶は共有されているから、その後の分かれた部分を互いに補填し合って狂ってしまった時や怒りの感情をエルピーの記憶がうまく抑えている。もう大丈夫ね」
見た目はその、頭部がやや大きくなって耳ではなくツインテールになってた。
そして胸が少し大きくなっている?
「あの、エルさんこの子ってエルピーでいいの?」
「うん、名称はエルピー。契約者は私。長く活動してもらいたいから双備型魔晶石核も私が作った精霊の魔晶石を使っているから長寿タイプよ!」
満面の笑みを浮かべるエルさん。
だから胸が大きくなっているのか……
私がエルピーを見ていると、それに気づいて胸を隠して警戒しながらエルさんの後ろに隠れる。
「はいはい、エルピー大丈夫だから。アルム君もいきなり胸やお尻触ることはないから安心なさい」
ぴこぴこぉ~?
いや、別にマシンドールの胸やお尻触りたいんじゃなくて、その機構とかが気になっただけで私にそんな趣味はない。
しかしエルピーはそれでも警戒を解かずにエルさんの後ろで私を睨んでいる。
「はぁ~、何もしないって。ごめんねエルピー。あの時はマシンドールの機構に興味があっていきなり触っちゃったことを正式に詫びるよ。すみませんでした」
ぴこっ?
私がそう言って頭を下げるとエルピーは驚いたように私とエルさんを見比べる。
するとエルさんはにっこりと笑って言う。
「ほら、彼もこうして謝っているんだからもう許してあげないさいよ。それに明日にはここを出発するからエルピーはいい子にこのシーナ商会でみんなとお留守番してるのよ?」
ぴこぴこぉ~
ちょっと残念そうにツインテールを下げているけど、エルピーは私を見てツインテールをピンッと立ててからエルさんの前に出てきた。
そして手を差し出してくる。
「あ、えっと……」
「許してくれるって。それとあの時エルピートゥエルブを守ってくれてありがとうだって」
差し出された握手の手にちょっと戸惑っていると、エルさんが通訳をしてくれる。
それを聞いた私はすぐにエルピーの手を握り返す。
「うん、どういたしまして!」
ぴこぴこッ!
その揺らすツインテールに今回だけはエルピーが何を言ってるか分かったような気がしたのだった。
* * * * *
「それでは行ってくるわね」
「はい、道中お気をつけて」
ぴこぴこ~
私たちはユーベルトの街から首都ガルザイルに向かって出発しようとしていた。
シーナ商会を出る時にはイプシルさんやエルピーの見送りがあった。
どういうわけかあの後エルピーは私に対してやたらと友好的になった。
まぁそれはいいのだが……
ぴこぴこぴこ~♪
うん近い。
と言うか、マリーみたいにやたらと抱き着いてきたりしてる。
ずいぶんと好かれたもんだ。
「ん、じゃぁ行っています」
ぴこぴこ!
うーん、行ってらっしゃいって言っているようだ。
何となくエルピーの言ってることが分かるように感じるのはなぜだろう?
私はエルさんに続き馬車に乗る。
そして窓の外を見るとエルピーたちが手を振って見送ってくれている。
まぁ、ここへ次に来ることはもうないだろうけど、もしまたここへ来た時はエルピーにあいさつにくらいは来ようかな?
こうして僕たちの乗った馬車は揺られガルザイルへ向かうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます