4-26:ルミナ司祭
「ルミナぁッ!!」
ぴこっ!!
ルミナ司祭はエルピートゥエルブの作った水の刃に胸を貫かれて吐血をする。
しかしルミナ司祭はそれでもエルピートゥエルブに向かって数歩歩み寄る。
「ごめんなさいね、あなたは私にとって…… ぐふっ!」
そこまで言ってその場で倒れる。
エルさんはあわててルミナ司祭に駆け寄り、精霊魔法で回復をするも傷口は背中まで達しておりどう見ても助かりそうにはなかった。
「ルミナ、しっかりなさい!」
「エ……ルさ……ま、エル……ピーをおねがい……しま(がくっ)」
ルミナ司祭は最後にそう言って力尽きる。
エルさんはそんなルミナ司祭をぐっと抱きしめている。
その向こうでは、いまだにエルピーとエルピートゥエルブが風と水の精霊魔法で対峙していて、双方かなりのダメージを負っていた。
「エルピートゥエルブ、あなたはやってはいけないことをしたわ…… ルミナはあなたを心配して!」
ぶわっ!!
そう叫んだエルさんの体が金色にうっすらと輝いている。
そしてその瞳も。
「許さない! エルピートゥエルブ!!」
が、私はとっさにエルピートゥエルブに手を向ける。
それと同時にエルさんが呼び出した四つの輝く球が先ほどのプラズマを伴った竜巻を放つ。
「だめだぁッ! エルさん憎しみに飲み込まれちゃ!! このマシンドールは、あれはぁっ!!」
私も理解してるわけじゃない。
でも勝手に体が動いた。
そしてあのマシンドール、エルピートゥエルブに何重にも【絶対防壁】をかけている。
その防壁はエルさんの放つ怒りの竜巻に何枚かガラスを割ったかのような音を鳴り響かせながら破壊されるも、エルピートゥエルブには届かない。
「アルム君!」
「エルさんダメだッ! あのマシンドールの顔を見て!!」
私がそう叫ぶとエルさんは、ハッとなりエルピートゥエルブの顔を見る。
マシンドールの集合体の顔の額の部分に涙を流している個体がいた。
他の瞳の色を失ったマシンドールたちと違い、その個体だけは瞳に色を宿していた。
「あれはエルピートゥエルブの本体?」
少し落ち着きを取り戻したエルさんはそう言う。
そして私はすかさずみんなに言う。
「みんな!」
「御意!」
「仕方ないニャ!」
「我が主のお心のままに!!」
私の意図を理解し、マリーが、カルミナさんが、そしてアビスが飛びだす。
「くーっくっくっく、さぁ我が眷属よあの者の動きを封じなさい!」
「はぁッ! 操魔剣なぎなた奥義、疾風!」
「これでも食らうニャ!!」
アビスが呼び出したアークデーモンたちが巨体のマシンドールの体にしがみつきその動きを封じる。
そこへマリーのなぎなたの一撃が決まって、あのエルピートゥエルブの周りのマシンドールたちを弾き飛ばす。
そしてカルミナさんが最後にそのマシンドールの周りを鋭い爪で切り裂くと、エルピートゥエルブはとうとうその巨体のマシンドールから切り離される。
ぴこぴこッ!!
そこへエルピーが風の刃を打ち込んでエルピートゥエルブの手足を切り刻む。
斬っ!
ガシャン!
四肢を失ったエルピートゥエルブは地面に顔から落ちて、うごめくもそこへエルさんが胸に手を差し込む。
「もう終わりにしましょう。止まりなさいエルピートゥエルブ」
ズシャ!
その瞬間、エルピートゥエルブは頭をエルさんに向けたかと思うと何故か安らかな表情に見えた。
そして瞳の色を無くしその場で動かなくなった。
「エルさん!」
「うん、終わったわ……」
そう言ってエルさんはエルピートゥエルブの胸から光り輝く二つの魔晶石がうごめく機関を引っ張り出す。
「水の精霊よ、その怒りから解放するわ」
エルさんはそう言って二つの魔晶石を握りつぶすと、緑の光の粒子になってはじけて消えた。
エルさんはそのあと、エルピートゥエルブの頭に手をかけ、その首をもぎ取る。
「そうなのね……あなたの記憶はルミナを分かっていたのね…… でも怒りの感情が全てを包んでいてどうしようもなかったのね……」
ぴこぴこぉ~
瞳から涙を流すエルピートゥエルブの頭を抱えていたエルさんに向かってエルピーが耳をぴこぴこさせてから倒れた。
ガシャン!
「えッ?」
「エルピー!!」
それに驚くエルさん。
私はすぐにエルピーに駆け寄るのだった。
* * * * *
「無茶をし過ぎたのね……エルピーの双備型魔晶石核の精霊力がすごく弱まっている。このままではエルピーはその動力源を失って活動を停止してしまうわ……」
あの後ルミナ司祭の遺体を丁重に回収して弔った。
事件は最後にシーナ商会のエルさんが終止を着けたとして、四十年前からの狂ったマシンドールを退治したことになった。
しかし代償が女神神殿の司祭が命を落とすと言う大きな問題となり、ユーベルトの街を上げての葬儀が行われた。
領主であるハミルトン家もシーナ商会に対して深く感謝をするとともに、今後のマシンドールに対しての管理を更に厳しくするよう街中の工房に指示をしていた。
「アルム君には感謝しなきゃね。この子の本当の本当に気持ちに気づいていたのね。私はルミナがやられて我を忘れてしまったわ……」
エルさんはエルピートゥエルブの頭から取り出した記憶媒体の魔晶石をなでていた。
理論上ではこの記憶媒体を新しい体に入れればエルピートゥエルブは復活をする。
しかしエルさんは複雑な顔をしていた。
「エルピートゥエルブの記憶媒体の魔晶石は回収できたわ。でも、この子にまたマシンドールの体を与えていいものやら……」
そう言いながらエルピーを見る。
ぴこぴこ……
するとエルピーは耳をぴこぴこする。
それを見たエルさんは驚きの表情になる。
「でも、そんなことしたらあなたの記憶が……」
ぴこぴこぉ~
いったいエルピーと何を話しているのだろうか?
マシンドールの意図なんて私には分からない。
しかし、エルさんは頷き言う。
「わかったわ、あなたたちに新しい体をあげる。だから……」
そう言ってエルさんは涙目なって言う。
「ルミナの事、お願いね」
それが一体どういうことか聞いたら、不安定のエルピートゥエルブの記憶媒体にエルピーの記憶媒体が補助としてサポートをして、風の精霊が入った新しい双備型魔晶石核の体に一つになると言うものだった。
そしてエルピーとエルピートゥエルブは新たなマシンドールの体でルミナ司祭の墓守をしたいと言い出したのだ。
エルさんは強く頷きエルピーたちに新たな体を与えることにした。
「もう二度と同じ悲劇が起こらないようにしなければね……」
エルさんはそう言いながらシーナ商会の人たちに指示を飛ばし、新生エルピーを作らせるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます