4-18:支店長集合
「のっひゃぁーっ!!」
どっごーん!!
私の叫びと同時に目の前の地面が爆発する。
それと同時に勝手に【絶対防壁】が展開されながら体を意識した方向へ【念動魔法】で移動させている。
もっともすべてがそう意識した時点で魔法として発動しているので、自分でもどうやっているのかが全く分かっていない。
今のところ危険を感じると魔法が発動することは分かったけど、他の魔法は全くと言っていいほど使う事すらできない。
ただ、生活魔法と言う「明かり」、「水生成」、「点火」、「念動」はマリーから呪文を唱えれば誰でもできると言われて試してみたけど、私がそれをやると「光」魔法は熱を持ったなぞレーザーになり、「水生成」は水のでっかい壁になり、点火はファイアーボールになって、「念動」はうまくいかず、さっきみたいな逃げる時に勝手に発動するという状態だった。
「ほら、気を抜かない!」
エルさんはそう言って竜巻を発生させる。
しかもその風はすべて刃のようになっている。
下手にそんな風に触れれば途端にずたずたに切り裂かれてしまう。
「うひゃぁっ!」
そう私が叫ぶと同時に体の周りに見えない壁が出現してその風を防御する。
しかし追い打ちとばかり今度は大地が隆起して土の槍が出現する。
「うわぁッ!!」
危ないと思った瞬間、しかしその槍は横から入ったマリーのなぎなたで切断される。
斬っ!
「エル殿、やりすぎです! いくらアルム様が優秀でも直接狙うのは危なすぎます!!」
「あー、せっかくもう少しでアルム君が別の魔法使えそうだったのにぃ~」
エルさんはいつの間にか瞳を金色に輝かせてそう言いながら口をとがらせる。
「とはいえ、これはやりすぎです」
「はいはい、わかったわかった。でもちょっと過保護過ぎない? 大けがしても私なら治せるから腕の一本や二本ちぎれても大丈夫なのに」
「いや、ちぎらないでくださいってッ!!」
かなり物騒なことを言うエルさん。
しかしエルさんは腕を組んでこちらまで歩いてきながら言う。
「でもこのままじゃいつまでたっても今のままよ? 君さっき伸び出る土の槍に対して【炎の矢】をぶつけようとしたでしょ?」
「え? あ、いや、前にエルさんが見せくれた火の玉か何かぶつければ崩れるかなとは思いましたけど……」
「それよそれ。その感覚に魔力を載せれば魔法が発動すると思うんだけどね。もうちょっとだったと思うんだよね」
エルさんはそう言って瞳の色も元の深い青と緑の混ざったような色に戻す。
その色はとてもきれいな色で、吸い込まれそうな色だった。
「エル様、よろしいでしょうか? 各支店の支店長たちが集まりました」
「あら、思ったより早かったわね。わかった、すぐ行くわ」
私たちが話し込んでいるとアルフェさんがやってきて各支店の支店長が集結したことを知らせてきた。
エルさんはすぐに踵を返してアルフェさんと一緒にそちらに向かうのだった。
* * *
「ねぇマリー、前の僕ってそんなに魔法の扱いが上手だったの?」
「はい、アルム様はあの魔法王ガーベルの再来とまで言われたお方でした」
エルさんが行ってしまったので休憩をしている。
汗をタオルで拭いながら飲み物を飲む。
「くーっくっくっくっくっ、我が主のその魔法はそれは素晴らしいものでした。異界より別世界の神を呼び出すほどに」
「はぁ? 異界の神様を僕が呼び出したの!?」
「はい、こちらの世界より数段上の異界の神。私も初めて見ましたがあの力、あの迫力、まさしく異界の神。しかしそれすら呼び出すとは我が主のその魔力の素晴らしさよ!!」
「あれは怖かったニャ。でっかい怪獣だったニャ。あれに食われた時は本当に終わったかと思ったニャ。でも気づいたらウェージム大陸に飛ばさえていたニャ。アルム、何したんニャ?」
「そうですね、アルム様が私たちをあの時お守りいただき、その後気づけばこちらの大陸に飛ばされていましたね。いったい何があったのですか?」
どうやらマリーたちはその辺ことを知らないらしいけど、私も全部覚えているわけじゃなかった。
と言うか、あの駄女神になんか会ったような……
どうもその辺がよく思いだせないけど、なんやかんやでまたこっちの世界に戻されて……
『……あの駄女神ぃ~。思い出そうとすると靄が頭にかかったようになるのよね。絶対あの駄女神にに何かされたのよ!!』
思わず日本語でそう言ってしまうも、この体では発音がちゃんとできない。
少しくぐもった私の言葉はマリーたちには全く分からなかったようでみんな首をかしげている。
「あの、アルム様今のは?」
「あ、何でもない。気にしないで」
不安そうに私をのぞき込むマリー。
私はあわててそう言う。
と、私たちを呼びにメイドさんがやってきた。
「アルムエイド様、お客人たち、エル様がお呼びです。どうぞこちらへ」
彼女はそう言って私たちをエルさんのもとへと連れて行くのだった。
* * * * *
「来たわね。正直状況は最悪ね」
連れられて行った部屋は執務室か何かの様だった。
大きな机にエルさんは座っていて、肘を机について手を組んで口元を隠しながらこちらを見ている。
まるでどこかの司令官が補佐官に「始まったな」と言われ「ああ」と答えるかのように。
「エルさん、どうだったの?」
「状況はさっき言った通り最悪よ。世界中が予想通り風のメッセンジャーとゲートが使えなくなり、混乱が始まったわ。魔法学園ボヘーミャでも一斉に風のメッセンジャーが使えなくなり、事態究明に動いてはいるわ」
エルさんはそう言って立ち上がり壁際にまで行く。
そこには世界地図が掲げられていて各国の首都などが記載されている。
そしてエルさんはそれを指さしながら説明を始める。
「いま世界は通信手段を失って大混乱が始まっている。各国はあらゆる手段を使ってまずは近隣諸国との連絡を取り出しているけど、いきなり風のメッセンジャーが使えなくなったことにより友好国同士の間ですら軋みが出始めている。我がシーナ商会と女神信教、そして各ギルドがいち早く連絡手段を構築し始め各国に働きかけているのでとりあえずは何とかなっているけど……」
エルさんはそう言いながらイージム大陸を指さす。
「イザンカ王国は戦争には勝ったわ。でも君がいなくなったことにより国自体も揺らぎ始めているそうよ。とりあえず支店長会議でブルーゲイル支店とレッドゲイル支店の店長から君の無事を伝えるように指示はしたけどね。ただ……」
エルさんはそこまで言って言葉を切る。
「何者かが動いている可能性が出てきたわ…… 強力な何者かが……」
そう言ってエルさんは私たちを見るのだった。
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