3-31:鋼鉄の鎧騎士の戦い


 がっぎきーん!




 城壁の外で「鋼鉄の鎧騎士」どうしの戦いが始まった。


 イザンカ王国の「鋼鉄の鎧騎士」の旧型は開発が遅れ、他国の中古機体を参考に開発がされた。

 故にその構造が瞬発力があっても非力な機体に仕上がっている。

 なので、機体の特徴を使った戦法が編み出された。


 それが一撃離脱型戦法。


 他国からもイザンカの「鋼鉄の鎧騎士」は速いと評価されている一方、非力さに関してはささやかれているものの確証がないので公式には知られていない。

 それは今までその一撃離脱の戦法が有効に活用されていたからだ。




『次、準備! 行けっ!!』



 指揮官の角のある機体が指示しながらイザンカの「鋼鉄に鎧騎士」二体が一度にランサーを構えて突撃する。

 ランサーが相手の「鋼鉄の鎧騎士」に衝突すると同時にランサーを手放して離脱する。

 二体同時に一体に対して突撃するので、標的となった「鋼鉄の鎧騎士」はほとんどが対応できずに何らかの被害を受ける。


 受けるのだが……



『しまった! 離脱失敗したぞ!!』


『新型フォローに行け!!』


 やはり多勢に無勢、二体同時に飛び込んだけど、そのうち一体が離脱に遅れドドスの「鋼鉄の鎧騎士」に取り囲まれてしまった。

 その機体は腰の剣を引き抜き構えるも、タコ殴りになったらその非力さがわかってしまう。

 なので、すぐに元初号機が慌ててフォローに入る。



 どンッ!


 がぎぃいいいぃぃんっ!!



 取り残された機体を囲むように動いたドドスの「鋼鉄の鎧騎士」一体が元初号機によって片腕を切り落とされた。

 しかしすぐに他のドドスの「鋼鉄の鎧騎士」が向かってきてその応戦で忙しくなる。

 動きとパワーはさすがに新型、ドドスのガレント王国産の量産機を上回ってはいた。

 しかしやはりここでも多勢に無勢、元初号機に三体のドドスの「鋼鉄の鎧騎士」が群がっていて、やられてはいないもののじわりじわりと押され始めた。



『もう一体の新型も前へ!』



 指揮官がそう命令をすると、三号機が槍を構えて突入する。

 その攻撃で取り残された機体の囲みが崩れ、そこへまた一撃離脱の二体が突っ込む。


 かろうじて片腕だけ切られて動かなくなった取り残された機体と先ほどの突撃した二体が一緒に戻ってくる。



『中破した機体はサポートにまわれ! 次の編成して突撃!!』


 何とか取り残されていた機体が戻ってきたが、万全の状態でなければ役に立たない。

 が、今度は前線に出た新型二体が徐々に取り囲まれ不利になってくる。



「だめですわ、いくら新型でもあの数に囲まれてはですわ!!」


「くっ、あれじゃぁだめだ!!」


 新型がとうとうドドスの「鋼鉄の鎧騎士」に囲まれた瞬間だった。




『はぁッ!!』

 


 ドガッ!!

 だんっ!

 ドガッ!!

 だだんっッ!!


 どがんっ!!



 なんと指揮官が両手に槍を持った状態で突撃して囲まれた新型の救援に向かった。

 その速さはどういうわけかすごく速い!

 ドドスの「鋼鉄の鎧騎士」に槍を突き付け、相手の盾を弾くと同時に相手を蹴り上げ、その反動で隣の一体にも槍を突き付ける。

 その速さはまるで通常のイザンカの機体の三倍くらいの速さ!!


 両手の槍を手放し、腰の剣を引き抜きさらに新型を囲むドドスの「鋼鉄の鎧騎士」に切り込む。



 がきーんっ!!



 だがさすがに三体目にダメージを与えることはできず剣と剣のつばぜり合いになる。



『今のうちだ、引けっ!!』



 指揮官機はそう叫んで新型二体が囲まれたそれからかろうじて離脱をした。

 だが、今度は指揮官機が取り残されてしまう。



『隊長!』



 誰かの「鋼鉄の鎧騎士」が叫んだ時だった。



 がっ!

 どす!

 どすどす!

 どすどすどどすっ!!



『ぐぁああああぁぁぁぁっ!』



 ドドスの「鋼鉄の鎧騎士」たちが一斉に指揮官機に剣を突き立てる。

 

 流石の「鋼鉄の鎧騎士」も外装でなく関節やその隙間を狙われて剣を突き刺されればひとたまりもない。

 「鋼鉄の鎧騎士」同士の戦いでもその弱点をいかに攻めるかが重要となる。

 しかしそれを一斉にされたらひとたまりもない。


 その剣先は確実に中にいる操縦者に届く。



『ぐっ、い、イザンカに栄光あれ! 我が一生にくいなぁあああぁしぃいいいいぃぃっ!』



 そう言って指揮官機は右腕を上げる。



「それはっ、ですわっ!!」


 ミリアリア姉さんがそう叫んだ瞬間だった。

 指揮官機が真っ赤になってその場で爆散した!!



 どッガーンっっ!!



「なっ!? どういうこと!?」


「指揮官機の操縦車は最後に魔晶石核の暴走をさせたのですわ。たとえイザンカの機体でも魔晶石核暴走で爆散すれば少なからずともドドスの『鋼鉄の鎧騎士』にも影響を与えますわ…… 隊長は、ドドスの『鋼鉄の鎧騎士』を道連れにしたのですわ!!」



 爆炎が燃え上がる中、吹き飛ばされたドドスの「鋼鉄の鎧騎士」がのっそりと起き上がる。

 流石にノーダメージとはいかないが、それでもまだ戦える様子だった。

 


 ドドスの鋼鉄の鎧騎士たちは再び編成を組みなおし、「対魔の盾」を構えてこちらに進軍を始める。



「アウドーム見事な最期だった…… しかしイザンカはまだ敗れたわけではない! 残りの『鋼鉄の鎧騎士』たちよ、イザンカの名誉を守るのだ!!」



 将校がそう叫ぶ中、東と西の「鋼鉄の鎧騎士」たちも到着した。


「出し惜しみはするな! 全軍総攻撃!! ドドスの連中に思い知らせてやれ!! おせやぁーっ!!!!」




 そして戦いは更なる泥沼に突入するのであった。  

 

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