3-30:混戦
「な、何だっ!?」
「そんな、五号機がですわ!!」
魔光弾ランチャーと共に五号機が爆発の炎に包まれていた。
腰に構えてていた魔光弾ランチャーが暴発でもしたのか、その被害は五号機の腰部に直接被害を及ぼし、五号機からも火の手が上がった。
きゅうぅううううぅぅぅぅ~
ボンッ!
どッガーンっ!!
五号機は腰部から閃光を放ち、その場で爆発してしまった。
「なっ!? いったいどういう事なんだ!?」
驚きそう言うと、隣で私が張った【絶対防壁】の中でミリアリア姉さんが愕然と膝を落としていた。
「そんな……魔光弾ランチャーが連発の負荷に耐えられなくて暴発するだなんてですわ! しかも五号機にまで被害が及び、魔晶石の誘導爆発に連結型魔晶石核まで反応して誘爆してしまうだなんてですわ!!」
ミリアリア姉さんは青ざめてそう言う。
そうか、すっかり忘れていた。
この世界にはまだ「銃」というものが存在しない。
ボーガンというものは存在するので似たような形状の飛び道具はある。
しかし火薬などの熱爆発による弾頭の発射は知られていない。
魔光弾ランチャーの有効性は証明された。
だからと言って無理して連続使用に加え、出力を絞っての発射は当然どこかに負荷がかかる。
魔法という物理の法則と違ったものに失念していた。
それでも媒体である素材が熱を持った時点で気づくべきだった。
「ミリアリア姉さん、とにかく消火する!」
私はそう言って燃え盛る五号機に向かって無詠唱魔法で【水の壁】ウォーターウォールを発動させる。
こういう場合、下手に上から水をかけたって消えない。
燃えている物質の熱を下げて気化する発火ガスを止めなければならない。
だから下から吹き上がる水によって物質の温度を一気に下げる!
じゅっ!!
じゅっじゅうぅぅっ!!
私が出した【水の壁】のおかげで燃え盛ていた五号機は瞬時に鎮火した。
しかし
「操縦者は…… あれじゃ助からないか……」
一目瞭然だった。
操縦席である腹部は腰部の上だ。
そこが破裂して発火したのだ。
助かるわけがない。
「あ、あうぅうううぅぅ……」
隣にいたミリアリア姉さんが私の言葉に反応して頭を抱えてうなる。
「わ、私のせいですわ…… もっと安全策を考えなければいけなかったのに、威力のことばかり考えてですわ……」
「ミリアリア姉さんしっかりして! まだ終わったわけじゃない、まだドドスの『鋼鉄の鎧騎士』は残ってるんだよ!!」
うろたえるミリアリア姉さんの肩をゆすって私はそう言う。
そしてドドスの「鋼鉄の鎧騎士」たちを見ればまだ十体以上残っている。
先ほどの五号機の魔光弾ランチャーの攻撃で「対魔の盾」が通用しなかったことにあちらも混乱はしていたが、すでに中距離まで迫ってきてたので盾を構えなおしてこちらの様子を見ながら城壁の上で鎮火された五号機の様子を見ている。
しかしそれは長くは続かず、脅威となる五号機が何らかの理由で動かなくなったのをいいことに再び城壁に近づき始めた。
「新型がダメか、仕方ない待機させていた『鋼鉄の鎧騎士』を全部出させろ! 東と西のも呼び寄せ総力戦だ!! ミリアリア嬢、残りの新型二体は大丈夫でしょうな?」
将校が号令をかけながらミリアリア姉さんに聞いてくる。
それを聞いてミリアリア姉さんは顔を上げ、彼を見てから力強くうなづく。
「つ、通常戦闘は問題ありませんわ。アルムのようにフル稼働するなら別ですが、残りの二体は万全ですわ!」
「結構。編成をまとめろ! 旧型は今まで通りの集団戦だ! 新型二体はそれのフォロー、相手の戦線をかき乱せ!!」
そう言って南の門を開き、こちらもいよいよ「鋼鉄の鎧騎士」を出す。
その数五体と新型二体の合計七体。
東と西の門に回している万が一の時の足止め用の「鋼鉄の鎧騎士」ももうじき到着すれば全部で九体。
数的にはかなり不利だ。
だがもうここまでくればやるしかない。
「開門-っ!!」
兵士たちが大声を上げて城門の外へ出ていく「鋼鉄の鎧騎士」たちに声援を送る。
だが、五号機が自爆して先ほどまでの高揚感はなくなっていた。
しかしこの決戦、ここでこちら側の「鋼鉄の鎧騎士」たちがやられればもう成す術がなくなる。
ドドスの「鋼鉄の鎧騎士」が城壁の間でなだれ込んできたら降伏するしかない。
私は少し目をつぶって考えてから近くにいるみんなに言う。
「最悪は僕たちも出るよ、マリー、アビス、カルミナさん二段仕掛けだ、すまない、みんなの命をくれ」
「お供いたします、アルム様」
「くーっくっくっくっくっ、我が主に牙を向けたことを後悔させてあげましょう!」
「いいニャ、あたしも久しぶりに本気で行くニャ!」
私の言葉にみんなはうなずきそう答えてくれるのだった。
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