火を吹く男と小さな襲撃者①

夜の公演が始まった。

朝にはほとんど意味を成していなかったスポットライトが、ようやく出番が来たと喜ぶようにまぶしくステージを照らす。あちこちに取り付けられたランタンも明かりを灯し、会場を賑やかな光で包む。スピーカーからはポルカ風の音楽が大音量で流れていた。

ランジェナの予想通り、夜のサーカスもなかなかの盛況である。家族連れやヒッピー風の若者、杖をついて歩く老人までもが会場を訪れ、スタンドで売られているスナックやアイスクリームをかじりながら、パフォーマーたちを見て歓声を上げていた。

ドグは会場を走り回る子供たちを目で追いかけながら、箱いっぱいに詰め込まれたポップコーンをつまんで口に放り投げた。

「うえ、甘すぎるぜ」

滝のようにかけられたキャラメルとはちみつが口の中の水分を奪うと、ドグは思わず舌を出した。次の仕事に行く前にマトモな食事をとりたかったが、サーカスで売られているものなど、健康を全くと言っていいほど気にしないパンチのある食べ物ばかりなのが常である。しぶしぶポップコーンを食べ続けるしかない。

ドグは箱を抱えたまま『未知との遭遇』ステージに行くと、周りが見ていない隙にステージ裏へ続く扉に入った。

まもなく始まる夜の公演を前に大忙しだろうとドグは思っていたが、パフォーマーたちは特に慌てる様子もなく、誰かが差し入れたらしいマフィンを食べながらのんびりしていた。ルーディも同じく、派手なステージ衣装のまま好物のバナナマフィンをかじっている。

「よう、調子はどうだ?」

「絶好調!今の私なら、何をやっても上手くいくって気分だ」

公開リハーサルに昼の公演とすでに2度もパフォーマンスをしたこともあってか、ルーディに緊張は見られない。目の前にはアイスクリームが入ったバケツが置かれており、何故かその上ではアイス造りの人形が直立していた。ルーディの力で作ったものらしい。

「ハーイ、ドグ。ダメよ触っちゃ」

「ハーイ、ドグ。ダメよ触っちゃ」

なんだこりゃ?と思って手を伸ばしたドグだが、背後から冷たく響いた声に動きを止める。息の合ったリズムで言葉を重ねながらドグを制止したのは、『ワルツを踊りながら花火を振り回す双子の姉妹』だった。

「そうだ、ドグ。ダメだ触っては。上にはアイスだが、中には花火が入っているからな。私の力でアイスを溶かして、フィニッシュに花火でドカン、というわけだ」

ルーディもからかうように双子の言葉に続けると、ドグは口をへの字に曲げた。だが一方で、三人でパフォーマンスをすることになったと聞いて「上手くやれんのか?」と不安に思っていたこともあり、上機嫌なルーディに内心ほっとしてもいた。

 「何だか面白そうだが、しくじんなよ?ボヤ騒ぎはごめんだからな」

 ひとまず安心したドグはその場を後にしようとする。だがステージ衣装に着替えもせずに椅子に座っていた『火を吹く男』マチャティを見つけると、不思議に思いながら近づいて話しかけた。

 「何やってんだ。アンタは出ないのか?」

 「ハーイ、ドグ。その通りだとも。今日は弟子たちに任せて、私はステージには立たないことにしたんだ」

 そう言われるとドグはますます奇妙に思った。

確かにステージ裏では彼の弟子たちがショーのことを話し合っているが、『火を吹く男』と言えば風邪をひいて倒れる寸前でもステージに立とうとするほどの目立ちたがり屋である。ましてや火吹きのパフォーマンスが大きな華となる夜の公演を休むなど、今までの彼からすれば考えられないことだった。

 「そりゃまたなんでだ?せっかくの火吹き向きな夜だぜ?マフィンでも食いすぎたのかよ」

 ドグに聞かれると、マチャティはいつになく神妙な顔つきで、足元に置いていた小さな木箱を差し出した。木箱といってもバキバキに破壊されてしまっているものであり、蓋や鍵の部分には棒で突き破られたような穴がある。

 「何とかしないといけない問題ができてしまったのでね。パフォーマーたちのテントが荒らされたという話は聞いたな?」

 「そうらしいな、連絡があった。けど、誰かが侵入して荒らしたってわけじゃないんだろ?アライグマか何かが忍び込んだって話だ」

 ドグは昼過ぎにちょっとした騒ぎがあったことを思い出したが、特に気がかりに思う様子も見せずに答える。だがマチャティは木箱をなでながら首を左右に振った。その目は、何故かどこか寂しげである。

 「確かに足跡やテントに残された穴からして、人の仕業ではないらしい。荒らし屋の影を見たデンジャーキッドも、ボーリングのピンほどの小さな背丈だったと言っていた」

ドグは話を聞きながら、柔らかくなったポップコーンを適当につまむ。荒らし屋と言えば物騒に聞こえるが、いくつかのテントで荷物やベッドが荒らされた程度の被害で、誰かが襲われたわけでもない。人が侵入した形跡も残されていなかった。

「じゃあほとんど解決だな?田舎は動物が多いんだ」

「それがそうでもない。考えてみてくれ。もし君が動物で、これからテントに忍び込むとするなら、そこで何を探す?」

ドグは少し手を止めたが、特別深く考えることもしなかった。箱に手を突っ込むと、鷲掴みにしたポップコーンを見せつけながら答える。

「そりゃあ、探すなら食べ物だろ。パンとか菓子とか、食料がどっさりあるからな。動物からすりゃ食い放題のスーパーマーケットってとこだ」

ドグはひと昔前に森番をしていたときにイタチにサンドイッチを盗られてしまったことを思い出しながら話した。

「そうだ。食べ物だ。食べ物を狙うに決まっている。ところが、我々のテントを襲った荒らし屋は、ひとかけらの食べ物も持っていきはしなかったのだよ」

ようやく顔を上げたマチャティがそう返すと、ドグは再びポップコーンをつまむ手を止めた。マチャティは穴のあいた木箱を見せながら話を続ける。

「奇妙でならない。テントにはクッキーや溶けたアイスクリームまであった。だが荒らし屋は、中を荒らしに荒らし回っただけで、どの食べ物にも手をつけることなく消えてしまった。本当にただの動物の仕業だと言うならば、あまりにも不自然だ」

マチャティは表情を険しくする。ドグもしばらくは頭を悩ませていたが、「お目にかかるものがなかったんだろ」とだけ言って、再びポップコーンを食べる作業に戻ろうとした。

「不自然な点はそれだけじゃないんだ」

そう言うとマチャティは抱えていた木箱を開けた。中には大きな宝石がついた首飾りのようなものが入っていたが、引っ掻かれた跡のような傷が残っており、輝きも失われている。

「これは私の家にだいだい伝わる首飾りだ。酷い状態にされたが……こうなってしまったものは仕方ない。気がかりなのは、テントに置かれていた金庫や入れ物が全て破られ、中の宝石や装飾品、アクセサリーの類も全て、私の首飾りと同じように粉々にされていたことだ」

テントに置かれていた宝石の類はほとんどが偽物や複製品であり、パフォーマーやランジェナもさほど大きな問題にはしていなかった。だが大切な首飾りに傷を残されたことに、マチャティは悲痛な思いを感じているようである。

ドグは最後のポップコーンを口にすると、箱をぐしゃりとつぶした。マチャティの話に薄気味悪い予感を覚えると、無意識に視線を外に向ける。

「それは確かに……変だな。どっかの泥棒が、訓練した犬でも忍び込ませたってのか?」

ドグの言葉に、マチャティは「真相は不明だ」とだけ返す。そして何か意を決したように立ち上がると、休憩していたパフォーマーたちに手を振って、出口の方に歩き始めた。

ドグも外へとついて行き、警備員のベストを着直す。マチャティは腕を組みながら深く考え込んでいる顔を見せた

「私が思うに、荒らし屋は何かを探していたようだ。よほどの値打ちものか、価値があるものなのか……テント中を荒らし回って、何か特別な物を探していたのだ」

「そんな馬鹿な話があるのかよ?けど、本当に探し物をしてたんなら、また戻ってきてテントを荒らしやがるかもな」

「そこで私の出番というわけだ。犯人がどんな猛獣を操っているかは知らないが、この『火を吹く男』ハントしてやろうじゃないか」

常に人手不足なクラウンヘッド・サーカスでは団員たちの寝床やテントを見張りする番もおらず、財布をポケットに入れたままステージに立つパフォーマーがいるほど、公演中の警備は手薄である。そこを狙うであろう真犯人をとっ捕まえてやると自信満々で話すマチャティに続いて、ドグもステージ裏を離れた。

ドグたちがどこかに行くところを見たルーディは不思議だと思ったが、双子の姉妹に準備してと言われると、衣装のベルトをしめ直して集中した。

「『火を吹く男』は出ないみたいだが、みんなしっかりやるんだぞ!客人たちをあっと驚かせてやろうじゃないか」

『カミソリでジャグリングをしながら髭を剃る老人』がマチャティの代わりに喝を入れる。普段と比べるとパワーに欠ける声ではあったが、パフォーマーたちはマフィンを掲げながら口々にイエーだとか、オーだとか叫んで返した。

ルーディも周りに合わせて叫ぼうとする。だがしかし、ふとどこからか強烈な視線を感じ、掲げようとしていた右腕を止めた。

「……何だ?」

 冷い手にそっと撫でられたような気配が、背後からざわざわと感じられる。首筋を針で刺されたかのようでもあり、身に覚えがない感覚に鳥肌が立つ。手の指も震えが止まらなくなった。

 何か危険だと思って震えを止めようとするが、むしろ激しさを増すばかりである。

 ルーディは気配を追って振り向くが、彼を見つめている者は誰もいなかった。ステージ裏にいるのはパフォーマーたちと司会者のクリスティーナのみである。ステージ裏はオレンジのテントで覆われており、透明ビニールの窓や喚起のための穴も付いているが、ただ夜空が覗いているだ。

 「ルーディ、早く」

 「ルーディ、早く」

 双子の姉妹に話しかけられて、ルーディはやっと我に返った。気づけば奇妙な視線もどこかに消えてしまっていた。

 今のは何だったのだろうと頭に手を沿える。手の震えも止まっており、一瞬静まり返ったように感じられたステージ裏の賑わいも耳に戻って来た。

結局ルーディは、不気味な気配を感じたのは双子のミステリアスな目線の仕業だったと思うことにし、衣装を踏まないよう大股で歩きながらステージに向かった。

 一方外の会場では、『未知との遭遇』ステージでの上演が迫るにつれて、徐々に人の波が大きくなっていた。

いくつかの屋台はすでに売り切れの札を下げており、芝生には多くの観客が集まって、虫の音を忘れさせるほどに騒いでいる。どこから持ち込んだのか花火を手にしている若者までいたため、ドグは慌てて没収して静かにさせた。

マチャティは賑わう客席を眺めながらかすかにため息をつく。これだけの盛況ぶりを見て、ステージで意気揚々と炎を吹き上げ、観客たちの度肝を抜いてやりたいとうずうずしているようだった。

「やっぱりステージに戻ったらどうだ?」

ドクに言われても、マチャティは険しい顔を崩さなかった。何としても今日のうちに荒らし屋の尻尾を掴んでやろうと、松明の代わりに意欲を燃やしている。

ドクは肩をすくめてマチャティについていく。2人は会場を離れて、団員たちが寝床や休憩所、倉庫としても使っているキャンプ場に戻ってきた。

キャンプ場はサーカス会場に隣接しており、ロッジやキャビンはほとんどがクラウンヘッド・サーカスの貸切になっていた。1番見晴らしがいい場所に置かれているキャンピングカーが団長ランジェナの砦である。

「どうしたもんかな。本当に荒らし屋が金目のものばかりを狙ってるんなら、1番襲われそうなのは団長のキャンピングカーか?」

ドクの言葉に、 マチャティも頷きながら辺りを見回す。

「うむ。彼女の車にはパンクするギリギリまで金庫が積まれているからな。とはいえ、いくら訓練された動物でも、金庫を食い破れるとは思えないが……」

会場が大忙しなのもあり、キャンプ場にいるサーカスの関係者は、1人の警備係だけだ。もし2人がランジェナに見られれば『忙しい時間に何でステージを離れてるんだ』とどやされていただろうが、幸い彼女の姿もなかった。

ドクはキャンプ場の警備係に、何か怪しいものを見なかったかと話を聞くことにした。警備係といっても、務めているのは耳が遠そうで目も開いているかわからないような老夫であり、マフィンを食べたこと以外何も覚えていないようだった。

「うーん……知らないねえ」

 「なるほど。夜になってからは誰も見ていないし、何の物音も聞いていない、ということでよろしいですね?」

 マチャティに繰り返し問われると、老夫はコーヒーを飲みながら頷く。アンタが見えも聞こえもしなかっただけじゃねえのか、と思ったドグだが、それ以上は何も聞く必要はないと判断した。

 「弱った。今日中に尻尾を掴みたいんだがな。また被害が出たら、余分な監視を毎晩立てないといけなくなるぞ」

 「かもしれねえなあ。けどよ、忍び込んでくる奴が本当に飼い慣らされた動物だったりしたら、監視を増やしても手を焼くぜ」

 頭を悩ませながらドグたちは別の場所から侵入者を探そうとする。だが老夫はコーヒーを置き、2人に声をかけた。

 「おいおい待ちな。アンタら動物を探してるようだが、テントを荒らしたのは動物なんかじゃないよ」

 老夫に呼び止められるとマチャティは振り向く。ドグは適当に流してその場を去ろうとした。

 「さいですか。じゃあきっと妖精の仕業か何かでしょうな」

 「妖精?ふむ、近いかもしれん。だが真犯人は違う……小人だよ。私は、この目ではっきりと見たんだから」

 老夫にそう言われてドグは、先のテント荒らしが起こった際に、誰かが『小人がテントを荒らした』と無線で騒いでいたことを思い出した。あの無線を入れてたのはこの爺さんか!と少々呆れてしまったが、隣のマチャティは興味深そうに顎の辺りをさすっていた。

 「オイ冗談だろ?おとぎ話じゃあるまいし、そんな意味のわからないこと言われても信じられねえ……ですよ」

 超能力者と仕事をしている自分を棚に上げながらドグは言い放つ。老夫は首を振りながら、何か骸骨のような紋章が描かれているマグカップを差し出した。

「この街の伝承は知っているかね?」

突拍子もない老夫の言葉にドグは、軽く腕を組んで『全くなんのことかわからない』と態度で示す。マチャティも眉をひそめている。

老夫は2人の反応を特に気にしていない様子で、指を空中に絵を描くように動かしながら話を始めた。

「この街には『鬼人』の伝承があるんだよ。鬼人とは、災いを呼ぶ力を持った悪魔のようなモンスターの一種だ。いつもは山に暮らしているが、時折人の世に降りてきては食事として生き血を奪っていく。人々にとって鬼人は恐るべき存在であり、その伝承は街のあちこちで残っている。例えば、こんな風な骸骨の像を見たことはないかい?」

 マグカップに描かれた骸骨の紋章を見たドグは、街のあちこちで似たような像を見たことを思い出した。だが同時に『世界の鬼人フェスティバル』なるお祭りのポスターを目にしたことも思い出し、すでに街の人にも本気にされていない都市伝説だろうと、心の中では老父の話を一蹴する。

マチャティは真面目なトーンで老夫に言葉を返した。

 「確かに、聞いたことがある話です。鬼人伝説にまつわる本や物語もあるようだったし、『いい子にしないと鬼の子が来るぞ』なんて言葉も聞いた。それにこの街には、伝承に関連した妙な宗教まであったような……鬼人と言えば、ルーディとも何かつながりがあるんじゃないのか!?」

 「アイツのはただのステージネームだろ」

 マチャティの問いを雑にあしらいながら、ドグは老夫に渡されたマグカップを手に取って描かれた骸骨の紋章をまじまじと見る。

二本の角を生やしたその骸骨には植物のつるが撒きつけられており、その姿はいかにもおどろおどろしい。しかしながら、所詮はマグカップに描かれる程度のモンスターかと、ドグは特別気にすることはしなかった。

「話を戻そう。鬼人の伝承の中には、小人が使い魔として姿を現すという話が書かれたものもあるのだよ。そしてその小人が、我々を襲った犯人だと言うわけだ。疑うならこの街の誰かにも聞いてみるといい」

ドグの手から帰ってきたマグカップに残っていたコーヒーを飲みながら、老夫は話を終える。マチャティは真剣な表情のままだったが、ドグは時間の無駄だったなと言う代わりに適当に頷いた。

「世界一役に立ちそうな話をどうも。これでもう何もかも安全ですな」

ドグは振り向いて、他のテントの様子を見に行こうと歩き出す。マチャティは老夫の手を握って丁寧に礼を言うと、ドグの横に小走りで並んだ。

「ドグ、無礼な物言いは慎んだ方がいい。どんな伝説にも敬意を払うべきだ。私の故郷にも鬼や小人の伝説はある。全くありえない話では……」

「お前までそんなことを言うのか!?くだらねぇおとぎ話を聞きにステージを抜け出したわけじゃないんだぜ、俺たちは」

ドグはそう言い返しながらマチャティの方を向いた。だがマチャティはドグの方には目もくれておらず、立ち止まってはあらぬ方に視線を向けていた。視線の先に何かを見つけたように目を凝らしている。

「オイ、どうした?」

ドグは首をかしげながらマチャティと同じ方に目を向けた。しかしそこには誰もおらず、立ち入り禁止の看板が置かれているだけである。

「そこに何かいたぞ」

ドグには何も見えないままだったが、マチャティは確証を持った様子で言うと歩く方向を変え、看板に近づく。呼び止めようとしたドグだったが、仕方なく彼に続いた。

マチャティは看板の裏側を確かめたが、やはりそこには野犬の一匹もいない。それでも自分の目を疑っていないのか、辺りの地面を見回しながら何かを探している。

「ほんとに何か見えたのか?」

「私の目は嘘をつかない。この看板と同じくらいの大きさの影が、私たちを見ているようだった。素早くどこかに消えてしまったが……」

はじめは勘違いだろうと思っていたドグだが、ちょうど看板から2メートルほど離れた地面に不自然なくぼみが残されていることに気づき、目を丸くした。それは足跡のようであり、キャビンが立ち並ぶ広場の方に続いている。

「それは足跡か?やはり、何かがいたんだな」

マチャティも同じく、地面に残っていた跡に気づいた。疑うばかりだったドグも何かが近くに迫ってきていたと理解し、足跡を辿り始める。

足跡は随分と大きく、その上爪や肉球のような形は見られない。真っ平らなスニーカーでも履いているのではないかと思ってしまうような形に、マチャティは本当に小人の仕業なのではないかとさえ思った。

広場まで着けば足跡は途絶えてしまっていたが、芝生には、しっかりと踏み込まれた跡が残っている。

耳をすませてみれば、どこかのキャビンから、ガラスか何かが割られているらしい音も聞こえてきた。会場から響くサーカスの音にかき消されそうではあったものの、バリン、ドタンと、まさにキャビンの中を荒らして回っている音がした。

例の荒らし屋だ!と二人は確認する。そして一度顔を見合わせてから、キャビンが立ち並ぶ高台へと進んで行った。

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