第4話 流山凛はキャパオーバーだった
「なっ! 何を根拠に言っているのですか!」
「そうだよね! あの三姫に数えられる流山さんが変人柏っちのことなんて!」
「いや、その、べつ……柏先輩は変人じゃないと思います……」
顔を赤らめて小声で否定する流山。
え、何このリアクション……と館山は自分で言っておきながら、本当に流山が柏のことを好きなのではないかと思ってしまう。
しかし館山は脳内ですぐに考えを改める。
いやいや、そんな馬鹿な。
そして同意を求めるように成田の方を見た。
「残念だったな館山涼子。流山凛は浩介にほの字だ」
「なっ……!」
「ちょ……成田先輩! どうして言うんですか!」
にやにやと笑顔を浮かべながら、爆弾発言をする成田。
館山は驚き、流山は焦りだす。
「どうしてって流山凛こそ宣戦布告しなくていいのか?」
「どういう意味ですか?」
「いいか、そこの館山涼子は去年「あー! あー! ストップ! 成田っち! ダメだよ!」
何かを言いかけた成田の口を館山が手でふさぎ、必死に止める。
そして近づくと、小声で言う。
「ちょっと柏っちのこと好きな人の前で何言うつもり!?」
「ふごふごごご!」
「いや、ふごじゃなくて!」
「ふごごふごをふごごごご!(※お前が口を押さえているからだろ!)」
「ああ、ごめん」
館山が手を放すと、成田は深呼吸をする。
流山はその一連の流れを唖然としながら見ていた。
「あー、空気うま」
「成田先輩、さっき何言おうとしたんですか?」
「ちょっと流山さん!? どうでもいい話だから!」
「何を言う館山涼子! 流山の秘密を知った以上お前の秘密も言わないとフェアじゃないだろう!」
「バラしたのは成田っちじゃん!」
「バラしたのは成田先輩ですけど」
「そんなことはどうでもよかろう!」
なぜか開き直る成田。
その堂々たる様子に二人は言葉も出なかった。
「いいか? はっきり言っておくぞ流山凛! 浩介を攻略したいなら館山涼子は乗り越えなければならない壁になるだろう!」
「……!」
流山は息を呑んだ。
成田は日頃謎のテンションでふざけたことを言うが、ここぞというときに言ったことに嘘はなかった。
覚悟を決め、流山は館山の方を見る。
「館山先輩」
「な、なにかな、流山さん?」
「私、本気で柏先輩のことが好きなんです。だから柏先輩とどういう関係なのか教えてくれませんか?」
「…………」
その真っ直ぐな瞳に、館山は参った。
まさか、そこまで柏のことが好きだとは。
「はぁ、分かったよ。でも私の口から言うのはあれだから成田っちから聞いてね」
「ありがとうございます!」
「よかろう! では私が答えよう!」
腕を組み、胸を張る成田に注目が集まる。
「浩介と館山涼子は去年の秋、付き合っていたのだ!」
「ダウト!!! 言い方があるでしょ!!」
「嘘ではないだろ!」
「嘘でないから余計にややこしいんだよ!」
「こういうのはスパっと言った方がいいんだ!」
「だとしても!」
「流山、お前も驚いたかもしれないが…………流山?」
二人は流山からの返事がないことに気づき、おそるおそる彼女の方を見た。
笑顔のまま、直立不動で動かない流山。
「おい、ながれや……!?」
「どうしたの成田っち」
「し、死んでる……!」
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