捜09-07 古冢老狐・狐帶香囊

○古冢老狐


吳郡ごぐん人の顧旃こせんがある岩山に猟に出た。そこで何者かの声を聞く。

「ああ、ああ、今年は衰えたものだ」

顧旃が連れとともに声の主を捜し求めたところ、岩山の頂上に穴があり、そこには古い墓石があった。見れば墓石の中に老いた狐がおり、一冊の帳簿とにらめっこしている。老狐は帳簿を前に指をおりおり何かを検証しているようであった。顧旃は犬を放ち狐を噛み殺させた。そして墓に入り帳簿を覗き込んでみれば、どうやら犯したい女性のリストのようであった。既に犯し済みの女性には赤で塗抹がなされていた。リストアップされる名は百近くを数えたが、その中には顧旃の娘の名も載せられていた。



○狐帶香囊


襄陽じょうよう人の習鑿齒しゅうさくし、字は彥威げんい荊州主簿けいしゅうしゅぼとして取り立てられ、桓温かんおんの狩猟に付き従った。

この時大雪が降り始めた。場所は江陵城こうりょうじょうの西である。

見れば、草上の雪に何かが立ちこめていた。様子をうかがってみれば黄色い何かがある。矢で射て殺し、近付けば、そこには老いた黄色いオスの狐がいた。その足には赤い絹の香り袋がつけられていた。




古冢老狐

吳郡顧旃,獵至一崗,忽聞人語聲,云:「咄,咄,今年衰。」乃與眾尋覓。崗頂有一阱,是古時塚。見一老狐蹲塚中,前有一卷簿書。老狐對書屈指,有所計校。乃放犬咋殺之。取視簿書,悉是姦人女名。已經姦者,乃以朱鉤頭。所疏名有百數,旃女正在簿次。


狐帶香囊

襄陽習鑿齒,字彥威,為荊州主簿,從桓宣武出獵。時大雪,於江陵城西,見草上雪氣出。伺觀,見一黃物,射之,應箭死。往取,乃一老雄狐,腳上帶絳綾香囊。


(捜神後記9-7)




うーんこの投げっぱなしっぷり……いや、嫌いじゃない、嫌いじゃないですが……!

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