捜09-02 熊穴・鹿女脯

○熊穴


東晋とうしん昇平しょうへい年間、すなわち穆帝ぼくていの時代。ある人が山に鹿を狩りに入った。するとうっかり山中の穴に転がり落ちた。あまりに深く、出口に届きそうにもない。

そこには、数頭の熊の子があった。間もなくして大きな親熊が現れた。親熊にじろりと睨まれ、この人は死を覚悟する。しかし親熊は、むしろ貯蔵していた果物を、小熊たちと共に、その人の前にも提示した。彼はこの時大いに飢えていたため、死んでも構わない、と果物に手をつけ、食べた。それが奏功したか、この熊たちと親しくなった。

熊の母は毎朝に穴から出、果物を取り、戻ってくる。彼もそれを食べ、命を繋げた。

熊の子らが後に大きくなってくると、母はその一頭ずつを背負い、穴の外に連れ出した。全ての子熊が連れ出されたとき、この頃の彼は瀕死であったのだが、母熊が再び戻ってくると、彼にも手を差し出す。母熊が外に連れ出してくれると悟った彼は、熊の手にしがみつき、ついに穴の外から出ることが適うのだった。



○鹿女脯


淮南わいなんちん氏は田に豆をまいていた。そこにふたりのおなごが現れた。とても美しく、紫の襦袢に青いスカートを身につけていた。このとき雨が降っていたはずだが、彼女らの衣服に湿る様子もない。

ところで彼の家には銅鏡が壁に掛かっていた。鏡の中には二頭の鹿がいた。なので鎮は刀を取り両名を斬り殺し、干し肉とした。




熊穴

晉昇平中,有人入山射鹿。忽墮一坎,窅然深絕,內有數頭熊子。須臾,有一大熊來,瞪視此人。人謂必以害己。良久,出藏果,分與諸子,末後作一分,置此人前。此人饑甚,於是冒死取啖之。既而轉相狎習。熊母每旦出,覓果食還,輒分此人,賴以延命。熊子後大,其母一一負之而出。子既盡,人分死坎中,窮無出路。熊母尋復還入,坐人邊。人解其意,便抱熊足,於是躍出。竟得無他。


鹿女脯

淮南陳氏,於田中種豆。忽見二女子,姿色甚美,著紫纈襦,青裙,天雨而衣不濕。其壁先掛一銅鏡,鏡中見二鹿,遂以刀斲獲之,以為脯。


(捜神後記9-2)




わ、ワイルドだぞぉ……

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