8巻

捜08-01 二人著烏衣 他二編

○二人著烏衣


王機おうき廣州刺史こうしゅうししとなったある日、トイレに入ったそばから烏衣を身にまとった二人組に襲いかかられた。格闘することしばし、なんとかその両名を捕まえたところ、ふたりは烏や鴨のようななにかに姿を変えた。

一体これは何なのか、と鮑靚に問えば、このような答えが返ってきた。

「不祥を招きますぞ」

王機はこれらを焼き捨てようと思ったのだが、ふたつはどこぞへとなく飛び去った。

まもなくして王機は処刑された。



○火變蝴蝶


しん義熙ぎき年間、すなわち劉裕りゅうゆうが権勢を伸ばしていた頃。烏傷うしょうに住む葛輝夫かつきふが妻の実家に泊まった。夜も更けた頃、二人の男が松明を持って階段のそばに現れた。葛輝夫は強盗か何かと思い、杖を持って駆け寄り、打ち据えようとした。しかし葛輝夫が杖を振り上げたところでその何かは蝶に姿を変え、あたりに鱗粉を振りまいた。鱗粉が葛輝夫の脇の下に当たると、倒れ、そのまま死んだ。



○諸葛長民


諸葛長民しょかつちょうみんは富貴となったが、一月のうち十夜ほどは夜中に跳ね起き、まるで何かと格闘するかのように暴れまわっていた。ある夜、毛修之もうしゅうしと宿を同じくしたところで、やはり暴れまわった。驚いた毛修之がいったいどういうことなのかと問えば、諸葛長民は答える。

「なにかが見えるのだ。それはとても黒く、手足を生やしているようだが、よくわからん。とにかく暴れまわるので、俺でなければとどめきれんのだ」

毛修之にこう話した後にも怪異は諸葛長民のもとにしばしばやってきたそうである。いわく、屋内の柱や梁の間から蛇のような顔をした何かが現れた。ひとに命じ斬り殺させようとしたがそれはささっと闇に逃げ込み、手のものが退くと再び現れた。

いわく、洗濯かごと杵がまるで人間のように話していたが、その内容はうまく聞き取れなかった。いわく、壁に二メートル強ほどの手が現れ、その腕は人間の胴数人分ほどもあったので斬らせようとしたら、忽然と消えた。

こうした話を盛らして間もなくし、諸葛長民は誅殺された。




二人著烏衣

王機為廣州刺史,入廁,忽見二人著烏衣,與機相捍。良久,擒之,得二物如烏鴨。以問鮑靚,靚曰:「此物不祥。」機焚之,逕飛上天。尋誅死。


火變蝴蝶

晉義熙中,烏傷葛輝夫,在婦家宿。三更後,有兩人把火至階前。疑是兇人,往打之。欲下杖,悉變成蝴蝶,繽紛飛散。有一物衝輝夫腋下,便倒地,少時死。


諸葛長民

諸葛長民富貴後,常一月中,輒十數夜眠中驚起,跳踉,如與人相打。毛修之嘗與同宿,見之驚愕,問其故。答曰:「正見一物,甚黑而有手腳,不分明,奇健,非我無以制之也。」後來轉數。屋中柱及椽桷間,悉見有蛇頭。令人以刃懸斲,應刃隱藏,去輒復出。又擣衣杵相與語,如人聲,不可解。於壁見有巨手,長七八尺,臂大數圍。令斲之,忽然不見。未幾,伏誅。


(捜神後記8-1)




このへんは誅殺された人たちの見た何か、でまとまるんでしょうか。しかし諸葛長民の話、晋書にまるまる載るんですよね。いやぶっちゃけ要らんくない? ここだけでいい気もしますが。

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