捜07-06 狗變形

そう王仲文おうちゅうぶん河南郡主簿かなんぐんしゅぼとなり、緱氏縣こうしけんの北に居を構えた頃のこと。


あるひ休みを得た王仲文は、夜にふらりと澤にでかけた。すると車の後ろに白い狗がついてくるのを見かけた。なんと可愛らしいことか、と王仲文が狗を車に載せようとすれば、いきなり狗は人のような形に姿を変えた。まるで方相ほうしょうと呼ばれる妖怪のような、目が炎のように赤く、ぎらりと剥いた牙にべろりと伸び落ちる舌といった形相。なんとも憎々しげ、そして恐ろしげな顔つきであった。


王仲文は大いに恐れ、従えていた奴とともに打ち倒そうとしたが敵わず、逃げ出した。自宅に到着すると家人ら合計十人あまりを動員し、皆で武器を構え、襲来を待ち受けたが、それが姿を表すことはなかった。


それから一ヶ月ほどしてから、王仲文はいきなり例のそれに出くわした。奴とともに慌てて逃げようとしたのだが、家にたどり着くよりも前に倒れ伏し、ともに死んだ。




宋王仲文為河南郡主簿,居緱氏縣北。得休,因晚行澤中。見車後有白狗,仲文甚愛之。欲取之,忽變形如人,狀似方相,目赤如火,磋牙吐舌,甚可憎惡。仲文大怖,與奴共擊之,不勝而走。告家人,合十餘人,持刀捉火,自來視之,不知所在。月餘,仲文忽復見之。與奴並走,未到家,伏地俱死。


(捜神後記7-6)




うーん、あっちの怪談は容赦なく殺してきますね。ひどい。不安の種みたいなタイプの方が好きと言えば好きなんですが、まぁそもそも怖い話とか読みたくないな? あれ、そしたらなんで俺志怪なんて読んでんだ?(自己矛盾)


まー深く考えるの早めにしておきましょう。世説新語と同じく読み、通過させ、なんとなくストックできたものが勝手にこころの中で混じり合うのを楽しめばええのです。


いやほんと、世説新語ってわりとすっと記憶に残ったんだけど、志怪がマジで頭の中に残らない……あるいはただの老化かな……。

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