捜06-13 白布褲鬼
「そなたの家の鬼とやらはどこにおるのか? 呼んでみたまえよ、わしがそなたのために叱り飛ばしてやろう」
すると直後に家の梁にぎしり、と言う音がした。このとき家の中には客人が多くおり、みなで天井を見上げた。すると何かがぺろり、と吉翼子の顔に乗る。見れば、それは劉池居の妻の衣服であった。しかも洗濯前、汚れがついたままのものである。目撃した誰もがその様子に大笑いし、吉翼子は大いに恥じ入り、顔を洗って逃げ去った。
ある人が劉池居に言う。
「食い物を盗む鬼なのだろう? ならば食い物が終わったあたりでまた盗もうとするときに毒でも仕込んでやればいい」
そこで劉池居はよその台所を借り野葛を煮込み、二升もの汁を確保し、密かに家に持ち込んだ。
そして夜になると劉池居は家族とともに皆で粥を作って食べ、余ったひと皿に葛汁を振りかけて食卓の上に置き、盆で蓋をした。家族が皆隠れると、やがて鬼が外からやってき、盆を開けて葛汁にまみれた粥を食した。そして食べ終わると皿をなげうち、外に走り去った。
とはいえ間もなくすると鬼は屋根の上に現れ、嘔吐を繰り返す。その怒りは凄まじく、手にした棒で窓や戸をガンガンと叩きまわる。対する劉池居もあらかじめ防備を固めており、鬼の迎撃に出た。鬼はもはや家に入ることも叶わず、夜明け頃にはついに消え去るのだった。
樂安劉池居,家在夏口。忽有一鬼,來住劉家。初因闇,彷彿見形,如人,著白布褲。自爾後,數日一來,不復隱形,便不去。喜偷食,不以為患,然且難之。初,不敢呵罵。吉翼子者,強梁不信鬼,至劉家,謂主人曰:「卿家鬼何在?喚來,今為卿罵之。」即聞屋樑作聲。時大有客,共仰視,便紛紜擲一物下,正著翼子面。視之,乃主人家婦女褻衣,惡猶著焉。眾共大笑為樂。吉大慚,洗面而去。有人語劉:「此鬼偷食,乃食盡,必有形之物,可以毒藥中之。」劉即於他家煮野葛,取二升汁,密齎還家。向夜,舉家作粥糜,食餘一甌,因瀉葛汁著中,置於几上,以盆覆之。人定後,聞鬼從外來,發盆啖糜。既訖,便擲破甌,走去。須臾間,在屋頭吐,嗔怒非常,便棒打窗戶。劉先已防備,與鬥。亦不敢入。至四更,然後遂絕。
(捜神後記6-13)
クズが毒、と言うのがいまいちよくわかりません。だいたい薬草扱いですのにね。下剤的な何かなんでしょうかね。しかしこの鬼も何やりたいんだかよくわからなくて良いです。
→コメントにてLevee9999様よりの情報を賜りました! ありがとうございます!
野葛と書くものの中にゲルセミウム・エレガンスという「世界最強の植物毒を持っているといわれるほどの猛毒植物」が含まれているのだそうです。おっかねぇ……なんで葛と同じ当てられてんだ……
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