捜04-04 李仲文女

しんの時代、武都太守ぶとたいしゅ李仲文りちゅうぶんが在任中、現地で当時十八であった娘を亡くした。彼女はいったん武都の郡城の北に葬られた。


李仲文が任期を終えると、張世之ちょうせいしが新たな太守としてやってきた。その息子は張子長ちょうしちょうという。年は二十で、父に従い武都太守府入りし、別室を与えられた。


ある夜、夢に一人の女性が現れた。年のほどは十七、八。ただならぬ色気を伴っていた。

「わたくしは先の太守の娘ですが、早死にてしまいました。しかしどうやら、蘇ることが叶うのかもしれない、とのことなのでございます。そのためには、身も心も愛楽に委ねるべし、とのことにございました」

彼女は張子長の夢に五度、六度とあらわれ、ついには昼間にまでその姿を表した。えろえろしい服を着、フェロモンも撒き散らしている。たまらず張子長はお合体申し上げた。ことが終わると破瓜の染みがあった。


一方、任地より郷里に戻っていた李仲文は婢女を遣わせ、娘の墓の様子を確認させた。そこで張世之の妻と会ったため挨拶を交わし、話を聞くことになった。太守府の別室に入れば、長椅子の下には李仲文の娘が履いていた靴が転がっている。婢女はその靴を拾って号泣、そして言う。

「何者かがお嬢様の墓を荒らしております!」婢女はその靴を引き取ると帰還、李仲文に示す。李仲文は驚愕し、詰問の使いを張世之に送った。

「あなたのご子息は、いったいどのようにして我が亡き娘の靴を入手したのだ?」

張世之が張子長を呼び、問いただせば、張子長も我が身に起こったことをつぶさに打ち明ける。


これは、一体どういうことなのか。李仲文と張世之は不可思議なことだ、と考え、娘の棺桶を開け、中を確認した。すると彼女の死体は未だ生きているかのごとくであり、腐敗もまったく進んでいなかった。しかし靴が、左足に履いていたはずの靴がなかった。


その夜、張子長の夢に例の女が現れ、言う。

「もう少しで蘇ることが叶いましたのに、その前に棺桶が暴かれてしまいました。この先、私の身体は腐り果て、ほんとうの意味で死を迎えましょう。恨めしきこと尽きせませぬが、いまさら何を言ったところでしかたの無きことにございます」


彼女はすすり泣き、張子長に別れを告げた。




晉時,武都太守李仲文,在郡喪女,年十八;權假葬郡城北。有張世之代為郡,世之男字子長,年二十,侍從在廄中。夜夢一女,年可十七八,顏色不常,自言:「前府君女,不幸早亡,會今當更生。心相愛樂,故來相就。」如此五六夕。忽然晝見,衣服薰春殊絕,遂為夫妻;寢息,衣皆有污,如處女焉。後仲文遣婢視女墓,因過世之婦相聞。入廄中,見此女一隻履在子長牀下,取之啼泣,呼言發塚。持履歸,以示仲文。仲文驚愕,遣問世之:「君兒可由得亡女履耶?」世之呼問,兒具道本末。李、張並謂可怪。發棺視之,女體已生肉,姿顏如故,右腳有履,左腳無也。子長夢女曰:「我比得生。今為所發,自爾之後,遂死,肉爛,不得生矣。萬恨之心,當復何言?」涕泣而別。


(捜神後記4-4)




艶めかしい話から急転直下ですね。いや正直この巻エロ漫画かよって感じです。わるくない。それにしても誰ひとりとして悪くないのに誰ひとりとして幸せにならないこの構造すさまじいな。現代でこんな話やったらクレームもんですねぇ!(にこにこ

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