捜04-03 李除・鄭茂

○李除


襄陽じょうよう李除りじょが流行病に当たり、死んだ。妻がその屍を守った。すると死体が真夜中ごろに突然起きだし、妻の腕につけられていた金の腕輪を叩く。妻は大いに恐れて腕輪を外し、死体に渡した。死体はそれを掴むと、再び死んだ。隣にいるのが恐ろしくなり、妻は少し離れたところから様子をうかがった。すると明け方に近付くにつれ、徐々に体温が戻り、ついには蘇った。李除は言う。

「冥府の門吏に私は連れ去られていたのだ。そこには同じような境遇のものが多くあったが、その中の一人が門吏に賄賂を渡すことで帰還するのを見た。なので私も金の腕輪を差し出す、と約束し、いちど取りに戻った後門吏に渡した。果たして門吏は腕輪を得たあと、私に返るよう命じた。そして門吏は腕輪を持って去って行ったのだ」

後數日,不知猶在婦衣內。婦不敢復著,依事咒埋。

すると数日後、なぜか腕輪が妻の衣服の中から出てきた。妻はもう腕輪をつけようとも思わず、呪術者に依頼し、地面に埋めた。



○鄭茂


鄭茂ていぼうが病亡で死んだ。かりもがりが済んだが、しかし何故か妻は埋葬しない。聞けば、妻や家族の夢枕に鄭茂が立ち、言ったそうなのである。

「わしはまだ死んでおらず、たまたま魂が抜けてしまったそうなのだ。棺桶を開いてわしの身体を出し、車釭を焼き、頭頂部に焼き付けてくれんか」

この言葉に従ったところ、鄭茂は蘇生した。




李除

襄陽李除,中時氣死。其婦守尸。至於三更,崛然起坐,摶婦臂上金釧,甚遽。婦因助脫,既手執之,還死。婦伺察之,至曉,心中更暖,漸漸得蘇。既活,云:「為吏將去,比伴甚多,見有行貨得免者,乃許吏金釧。吏令還,故歸取以與吏。吏得釧,便放令還。見吏取釧去。」後數日,不知猶在婦衣內。婦不敢復著,依事咒埋。


鄭茂

鄭茂病亡,殯殮訖,未得葬。忽然婦及家人夢茂云:「己未應死,偶悶絕爾。可開棺出我,燒車釭以熨頭頂。」如言,乃活。


(捜神後記4-3)




李除の話は蘇生譚として面白く興味深いのだが、鄭茂のこれは車釭がなあ。なんでも車輪と車軸の間に噛ませて摩耗を防ぐパーツらしいとのことなんですが、これを焼いて頭に押し当てる????? これも含意がわからないとどうしようもない感じですね。冥府への旅立ちに当たってのなんだかんだ、みたいな感じなんだとは思うんですが、下手に決め打ちしてもなあ。現状だとオモシロ復活譚、以上のことは考えても仕方なさそうです。

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