捜04-02 干寶父妾・陳良

○干寶父妾


干宝かんぽうは字を令升れいしょうといい、その先祖は新蔡しんさいの人であった。父は干瑩かんけいという。

干瑩はひとりの妾を抱えていた。妻はその妾に嫉妬心を抱いていた。干瑩が死亡したとき、妻はその妾を生きながらにして墓室へと閉じ込めた。このとき干宝ら兄弟はいまだ幼かったため、こうしたことがあったことを知らなかった。

十年が経ち、母氏も死亡。干瑩に陪葬するため墓室を開ける。するとひとりの女が棺桶に覆い被さっていた。その衣服は喪服でなどなく、飽くまで平服であった。女の近くに寄ってみれば体温が保たれており、微妙に呼吸もしていた。輿に載せ家にまで連れ帰ると、一日ほどして彼女は蘇生する。そして言うのである。

「干瑩様は私に飲食をお与えくださり、そしてともにお休みくださいました。賜ったご温情・・・はご生前と何も変わりませんでした」

その後彼女は干家に関する吉凶について様々に言い当てた。蘇生して数年後に死んだ。

やがて干寶の兄が病を得て数日間の高熱にうなされ、意識不明の重体となったのだが、やがて唐突に目覚め、言った。

「天地の間にて、鬼神の働きを見たのだ。その瞬間、夢から覚めたかの心地となった、そうか、俺はまだ死なぬのだ、と」



○陳良


東晉とうしん太元たいげん年間、北地ほくちの人である陳良ちんりょう沛國はいこく劉舒りゅうじょが睦まじく交遊していた。ここに同郡の李焉りえんも加わり、三人で商売をはじめた。後に大きな利益が上がったのだが、李焉は陳良を殺害、分け前を独り占めした。

しかし十日ほどのち陳良は蘇生し、帰宅。そして語る。

「殺されたとき、既に死んでいたはずの劉舒が現れ、私に言ったのだ。「去年春の社日にて祠を祀っていたときに家で諍いごとが起きた。俺はそのことにいたく怒り、一角獣を祠の庭の前に放ったのだ。きみは蘇生できたなら、俺の家に行ってそのことを家族らに話してはくれないだろうか」と」

陳良は劉舒の意向を叶えるため劉舒の家に赴き、その話を彼の残された家族に伝えた。すると一角獣もたちまち姿を消したという。

それから陳良は官舎に出向き、李焉の罪を訴え出た。李緣は焉に伏された。




干寶父妾

干寶,字令升,其先新蔡人。父瑩,有嬖妾,母至妒。寶父葬時,因生推婢著藏中。寶兄弟年小,不之審也。經十年而母喪,開墓,見其妾伏棺上,衣服如生。就視猶暖,漸漸有氣息。輿還家,終日而蘇。云:寶父常致飲食,與之寢接,恩情如生。家中吉凶,輒語之,校之悉驗。平復數年後,方卒。寶兄嘗病氣絕,積日不冷,後遂寤,云:「見天地間鬼神事,如夢覺,不自知死。」


陳良

晉太元中,北地人陳良與沛國劉舒友善,又與同郡李焉共為商賈。後大得利,焉殺良取物。死十許日,良忽蘇活,得歸家。說死時,見友人劉舒。舒久已亡,謂良曰:「去年春社日,祠祀,家中鬥爭,吾實忿之,作一兕於庭前。卿歸,豈能為我說此耶?」良然之,故往報舒家,其怪亦絕。乃詣官,疏李焉而伏罪。


(捜神後記4-2)




んー、干宝のほうはこれ、最後のセリフを死の床で妾氏が言った、なのかしら? そうしないといまいちエピソードしての接続が弱そうだけどどうなんでしょね。うまく元テキストの校勘とかできたら良さそうだけど、正直そこまでの情熱も持ちきれないしなあ。まぁ、妾氏はお父上と日夜「墓室内で楽しんで」おられた、とのみ拾っておきましょう。


陳良のほうも微妙によくわからん。エピソード的に欠落がありそう。中国語サイトを見て強引に穴埋めしたけど、これでいいのかどうか不安は残りますね。まあ次々。

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