捜03-08 華歆當公

平原へいげん華歆かきん、字は子魚しぎょ。諸生であったとき、他人の家の門に軒先を借りて寝泊まりをすることがときどきあった。


ある夜、そうして軒先を借りた家の婦人が産気づいた。しばらくするとふたりの役人が華歆の泊まる家に訪れるも、華歆とばったり出くわすと、引き下がろうとした。


「公となる方がおられるぞ」


しかしきっぱりと引き下がろうともできず、しばし門の前にて留まる。やがて片方の役人が言う。

「しかし、これから産まれる子の寿命を定めねばならん。行かずにおくわけにもゆくまい」

こうして両名は進み、華歆に対し拝礼を示してのち、中に入っていった。


やがて出てきた両名は、こう話す。

「何歲になるであろうな?」

「三歲とすべきであろう」

やがて夜が明け、華歆も門より去った。


後日、彼らの言うことが本当なのかどうかを確かめるため、華歆は改めて門の軒先を借りた家に訪れた。そして例の子がどうなったかと聞けば、三歳で死亡したという。


華歆は喜ぶ。

「おれも公になれるのだな」


後に太尉たいい、すなわち三公となった。




平原華歆,字子魚。為諸生時,常宿人門外。主人婦夜產。有頃,兩吏來詣其門,便相向辟易,欲退,卻相謂曰:「公在此。」因踟躕良久。一吏曰:「籍當定,奈何得住?」乃前向子魚拜,相將入。出,並行共語曰:「當與幾歲?」一人云:「當與三歲。」天明,子魚去。後欲驗其事,至三歲,故往視兒消息,果三歲已死。乃自喜曰:「我固當公。」後果為太尉。


(捜神後記3-8)




華歆と言えば、曹操の元で立身した人物ですね。世説新語にもいます。この話は千年狐あたりでも見た気がするけど、あとはどこにあったかな。とりあえず三国志華歆伝の裴注に引く曹丕の列異伝か。捜神後記っていろいろな本からのマッシュアップくさいけど、そのあたりの研究って進んでるんでしょうかね。ちょっと調べてみましょう。

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