捜03-06 斛二瘕

桓温かんおんの現役時代、とある配下将が流行病にかかった。原因不明の高熱が出たため、とにもかくにも多量の茗、すなわち茶を服用した。その量ときたら確実に一斛二斗、およそ25.5リットルである。この時一升、どころか一合だけ減らしたとしても足りなく感じた。このような状態が一日だけではなかったのであっという間に家の財産が底を尽きた。


ひとりの客が配下将氏の元を訪問した。この時配下将氏はちょうど茶をがぶ飲みしているところだった。その客は既に彼の病のことを聞いていたため、ここでさらに五升を追加するよう勧める。飲み終わった配下将氏は大いに嘔吐。するとそこにますほどの大きさの牛の胃のようなものが混じっていた。口があり、収縮している。


客はそれを盆の中に置くよう命じ、そこに一斛二斗の茶を注ぎ込んでみたら、見事に全て飲み干してしまう。わずかに膨らみこそしていたが。そこで更に五升を加えると、それは茶を吐き出してしまった。


配下将氏はこれを吐き出すと、たちまち病状が癒えた。


「どのような病だったのですか?」

「斛二のしこりという」




桓宣武時,有一督將,因時行病後,虛熱,更能飲複茗,必一斛二斗乃飽,纔減升合,便以為不足,非復一日。家貧。後有客造之,正遇其飲複茗,亦先聞世有此病,仍令更進五升。乃大吐,有一物出,如升大,有口,形質縮縐,狀如牛肚。客乃令置之於盆中,以一斛二斗複茗澆之,此物歙之都盡,而止覺小脹;又加五升,便悉混然從口中湧出。既吐此物,其病遂差。或問之:「此何病?」答云:「此病名斛二(編按:或作「茗」。)瘕。」


(捜神後記3-6)




編按は「茗斛二瘕かもしれない」、ですね。しかしなに腹の中にUMA飼っとんねんという感じではある。なかなかにグロテスクで良き。

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