捜03-05 蕨莖化蛇

太尉たいい郗鑒ちかん、字は道徽どうき丹徒たんとに出鎮した。


かつて獵に出た時、時期としては二月の半ばごろであった。この時野原には、やや早いながらもワラビが芽吹いていた。郗鑒のそばを守っていた護衛のひとりが、何の気もなしにワラビをひと茎折り、口にする。すると途端に嘔吐感に襲われた。この事態に出くわしたため、帰還。そこからしばらく胸や腹にずっと痛みを抱え続けた。


その約半年後、護衛氏が大いに嘔吐。するとそこから30cmほどの大きさの赤い蛇が出てきた。いつから腹の中にいたのか、今なお元気にうごめきまわっている。この蛇を屋根の軒下に吊し提げれば、その口から汁がぽたぽたと垂れ落ち、徐々にその姿を小さくしていった。


一晩経って蛇の様子を見に行けば、それは護衛氏がかつて何の気もなしに食べた、一本のワラビであった。そして護衛氏の病が取り除かれた。




太尉郗鑒,字道徽,鎮丹徒。曾出獵,時二月中,蕨始生。有一甲士,折食一莖,即覺心中淡淡(編按:淡淡,通「澹澹」,搖盪不定也。)欲吐。因歸,乃成心腹疼痛。經半年許,忽大吐,吐出一赤蛇,長尺餘,尚活動搖。乃掛著屋簷前,汁稍稍出,蛇漸焦小。經一宿,視之,乃是一莖蕨,猶昔之所食。病遂除。


(捜神後記3-5)




お、おう……題名でネタバレキツいっすね? ワラビの穂先ってアレ、確かにインパクトありますよね。早くに芽吹いたってのにいきなり喰われて怒って護衛氏の体内で血とかすすりながら肥え太っていった、って感じなんでしょかね。しかし高平郗氏人気だな。孫が出てきたばっかじゃんね。

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