2巻

捜02-01 吳舍人

呉猛ごもうは世捨て人である。字は世雲せいうんであり、道術を操った。同縣人の鄒恵政すうけいせいが呉猛を出迎えようと、夜に家の中庭にて香を焚いた。するといきなり虎が現れ、鄒惠政の子をくわええ、生垣を乗り越えて去って行った。


呉猛が言う。

「気に病むな、すぐに戻ってこようさ」

呉猛の言葉通り、虎は数十歩ほど離れたところで突然引き返し、子を鄒惠政に返した。鄒惠政はこのことから呉猛の元で修行に励み、やがて良き道士となった。


呉猛の性格は至孝であった。幼かった頃、父母のそばで寝ていたときのことである。夏で蚊や羽虫も多かったのだが、呉猛は一切扇で扇ごうとしなかった。同じ場所で横になっていた者がそのことに気付き、どうして扇がないのかと聞けば、猛呉猛は答える。

「父さんや母さんが虫に食われてほしくないんだ」


そんな父母が亡くなれば、墓のそばで長いこと喪に服していた。蜀からやってきた賊が暴れ回り、村の建物を焼き、墳墓を暴いていた。人々はみな逃げ出したが、呉猛は墓の側から動こうとはせず、号泣したまま墓を守らんとしていた。賊らもそのあまりの悲壮さに感じ入り、ついに呉猛の父母の墓は暴かなかったという。




吳舍人名猛,字世雲,有道術。同縣鄒惠政迎猛,夜於家中庭燒香。忽有虎來抱政兒,超籬去。猛語云:「無所苦,須臾當還。」虎去數十步,忽然復送兒歸。政遂精進,乞為好道士。猛性至孝,小兒時,在父母傍臥,時夏日多蚊蟲,而終不搖扇。同宿人覺,問其故,答云:「懼蚊蝱去噆我父母爾。」及父母終,行服墓次。蜀賊縱暴,焚燒邑屋,發掘墳壠,民人迸竄。猛在墓側,號慟不去。賊為之感愴,遂不犯。


(捜神後記2-1)




お、……おう? なんだこのエピソードの順番? 欠落ない?

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