捜01-03 剡縣赤城
とある急峻な渓谷に差し掛かると、そこには石橋が架けられていた。ヤギがその橋を渡れば、根碩らもそれを追う。渓谷の向こうには岩山がそそり立っており、その絶壁の色は、赤。見れば「
見れば草場には庵が構えられている。中には二人の少女がいた。年齢はともに十五、六ほど。非常に美しく、青の衣を身につける。それぞれ
「お待ちしておりましたぞえ」
突如として庵は家屋に姿を変えた。中から少女らが現れ、言う。
「婿殿がおいでじゃ、天に慶賀せねば」
そうしてふたりはするりと絶壁の上に上ると、
根碩らは帰宅を思い、彼女らが踊っている内に密かに立ち去ろうと考えた。それに気づいた瑩珠は追いすがると、言う。
「無論、お止めは致しませぬ」
そのうえでそれぞれが香り袋を手渡してき、言うのである。
「くれぐれも開けてはなりませぬぞ」
こうして根碩らは帰宅した。
ある日根碩が出かけた隙に、家族らが根碩の持ち帰った不思議な香袋を広げてみた。それはまるで蓮の花のような形をしており、一枚を開けると、中からもう一枚が出てくる。都合五枚を開けたところで、中から小さな青い鳥が現れ、飛び去った。帰宅した根碩がこの話を聞くくとがっくりと肩を落としたが、もはやどうにもならないことだ、と諦めた。
その後根碩は田畑を耕しに家を出た。家族もまたいつものように送り出したが、田畑の中で突然根碩が動かなくなった。家族が見に行ってみれば、根碩はセミの抜け殻のような殻となりはてていた。
會稽剡縣民袁相、根碩二人,獵經深山,重嶺甚多。見一群山羊六七頭,逐之。經一石橋,甚狹而峻。羊去,根等亦隨,渡向絕崖。崖正赤,壁立,名曰赤城。上有水流下,廣狹如匹布,剡人謂之瀑布。羊徑有山穴如門,豁然而過。既入,內甚平敞,草木皆香。有一小屋,二女子住其中,年皆十五六,容色甚美,著青衣。一名瑩珠,一名潔玉。見二人至,忻然云:「早望汝來。」遂為室家。忽二女出行,云:「復有得婿者,往慶之。」曳履於絕巖上行,瑯瑯然。二人思歸,潛去。歸路,二女已知,追還。乃謂曰:「自可去。」乃以一腕囊與根等,語曰:「慎勿開也。」於是乃歸。後出行,家人開視其囊,囊如蓮花,一重去,復一重,至五,盡;中有小青鳥,飛去。根還,知此,悵然而已。後根於田中耕,家依常餉之,見在田中不動;就視,但有殼如蟬蛻也。
(捜神後記1-3)
浦島太郎ですねえ。しかしこれいまいち瑩珠と潔玉に対して袁相たちがどう感じていたのかわからないな。きちんとやることはやりました、でいいんでしょうか。なんかこのテキストだけだと出会うは出会ったけど薄気味悪くなって即逃げ出そうとした、にも読めそうだけど。
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