第36話 芽衣ちゃんは着替えたい。
◇ショコランティーナ目線◇
「兄さん〜〜ちょ、聞いてよ〜〜」
帰ってきた優兄さんに抱きつく勢いでダッシュ。歩さんがいないうちに距離詰めないと。しかし、その隣には氷の魔女のような視線の――
「
「芽衣たんってなんです。私たちそんなに距離近くないですよね」
「優兄さん、芽衣たんどうしたの?」
「えっと、学業のためにここに住むことになったんだ」
ここに住む?
まぁ、元々優兄さんのおばあちゃんの家。となると、それは芽衣たんのおばあちゃんの家でもある。それにしても急な話だなぁ、これはもしや……
「芽衣たんったら優兄さん私に取られるって思ったり? かーいいとこあるね(笑)」
「芽衣たん呼びやめてもらえませんか。それに『優兄さん』ってのもやめてください。あと、優ちゃんをあなたに取られる訳なくないですか」
あっ、どうしよ、マジな反応きた。
いやこれだからブラコンは。ヤバいヤバい。ブラコン相手にブラコンなんて言ったら完全にキレられる。
「それよりショ……彩羽さん、何かあったんですか?」
「あっ、お兄ちゃんが買ったベットなんですけど、お兄ちゃん組み立ててくれたはいいんだけど、部品余って」
「ベットの部品が余る? それヤバくないですか?」
「ヤバいと思うけど、どこが余ってるかわかんなくて、それで」
「すみません、イロリさん」
「
「これは失礼、イロハスさん」
「わざとだよね、文字数増えてるし、なんか水みたくなってるし」
「すみません、興味ない人の名前覚えれなくて。あの失礼ですが、そういう兄妹のことは兄妹で片付けてください。優ちゃん疲れてるんで。優ちゃん便利屋じゃないんで」
それはそう。
頼り過ぎもよくないか。
住まわして貰ってるだけでも頼ってるのに、兄貴まで転がり込んできても、嫌な顔一つしないんだし。しかし興味のない人って敵意丸だしだなぁ。ブラコン甘く見てたわ。
「芽衣ちゃん、そういう言い方はよくないよ。これから一緒に暮らすんだから。ショ……彩羽さん。着替えたら見ます。和正くん帰ってるんだね」
「すみません、助かります。昔からお兄ちゃん図工とか全然ダメで。壊しちゃう前にお願い出来たら」
「わかった。芽衣ちゃん、着替え届いてるんだろ。俺の部屋使いなよ」
そう言って優兄さんは芽衣ちゃんを連れ自室に行った。
きのうは寝る場所がなかったから使わせてもらったけど、割り当てられた部屋に私の荷物は移動していた。
この家にはいくつも部屋がある。
こじんまりした部屋がいくつもあるのは、子供が多かった時代の名残だろうか。
使ってないからホコリこそあるけど、いい状態で保たれていた。
部屋割的には私の部屋の隣がお兄ちゃんの部屋になった。そして優兄さんの部屋の近くを歩さんが使うようだ。
まぁ、それは自然だろう。本来なら大反対したいところだけど、ひとつ屋根の下に面識のない歩さんとお兄ちゃんが住むとなると、もしものことが起きないとは言えない。
そういった配慮だろうと思いきや違った。
「歩、酒癖が悪いから和正くんに迷惑かけるかもだから」
お兄ちゃんを警戒したんじゃなくて、お兄ちゃんに被害がいかないようにしてくれていた。それも優兄さんらしい。
いや、それはいい。少なくとも今はいい。
おかしくないか。今から立花兄妹着替えするんだろ? 何で普通に同じ部屋に消えるんだ? 来栖兄妹が同じことしようものなら、妹ブチ切れだけど?
立花兄妹の妹担当はそのあたり、なんともないの? いや、ダメだって。だってあの娘見るからにブラコンだよ? きっとエッチな着替え方するに決まってる!
『コンコン』
ドアをノックすると優兄さんがスウェット姿で現れた。
「えっと、なに?」
もう着替えてる。
「いや、その流石に兄妹とはいえ同室でお着替えはどうかなぁって」
「うん、俺もねそう思って出ようとしたんだけど、芽衣ちゃんがいいって聞かないんだ。俺はちゃっちゃと着替えたけど」
「優ちゃん、最近のトレンドは兄妹同じ部屋でお着替えするんですよ」
「騙されないよ。さっきコンビニで騙されたばかりだから。居間で待ってる」
よかった。優兄さん意外にあしらい上手だ。芽衣たんの着替えを待つ間に情報交換をした。
(あの確認ですけど芽衣たんは優兄さんがセンキャスなのは知らないんですよね?)
(知らない。和正くんはショコがセンキャスなのは知ってるよね。俺のことは?)
(知らないです。ただ、ちょっと敵だと思ってます)
(敵⁉ 俺が?)
(じゃなくて、レッサー・アントニウス兄さんを)
(そっちか……意外とバレてないんだ。ショコの兄を名乗ってるからヤキモチなんだな)
(笑い事じゃないですよ、彼はマジですから。うちの方は配信するの知ってるからよしとして、優兄さんの方大丈夫ですか?)
(リモートで会議しないとだって言ってる)
(なーるほど。会議って言ったら会議っぽいですもんね。うちのお兄ちゃんが優兄さんの方に乱入することもないです。どうもガチで私の配信見てるみたいだから)
(そうなんだ、いいお兄さんだな)
(そうなんですけど、恥ずかしさはあります)
あと、エロ話のダメ出しはやめて欲しい。
いや、私のエロ話ってパンツ何色とか、部屋でどんなかっこうしてるとか「今ノーブラなんだ」が最上級のソフトエロ。
パンツは白だろ! とか。それはあなたの意見ですよね。
いや、兄貴の趣味聞かされる妹の微妙な気持ちわかってほしい。
しかし、アレだよなぁ。来栖家と立花家。兄妹シャッフルだったらどうなってたんだ? お兄ちゃんに芽衣たんだったら、需要と供給満たしすぎだろ。逆にヤバいわ。
優兄さんと私なら……優兄さんの妹鈍感スキル発動されたら、私ら全く会話が成り立たんだろうなぁ~~すれ違いしかしない、みたいな?
今はほら、多少異性として見てくれてるから、少しは注意深くしてくれてるので成り立ってるけど。
そんなこと考えてたら、めっちゃジト目の芽衣たんが着替えを終えて現れた。この子ったらどんだけ優兄さんの前で着替えたかったんだ?
露出系ブラコン怖ぇぇなぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます