第17話 企画書、通りました!
◇ショコランティーナ目線◇
話が凄く大きくなってる。
兄さんの提案で謝罪会見を開くことになったものの、事務所もなんか、めちゃくちゃ乗り気。
謝罪会見に乗り気ってなんのこっちゃなんだけど。
いや、何より私は何に謝るのだろう。伝説級の負け皇女についてだろうか。
心当たりはないが、なんかざわざわする。
それはさて置き、事務所がどれくらい乗り気かというと、セントラルライブ公式が『来栖・ショコランティーナ緊急謝罪会見』とSNSアプリ『マックス』で告知。
会見時間まで大々的に宣伝してる。
つまり、兄さんの企画にセントラルライブがまるっと乗ったということになる。
これって実はホントにすごいこと。まったくこの業界を知らない、いわば素人の企画。しかも生配信に事務所ごと乗っかるなんて、あっていいのか? いいんです! だって兄さんの企画だから!
しかも、事務所の決定が早い。
それもこれも兄さんがあっという間に作った企画書のおかげ。だけど、私の知る限り事務所のこんな決定聞いたことない。
いや、私は兄さんを信じてるからいいとして、事務所――たぶんここまでやるってことは、社長まで企画が届いて社長の許可も出てる。てっぺんまで話通すって言ってた。てっぺんって社長だったんだ。
マネちゃんの手腕半端ないんだろうけど、兄さんの企画力も、やっぱり相当なもんなんだ。そうこうしているうちに兄さんは謝罪会見のサムネを完成させた。
私の目がグルグル回ってあたふたしてる間に企画書とサムネを完成させた。
サムネには『保護者X同伴⁉』と、まぁ真剣な謝罪会見ではないことを、事前告知してるようなもんだ。
そして出来上がったサムネをさっそく事務所が使い、拡散する。
ん~~見たことない勢いで拡散されていく。大丈夫なの、と聞きたいが兄さんは準備に余念がない。
マネちゃんと打ち合わせをし、配信環境の確認とかしている。今回は私のノートPCではなく、兄さんのゲーミングPCを使う。スペック的にはまったく問題はない。
ただ、私のマイクはともかくとして兄さんのマイクはゲームに使う程度のものなので、不安があるけど、ここは仕方ない。
今更マイクを調達出来ないし、逆に素人っぽさが出ていいかも。
『えっと、お兄さん。お名前ありました?』
マネちゃんが兄さんの『設定』の確認をする。
後々ブレるのは別に構わないが、公式として設定を知っておく必要がある。
それはつまり、セントラルライブ公式ホームページに兄さんのプロフィールを載せるということだろう。
「えっと、
『
マネちゃんの声で私は兄さんの顔を見る。声の響き。言葉にはしないがなんか言いたげなのはわかる。なので、ここは私が代弁した。
「兄さん。きのうの生配信でレッサーって名乗ったので、レッサーでいいとは思いますが、なんか弱いですね」
『私もそれ思いました、なんかないですか? その強そうな……』
「強そうなですか? 例えばアントニウスとかですか?」
『それいいです!『来栖・レッサー・アントニウス』! なんか賢そうだし、偉人ぽい! ショコランティーナにも負けてないです!』
マネちゃんが手を打って喜んだ。
なんか兄さんこういうの慣れてるのか、意外にノリノリだ。企画といいサムネといい、名前と次から次に出てくる。
『えっと、確認なんですけどおふたりのご関係はご兄妹ですね、えっとお兄さんは先妻さんの連れ子……つまりショコランティーナさんとは血が繋がってないってことですね。これは微妙にいいかもですね、その部分でこの先イジりやすいというか、発展性があります。しかも、同じ屋根の下で暮らしてるのを明言してるので、スキャンダルとかの予防線にもなりますね。あと確認なんですけど、レッサーお兄さんはSNSとかで顔出しされてます? 個人の?』
「いえ、それはないです。そういうの苦手なんで」
『それは幸いですね、身バレ即顔バレもなさそうですね』
マネちゃんはその事を確認すると事務所に連絡を入れた。
顔を出すわけじゃない。声から個人を特定するのはなかなか難しい。
マネちゃんの電話を待っている間、私は兄さんに『自身』の動かし方を教えた。簡単な動きしかできないので、体を左右に振るとかしかできない。
幸い表情は何点かあるので問題なさそうだ。本来ならママに使用許可を取るところなんだけど、ママが私や兄さんに許可を取らずに生配信したんだ、このキャラは兄さんということでいいだろう。
まさか、自分が始めたことを逆手に取られるとは思ってない。その油断を兄さんは突いた。そしてこの発想がウケるとみて、セントラルライブは乗った。
確かにこれはウケる。
話題性は後を絶たない。何より各方面に人気のママが、間接的に一枚噛んでるわけだ。普段から毒の効いたコメントで人気のあるママ。
私をギャフンと言わせたつもりでいるところをギャフンと言うのだ。
しかも、兄さんは『謝罪会見』という形を取っている。
見る側からしたらまさか、ざまぁが隠されているとは思わないだろう。もしかして、私はとんでもない兄さんとお近づきになったのかも。
頼もしいかぎりだ。私はマネちゃんと画面越しに打ち合わせをする兄さんの背中を見た。
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