第12話 人気イラストレーターでした!

 ◇兄さん目線◇

「あの、ママ。兄さん『ダンブレ』やってるらしいよ~~」

 ショコの軽い言葉にママが反応した。しかも、割と激しく。

「マジなの? ショコショコ、兄さんにパーティレベル聞いてみて!」

 俺はショコに自分のレベルを伝える。


「そのランクなら地下5階層行ける! ショコショコ、兄さんにの編成してもらって! お願い~~」

「ママ、あの直接話しして。間に挟まれても話全然わかんないから」

「ん〜でも、ショコショコの絡み上、兄さんの顔出しはあなたの身バレに繋がるよね、よし! えっとね、前に作ってたアバターあるのよ、ちょっと冴えないサラリーマン風過ぎてお蔵入りしたの。それ使っちゃおうか!」


 状況がわからないので、ショコに説明を求めると、どうやらこの部屋は機密性は高いものの、注意するに越したことはないらしい。

 Vチューバーのふたりはその辺りに敏感だ。

 つまり、俺が身バレすることにより、芋づる式にショコも身バレするかもって話。なので、ママの手元にあるアバターを俺用に使って直接話すことになったわけだ。


 俺はショコのノートPCの前に座り、ママとご対面する。こういうのはリモートワークで慣れてる筈なのに、少し緊張する。

 まぁ、初対面だし話してる相手は人ではなく、なんというか絵なのだ。動くし表情も変わるので、違和感はないけどこういうのに慣れてない。


「はじめまして〜兄さん! 私、ショコショコのママやってます、さざ波小陽こはるです! よろしくお願いします〜」

 イラストにあいさつをされた。


 変な感じだ。なんか引っかかるし。あれ? イラストレーターのさざ波小陽こはる? えっ⁉

「ショコ! ショコさん! えっと、イラストレーターのさざ波小陽さん⁉ さざ波さんって、ラノベの『僕の秘密』のさざ波先生⁉」

 振り返るとショコは軽くあくびをして「わかんない」と答えた。

 ママこと、さざ波小陽先生は「そこは知っとこうか?」とショコをたしなめた。


「えっと、はい。私が『僕の秘密』のイラスト担当してます、さざ波小陽です! 兄さんに知ってもらえてて光栄です!」

『僕の秘密』とは超人気ラノベで、人気の秘密はイラストガチャが成功したからとさえ言われている。

 それ程までに、さざ波小陽先生は絶対的絵師さんなのだ。

 どうりでショコの絵に見覚えがあると思った。いや、待てよ。俺って今、その絶対的絵師さんが描いたアバターで動いてるわけ――なんだよな?


「さっそくなんですけど、兄さん。私の全滅したパーティの救助隊の編成お願いしてもいいですか?」

 そうだった。

 さざ波先生のパーティが全滅したんだった。

 この『ダンブレ』というゲーム。

 ターン制のRPGなんだけど、割と容赦ない。たかだか地下1階層でも平気で全滅する。かくいう俺もゲーム開始早々パーティ全滅の憂き目にあった。


 そんなこともあり、かなり慎重に探索をしレベルを上げをし、装備を整えて先を進んでいるのだけど、あまりにも慎重過ぎて、同じ時期に始めた同期の上司は遥か先に進んでるし、後から始めた後輩にさえ、置き去りにされていた。

 さざ波先生の気持ちは痛いほどわかる。

 この『ダンブレ』というゲーム。


 ある意味現実に近い世界観がある。蘇生は出来るが、失敗もする。失敗すれば灰になって2度と蘇生出来ない。

 俺の最初のパーティがそうだった。その上、全滅したパーティを蘇生するにも『腐敗期間』というものがある。その期間を過ぎれば蘇生が困難になる。

 あと、ダンジョン内で死んでしばらくすると、遺体を荒らされる。つまり、モンスターに食われてしまう。


 そうなると『腐敗期間』内だとしても、そのキャラクターは失われてしまう。なので、ソロプレー中心のゲームなんだけど、キャラバンを組んで協力しダンジョン攻略することも出来る。

 さざ波先生が言う『救助隊』はその協力プレーのひとつだ。先生的には『腐敗期間』内とはいえ、遺体が荒らされないか気が気じゃないのだ。


 だけど、パーティを新たにレベル1から作成し地下5階層に到達するまでに『腐敗期間』内で、遺体を荒らされないで確保するっていうのは、至難の業。

 だからキャラバンを組んで『救助隊』を派遣するわけだけど、これにはこれで危険が伴う。


 ひとつはさざ波先生のパーティレベルが恐らく低いということ。

 つまり戦力として見れない可能性が高い。

 2つ目は遺体を確保出来たとして『救助隊』による遺体搬送はリスクを伴う。遺体搬送状態になると、体力をゴリゴリ削られる。削られるので、休憩の頻度が増える。

 そうなるとモンスターに襲われる率が上がる。


 ことわざではなく、リアルに『ミイラ取りがミイラになる』可能性がある。

 助けに行ったはずが、全滅したって話はよく聞く。

 なので、この『救助隊』の要請は拒否られることがすごく多い。

 いや、相当なリスクを伴うので、仲が良いほど依頼しにくい。つまり、泣く泣く諦める人が多い。しかし、救済措置というか保険をかける事が出来る。


 それは前もってメインのパーティ以外にもサブパーティを育成しておき、メインパーティが全滅した時に、サブパーティに救助に向かわせる。そうすることにより、誰にも迷惑も掛けずに、早期に救助隊を自分の手で組める。

 実を言うと俺のゲーム進捗が上司や後輩より遅いのは、慎重に進めていることもあるが、このサブパーティもメインパーティ同様に育成しているからだ。


 そして、付け加えるとキャラバンは最大5つのパーティから編成出来る。当たり前だけど編成パーティが、多ければ多いほど『救助隊』の生還率が上がる。

 先生のレベルが高くないパーティを含めて、3つのパーティでキャラバンが組めるのだ。

「あの、兄さん。無理だったら無理って言ってね、リスクもあるし」

 先生の声がさっきと違いトーンダウンした。

 冷静になって知り合いの知り合いに頼むようなことじゃないと思ったのだろう。

「わかりました、引き受けます」

「ホントに⁉」

 先生は画面の中でガッツポーズをした。瞳にハートが写っている。そんなことまで出来るんだ。なんかすごい世界だ。


 ***作者よりお願い***

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